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「本多真弓処女歌集『猫は踏まずに』(六花書林・2017年)」を捲る(其のⅦ) 三訂版 本日早朝、特別大公開!

〇   ゆふぐれてすべては舟になるまでの時間なのだ、といふこゑがする
 一艘の笹舟となって谷川を果てしなく流れて行くのが、私たち人間の運命なのである。


〇   ユキヤナギ真夜に来たりて白き花こぼしたものかシュレッダーまへ
 シュレッダーの前に、白いユキヤナギの花を零したのは誰だ!
 落花狼藉の振る舞いも此処に至れば、もはや「鬼畜生の振る舞い!」とでも言わなければならないのだ!


〇   嫁として帰省をすれば待つてゐる西瓜に塩をふらぬ一族
 そもそも、我が日本国に「西瓜に塩をふらぬ一族」なんて存在するのか?
 寡聞にして吾輩は、西瓜を塩を振らないで食する一族が、この国に存在するなんて話は聴いたことはありません!
 又、本作の作者は、何処の某と結婚したのだ!
 大体に於いて、こんなにも口さがない女と連れ添う男性なんて、この日本に居るはずが無いではないか!
 であるならば、本作の作者が「嫁として帰省をすれば」ということ自体が仮定の話であって、「西瓜に塩をふらぬ一族」が、「嫁として」の彼女を「待ってゐる」とか「ゐない」とかの話の全ては、彼女の夢物語(夢想譚)なのである。


〇   リア充が爆死してゐるかたはらを手もあはせずに通りすぎたり
 「リア充」なんか、「爆死」でもしてろってんだ!
 

〇   レシートと次回使へるクーポンともうあなたとは行かない店の
 作中の「あなた」は仮想上の「あなた」であり、そんな「あなた」とは、どんな「店」にも行くことは出来ないのだ!


〇   録音でない駅員のこゑがする駅はなにかが起きてゐる駅
 「録音でない駅員のこゑ」とは、まことに真に迫った表現であり、「録音でない駅員のこゑがする駅」で起きているのは、死者が五十数人にも及ぶ史上稀に見る脱線事故である。


〇   若さとは海をゆく船ばうぜんと膝をかかへて見送つてゐた
 若ければこその遠洋航海であり、もう若くはない僕としては、件の「船」を「ばうぜんと膝をかかへて見送つて」いるしか術が無かったのである。


〇   わたくしが働かなくていいところ宇宙のどこかにないかなあ ない
 そんな「ところ」が在ったなら、誰にも教えないで、自分一人だけでのんびりと暮らしますよ!


〇   わたくしのなかの正義がはみだしてプラスチックのスプーンを割る
  私は、決して忘れることが出来ません!
 「スプーン」などの「プラスチック」製品が私たちの生活周辺に現れて、私たちの暮しが豊かになり、色鮮やかになった頃の事を!
 其れなのに、今や世を揚げての「プラスチック製品の排撃ブーム」ではありませんか!
 そもそもの話をすれば、「プラスチックのスプーン」は、「わたくしのなかの正義がはみだして」割れたりするものでも、念力で以て割ったりするものではありません。
 私たち心ある人間は、今や永遠に葬られようとしている「プラスチックのスプーン」に、敬虔なる祈りを奉げようではありませんか!


〇   わたくしの沼にあなたが捨ててゆく金のさびしさ銀のさびしさ
 本作の作者は、本質的に「沼」なのだ!
 男性なら誰でも受け入れる沼!
 ぶくぶくぶくぶくと、永遠に炭酸ガスを噴き出している沼なのだ!


〇   わたくしはけふも会社へまゐります一匹たりとも猫は踏まずに
 「一匹たりとも猫を踏まずに」「会社」に参上するのは、正しくも至難の業でありましょう。


〇   わたしにはないのど仏もつひとがさくらみあげてゐるうるはしく
 「のど仏」とは、「成人男性の喉の前面にある出っ張り」であり、その正式名称は「喉頭隆起」である。
 作中の「わたし」が、女性もしくは男性でも未成年であったならば、当然のことながら、「わたしにはないのど仏」という事になりましょう。
 ところで、単なる「喉頭隆起」でしかない「のど仏」を曝け出して「さくらみあげいゐる」男性を「うるはしく」として、憧れている女性が存在しているとしたら、彼女こそは「沼」なのである!


〇   ワトソン君こつそりチョコをお食べだねキスしなくてもわかるよぼくは
 作中の「ワトソン君」のフルネームは、「ジョン・H・ワトスン (John H. Watson) 」であり、彼は、「アーサー・コナン・ドイルの推理小説『シャーロック・ホームズシリーズ』の登場人物であり、 軍医を経た後開業医となった」とか!
 今や、棺桶に片足を突っ込んでいる「ワトソン君」は、有ろう事か、唇のみならず、その周辺をも焦げ茶色に染めて、森永の板チョコを食べているのである。
 人間、齢は取りたくないものである!
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「晋樹隆彦第四歌集『浸蝕』(本阿弥書店・2013年)」を読む(其のⅥ) 

〇   宮川の支流が街をゆっくりと流れて人は歩みを止める

〇   むかし砂山なりしところまで牙をむく浸蝕にたじろぐ旅びと五人

〇   もういちど呑んで夜明かししたき友 年々に逝きまた一人逝く

〇   四十年かかわりてこし編集に如何(どう)ともしがたき視力の衰え

〇   稜線のみはるかすまで秋雲の冷気するどくたなびきており

〇   隣室の鼾をうけてわが輩もおおかた夜は眠りにつける

〇   冷静になれよと目覚む印刷所の社長を殺めし悪しき夢見て

〇   六十数キロの長浜をおもい浸蝕をおもい蓮沼を過ぎ茫茫たりし

〇   若き日にこころやさしき無頼派と呼ばれしことも昨日のごとし

「晋樹隆彦第四歌集『浸蝕』(本阿弥書店・2013年)」を読む(其のⅤ) 

〇   中ゆびと人差しゆびの黄にそみぬ亡父の晩年ほどではなきが

〇   ながらみの宝庫の浅瀬 波よけのヘッドランドの無情に佇てり

〇   ながらみもなめろうもある白里の小さき店に秋はふかまる

〇   咽喉の飢え耐えがたくなり入りし店ビールの喇叭飲みは三十年ぶり

〇   呑み過ぎを悔み年ねん編集に倦みて四十年 ままよあれかし

〇   「飲みながら癒していきましょう」医師のことば天の韻きのごとく聞ゆる

〇   排気ガスとたばこのけむり環境に悪しきはいずれか排気ガスだろう

〇   8ポ三段9ポ二段のあいことば裸の職人たちともお別れ

〇   波濤ふせぐためといえども四つ足の死骸のごときテトラポッドは

〇   春の日は鯉の洗いもよろしかろ柴又川千屋へこいさん連れて

〇   菱川善夫存命ならば断をくだす論の向こうの徳利ゆれて

〇   人の名を多く間違えるパーティーにどうもどうもの口癖のつく

〇   昼酒のつづきに晩酌をはじめたりシャコバサボテン一夜をあかず

〇   昼酒をたしなむ人は短命と吉村昭の随筆に知る

〇   ピリッときてツンときて酒にほどよかるワサビは夕餉のわれの恋人

〇   ふるさとの砂丘が今や浸蝕に消えゆくころぞ活版活字も

〇   へつらわず驕らず媚びずへりくだるなくある時は激怒のうたよ

〇   北条早雲の像と白木蓮の佇つ先ぞ高長寺には透谷ねむる

〇   歩行不能の刑に伏ししが届きたる「百年の孤独」の味にも伏しぬ

〇   防波堤造成工事のずさんなる行政に声荒げつつ怒るカメラマン

「晋樹隆彦第四歌集『浸蝕』(本阿弥書店・2013年)」を読む(其のⅣ) 

〇   頽唐派歌人が名づけし「タキアラシ」母音の妙はうたびとの技

〇   高橋くん小笠原くん小林くん わが朋友は先に逝きたり

〇   たった半日ネオンを消してそらぞらし偽善的エコを呼びかくる都市

〇   地球的規模の気候の変にやあらむ人為的ならむや 海は応えず

〇   千里浜や九十九里浜はた日向灘浸蝕は日々の津波でもある

〇   塚本邦雄存命ならば何と言わむ口語・パソコン・メール短歌を

〇   塚本邦雄、菱川善夫も今は亡く美を求むるうたびとと批評家少な 

〇   突き合わせのみに事足りぬ原則を幾そたび省き冒しきぬミス

〇   土に眠る万物(もの)の化身のような花あかあかあかし曼珠沙華はも

〇   つぶらなるキサゴ科の貝 社名にもしたる学名はダンペイキサゴ

〇   年齢(とし)を忘れ食らいつきたるながらみを浜の小店に十五つぶほど

〇   どの誌面も口語のうたのはびこりぬこれも浸蝕のことばの時代

〇   度を超えし深酒ののち秋和ビル駐車場に朝を晋樹隆彦

「晋樹隆彦第四歌集『浸蝕』(本阿弥書店・2013年)」を読む(其のⅢ) 

〇   酒の旨き生の苦きを知るほどに解明できぬわれならなくに

〇   佐原を過ぎ香取を過ぎて吹くかぜは大利根川の秋のはこびや

〇   散歩後は況してさわやか昼の酒ストップできぬわが癖あわれ

〇   然り然り酒呑みヘビースモーカー老いて摂生に努めんとせず

〇   焼酎に煮込みとおでん 定番なれど屋台の味はしみじみ旨し

〇   焼酎を三杯にウーロン杯を追加せし自家製塩辛のトロの味する

〇   白里(しらさと)と呼ばるるごとし白砂に浜防風の皓きはな咲く

〇   死を数年早めようとも昼酒の旨さは森林浴に勝るとおもう

〇   浸蝕のただならぬこの海といえヘッドランドはおばけのようだ

〇   滋味うすき歌稿いちまい受け取りぬ編集者われのなにかな悲し

〇   人類は地球の癌とおもえかしエコをしきりに叫ぶ時代に

〇   吸殻やゴミの見あたらぬ千代田区の路上をあるくときの虚無感

〇   吸う人と吸わぬ人いる世のならい互いにはかなき一生なるに

〇   砂の粒子きめこまかなる砂丘(すなおか)に紫エンドウのはな月見草のはな

〇   銭湯にて倒れしその後パチンコし呑屋にゆきて帰りしとう妻

〇   早朝より呑みては眠る伴侶なり睡眠薬も長く使わず

〇   躁ののちながあく鬱病やむひとなりし噴火の起きぬ日々これふしぎ

〇   底無しの沼のかたえにひと夜得て底無し同士酌みかわしたり