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詩歌句誌面

読解なくして論評あらず。

今週の「朝日俳壇」より(2018/7/29掲載・そのⅠ)

〇   蟻の列死を分解し運び去る   (筑紫野市)二宮正博

 食物連鎖という奴でありましょうが、それは自然の摂理でありますから今更どうにもなりませんぞ!
 長谷川選の首席。

     夏休み蟻は蟬喰う蟻は蟻地獄に嵌められておジャンとなる  鳥羽散歩


〇   すだ椎の大ふところに涼みゐる   (多摩市)又木淳一

 千葉県匝瑳市安久山の平山家の敷地内に在る、樹齢は約千年、幹周は十m、樹高は二十五mの「すだ椎」の巨木こそは、「大ふところ」と称するに相応しい存在である。
 件の巨大木は、現在、匝瑳市指定天然記念物に指定されていて、通称「安久山の大シイ」と呼ばれ、遠くから見れば、たった一本の椎の木が広大な森林のように見えるのである。
 長谷川選の次席。

     しだ椎の枝にハンモックを掛けてすだ椎の香り嗅ぎつつ眠ろう!  鳥羽散歩


〇   燕さへ巣を流されし出水かな   (名古屋市)池内真澄

 俺たち人間だけならばまだしも、あの渡り鳥の燕にまで被害を及ぼすとは、怪しからんぞ出水!
 長谷川選の三席。

     蟻さへも巣穴侵され女王蟻ものもの凄く怒ってゐるぞ!  鳥羽散歩


〇   いくたびも命の水へ夏の蝶   (合志市)坂田美代子

 水に啼く燕在れば水に救われる蝶あり!
 長谷川選の四席。

     燕とは私の彼のことかいな!彼は齢上それでもツバメ?  鳥羽散歩


〇   夏の風ばかり虫取り網の中   (市川市)抜井諒一

 長谷川選中、第一番の佳作でありましょう。
 長谷川選の五席。

     すくってもすくっても夏の風ばかり虫取り網に掛からぬ揚羽!  鳥羽散歩


〇   水に長じ水に安んじ泳ぐなり   (和歌山市)見奈美輝彦

 是こそは見奈美家家伝の流水術でありましょう。
 長谷川選の六席。

     水を怖れ水を疑い泳ぐなり是こそは鳥羽流古代泳法!  鳥羽散歩


〇   水に奪はれ水を奪はれ炎暑   (高岡市)池田典恵

 西に「水に長じ水に安んじ泳ぐ」男が居れば、東に「水に奪はれ水を奪はれ」て泣く女が居る。
 長谷川選の七席。

     塁を奪われ塁を奪い返す稀に見る盗塁王奪取合戦  鳥羽散歩


〇   ぐつたりと畳干したる雨休   (高松市)島田章平

 「高松城の水攻め」という、安土桃山時代の戦がありましたが、あれは四国の高松城では無くて、毛利氏配下の清水宗治が守る備中国の高松城を織田信長配下の羽柴秀吉が攻略した戦いでありました。
 余計なことを言って誤魔化したりしてご免なさい!
 長谷川選の八席。

     土嚢並べ並べた土嚢で被害が更に拡大したる今度の豪雨  鳥羽散歩


〇   夏草や岩戸景気の工場跡   (八王子市)樋口雄二

 「岩戸景気」とは」、「日本の経済史上で1958年(昭和33年)7月から1961年(昭和36年)12月まで42箇月間続いた高度経済成長時代の好景気の通称」である。
 「投資が投資を呼ぶ」と言われた、特需景気が三年半余りも続いたこの期間に於いては、大企業のみならず、中小企業や零細企業に及ぶまで設備投資を行い、日本全国各地に工場が建設されたのであるが、それが今となっては仇となり、その当時建設された工場が廃墟と化して、夏草の繁茂するままに任せているのである。
 長谷川選の九席。

     夏草やつわものどもの夢の跡!僕の父さん社長であった!  鳥羽散歩


〇   ゲバ棒と寝たアカシアの花の下   (東京都)たなべきよみ

 西田佐知子が唄う 「アカシアの雨がやむとき」をときラディオで聴きながら「ゲバ棒」を振るったあの頃!
 東京都にお住いの田辺清美さん(性不詳)は、今となっては二度と帰らないあの頃が懐かしいのでありましょうか!
 長谷川選の末席。

     末席と書いてはみたが何故なのか罪の意識に怯える鳥羽は!  鳥羽散歩   
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今週の「朝日歌壇」より(2018/7/29掲載・そのⅣ) お陰様にて詩歌部門の六位にランクされました!本ブログはただ単に戯言を書き散らすだけの事でありますから、これ以上の上位進出は望みませんが、これからも宜しくご愛読賜りたくお願い申し上げます。

〇  サッカーのワールドカップサポーターほどの結集反戦に欲し  (奈良市)矢尾米一

 私たち日本国民が「反戦」運動を貫き、かつ、その目的を成し遂げる為には確かに国民相互の「結集」が必要である!
 然しながら、本作の作者が述べている「サッカーのワールドカップサポーターほどの結集」とは、量の問題への主張、即ち「人員と熱狂度」の問題への主張であって、質の問題への主張、即ち「戦争は絶対にしてはならない!戦争法案を成立させてはならない!その為には安倍政権を打倒しなければならない!といった平和への強い思い!」といった問題への主張ではありません!
 「反戦」への、私たち日本国民の「結集」は、その量以上に質の方が問題なのである!
 ここで大変僭越ながら、私見を申し添えさせて頂きますと、「サッカーのワールドカップ」の「サポーター」に限らず、サッカーのJ1リーグでのサポーターやプロ野球の私設即席応援団などに見られる「結集」は、それに組みする輩が、ただ単に現実生活に満たされなかったり、自己の未来に対する確固たる希望を抱けなかったりしてなどの、その代償行為としての「結集」なのであり、「反戦」運動でのそれとはやや質を異にすると思われます!
 その点を考慮せずして、プロサッカーやプロ野球のグランドのスタンドに居て、馬鹿声を上げて「結集」している輩を、毎週金曜日の夜に国会前で行われている、「反戦」かつ「反安倍政権」の決起集会に動員したとしてもかえって逆効果を生み、戦争を良しとする輩!原発再稼働を良しとする輩!安倍政権を是とする輩を、かえって喜ばせる結果になりはしないかと、私・鳥羽散歩は、その点を大いに危惧している現状なのであります!
 高野選の首席。

     作者及び選者の恨めしき単細胞!ナショナリズムのスポ根は駄目!  鳥羽散歩


〇  玉三郎の花魁道中の目映さよ女と生まれ傍観者なり  (清瀬市)波多野浩子

 こうした問題に関しては、私・鳥羽散歩は「傍観者」以下の存在を自認している次第であります。
 高野選の次席。

     花魁は人身売買被災者だ!花魁道中何で目映し!  鳥羽散歩


〇  担任が卒業名簿を読むように法相は処刑されし名を告ぐ  (春日井市)新海広之

 本作の作者の新海広之さんは、学級担任教師に被害感以外の何物も抱いていないように見受けられますが、私のそうした考えは如何でありましょうか?
 私も卒業者名簿の呼名を経験したものでありますが、学級担任教師は、いくら何でも法務大臣がオウム事件関係の処刑者の名を、記者会見場で読み上げるような態度で卒業生の呼名をしたりはしませんよ!
 高野選の三席。

     新海さん!教師の気持ちを考えな!恨み辛みの卒業式か!  鳥羽散歩


〇  高一の娘と話すその後にすぐに調べるティックトックを  (鳥取県)野間エミ

 今どき、「ティックトック」も知らないで「高一の娘」の母親をやってる女が居たとは知らなんだ!
 鳥取県にお住いの野間エミさんは、そもそも結婚したのが間違いなのではありませんか!
 高野選の四席。

     ティックトックはビブラート&チクタクぼんぼん時計は進む!  鳥羽散歩


〇  夏の夜眠る幼子涼求め布団の海をぐるぐる泳ぐ  (ひたちなか市)我孫子郁恵

 「布団の海」とは、三首入選者の表現としてはやや月並みか?
 高野選の五席。

     夏季合宿 布団の海に枕巌 シーツ汚すと割り増し料金  鳥羽散歩
  

〇  歴史的豪雨に死者が出たさなか首相も飲んでた「赤坂自民亭」  (長野市)関龍夫

 私は特別に安倍総理の味方ではありませんが、「歴史的豪雨に死者が出た」とは、何と言う幼稚な表現ではありませんか!
 高野選の六席。

     記録的豪雨の最中でも総裁選の対策怠り無くせにゃなりません  鳥羽散歩 
 

〇  万物の霊長である人を刺す孑孑あがりの分際なるに  (福岡市)永井祝子

 私も格別に蚊に刺され易い体質でありますから、永井祝子さんとは全く同感です!
 高野選の七席。

     蚊取り線香効き目無し今更に母の釣りたる青蚊帳恋し  鳥羽散歩


〇  意識ってついつい外に向きがちでそれを内側に戻すのがヨガ  (東京都)上田結香

 何やら、怪しげな悪魔崇拝の黒ミサを思わせて、近寄り難い一首かと思われます。
 高野選の八席。

     内側に向かう意識は自省です!吾は一日三度の自省!  鳥羽散歩


〇  三条の橋の袂の束子屋でマドモアゼルが棕櫚束子買う  (明石市)高野有

 「三条の橋の袂の束子屋」であろうと、亀の子束子本舗の西尾商店であろうと、「マドモアゼルが棕櫚束子」を「買う」事に問題がありましょうか?
 それよりも問題なのは、本作は「マドモアゼル」という国籍不明の一語に寄り掛かっているだけの凡作である、という点であります。
 高野選の九席。

     三条は白川橋の袂なる「是よりひだりち於んゐんぎおんきよ水みち」とふ道標  鳥羽散歩


〇  合唱部にスカウトしたき野球部のテナーの掛け声夏空に飛ぶ  (横浜市)森明子

 合唱に欠かせないのはハーモニーである。
 ハーモニーとは、即ち「調和」である。
 あの野球の応援団員の胴間声は、合唱に何よりも必要な調和を損ないますから「スカウト」するのは止めときなさい!
 高野選の末席。

    合唱部にスカウトするとはとんでもない!やはり野に置け応援団は!  鳥羽散歩

今週の「朝日俳壇」より(2018/7/29掲載・そのⅣ) 愛読者諸氏に感謝しての特別公開!!

〇   八日後ははや落蟬となる運命   (芦屋市)酒井湧水

 蟬の命は僅かに七日間と言われている。
 残された七日間を精一杯、命を懸けて鳴くが宜しい!
 稲畑選の首席。

     三日後に落武者となる光秀か   鳥羽散歩
     三日後に満期になれど利子少し


〇   探査機の涼しく着きし小惑星   (長岡市)内藤孝

 JAXA(宇宙航空研究開発機構)が七月十九日に行った記者会見にて明らかにした最新の観測結果に依ると、「直径およそ900メートルの<リュウグウ>の地表の温度は、太陽光の当たり具合によって摂氏30度から100度ほどで、地表での探査活動に大きな問題はないことがわかりました」とのことである。
 我が国の小惑星探査機「はやぶさ2」は、七月二十七日に地球からおよそ3億キロ離れた小惑星「リュウグウ」に到着し、上空2万メートルからの観測を始めている、とのことである。
 本作の作者は、「探査機の涼しく着きし小惑星「」と詠んでいますが、これは、現実の小惑星「リュウグウ」の地表の温度が低くて、「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」に涼しく到着したと言うよりよりも、地球から300000000キロも離れた小惑星「リュウグウ」に思いを馳せ、「我が国の小型探査機が彼の地で涼しい思いをして、その任務をつつがなく果たして欲しい」という作者の果てしない願望が述べられているものと思われます。
 稲畑選の次席。

     長岡は殊の外なる酷暑の地 宇宙に馳する思ひは涼し  鳥羽散歩


〇   十薬や摘みし十指を持て余す   (神戸市)岩永ひとみ

 どくだみの苦みが十本の指に染み付いたので、十指を持て余したのでありましょうか?
 稲畑選の三席。

     十薬は万病に効くクスリです持て余さずに十指を舐めろ  鳥羽散歩
     十薬の苦み走ったいい男鳥羽は若い時大変モテた


〇   口重き男がひとりビール酌む   (芦屋市)笹尾清一路

 彼の心には、ビールの苦さと共に人付き合いの厳しさがしみじみと沁み込むことでありましょう。
 稲畑選の四席。

     ビール酌む口を窄めてビール酌むビールの苦さは憂世の苦さ  鳥羽散歩


〇   花合歓の名残りの風に触れてきし   (高松市)白根純子

 「花合歓」の最盛期は七月半ば頃である。
 七月の半ば頃に合歓の花のピンクを揺らして吹く風に、本作の作者の白根純子さんは「触れて」来たのでありましょうか?
 稲畑選の五席。

     花合歓のピンクに勝る白百合の白根純子はよかおなごばい!  鳥羽散歩


〇   汗手貫老僧かつて同期兵   (神戸市)日下徳一

 「汗手貫」とは、「着た和服の袖を汗で汚さぬように手首に着ける装身具。籐・竹・鯨の髭などで筒状に粗く編まれている。洋装が一般化しいる現在では僧侶などが主に用いられている」とか。
 今は「老僧」と化して「汗手貫」で以って両手の袖口に流れる汗に耐えている翁も、元を質せば神戸市にお住いの日下徳一さんの「同期兵」であったのでありましょう。
 稲畑選の六席。

     バイクにて檀家回りの住職の隠れもあらぬ汗手貫かも  鳥羽散歩


〇   出港のクルーズ昼の灯の涼し   (柏原市)早川水鳥

 「クルーズ」とは「客船による観光旅行」を指して謂うのであるが、凡そ「クルーズ船」と呼ばれているからには、豪華客船と呼ばれるべき大型で豪華な船舶でなけれはなりません。
 また、そうした豪華で大型の船舶に乗船しての船旅を「クルージング」と呼ぶが、クルージングに出で立つ豪華客船は、真昼間でも甲板や客室などにケチケチせずに燈火を灯しているのでありましょう。
 本作の作者の早川水鳥さんは、「出港」する際の「クルーズ船」が「昼」に灯す「灯」は涼しい、と詠まれている訳でありますが、私・鳥羽散歩は、恥かしながら、凡そ、クルージングと呼ぶべき船旅をした経験がありませんので、その是非に就いては存じ上げません。
 稲畑選の七席。

     信濃では筏に乗っての船旅で酔ってしまって吐いてしまった  鳥羽散歩


〇   アルプスの血潮は蒼き夏の川   (神戸市)涌羅由美

 取材対象の「アルプス」とは、スイスなどの本場のアルプスを指して謂うのでありましょうか?
 それとも、英人・ガウランド・及びウエストンが名付くるところの俗称「日本アルプス」、即ち「飛騨山脈・木曽山脈・赤石山脈」を指して謂うのでありましょうか?
 稲畑選の八席。

     源は鷲羽岳とか黒部川滾つ滝つ瀬富山湾に急ぐ  鳥羽散歩


〇   雲の峰崩れ暮色のはじまりし   (島根県邑南町)服部康人

 少なくとも数時間の気象観察に拠って得られたこの入選作でありましょう。
 稲畑選の九席。

     雲の峰崩れて空し夕焼けに邑南町の空染まるべし  鳥羽散歩

今週の「朝日歌壇」より(2018/7/29掲載・そのⅡ) 大変お待たせ致しました!昨日はマイブログのランキングが急騰し、何と驚いたことに詩歌部門の第七位という栄誉に輝きました!是も皆様方のお蔭と深く深く感謝致します!

〇  淵の辺にニッコウキスゲは霧の中音させて木道を鹿の来る  (朝霞市)青垣進

 「ニッコウキスゲ」及び「木道」の二語に拠って、尾瀬湿原探索に取材した作品かと推測される。
 だとしたら、「淵の辺」とは如何か?
 また、「音させて」とは如何か?
 本作は上記二点の疑問点があるので、馬場選の首席に相応しくない凡作と判断される。

     すたすたと鹿が木道駈けてゆくニッコウキスゲは霧に隠れつ  鳥羽散歩


〇  大雨の被害に対処する娘市役所に詰め一夜帰らず  (三原市)岡田独甫

 地方公務員として当然為すべきは、市民生活の安全を図る事である。
 例えば、地震や豪雨に見舞われ市民生活の安全が損なわれんとする場合は、市役所吏員は、性別年齢を問わず、その地位を問わず、勤務場所たる市役所などに詰め掛け、必要にして十分なる業務を為さなければなりません。
 という訳で、作中の「娘」が「大雨の被害に対処」せむとして、「市役所に詰め一夜帰らず」じまいに終わったのは、地方公務員として、当然為すべき事を為したまでの事でありますから、当該者の父親が心配したり、娘の為した特別な善行として誇るべきものではありません。
 馬場選の次席。

     僧なれば事の善否は識るならむ?それはさうでも汝は父親!  鳥羽散歩


〇  古代蓮咲けばひらひら湧き出でて蝶蜻蛉とふ蜻蛉の飛べり  (熊谷市)内野修

 「蝶蜻蛉」なる、得体の知れない名称を負う生物の正体は、「トンボ科の昆虫」であると言う!
 従って、「蝶蜻蛉とふ蜻蛉の飛べり」という下二句の叙述は、極めて適切を得たる表現である。
 馬場選の三席。

     蚊蜻蛉は細脚乙女の蔑称!蝶蜻蛉は蜻蛉の仲間!  鳥羽散歩


〇  いく度もあの世とこの世を往き来して母は夕餉を完食したり  (埼玉県)島村久夫

 嘆かわしい事にも「完食」なる極めて文学表現に相応しからぬ語を用いた作品が、堂々と朝日歌壇の入選作品として、しかも、馬場あき子選の四席入選作品として紙面に掲載されるのが現代社会というものでありましょうか?
 だとしたら、現代日本社会の本質は、<一億総介護対象者社会>とでも言うべき点にありましょう。
 余計な事を記してしまいましたが、当然の事ながら、本作自体には何の罪咎も欠陥もありません!

     吾は今朝 白桃一顆を完食す!事の序でに梨も完食!  鳥羽散歩

 
〇  爆音を響かせバイク走りゆく己の脆さを嘆くごとくに  (観音寺市)篠原俊則

 し斯くして、徒に「爆音を響か」しむるばかりの「バイク」とやらは、今や、市民社会の敵とも言うべき存在に成り果ててしまったのでありましょうか?
 馬場選の五席。

     ママチャリの前と後ろに孫を乗せ古希を過ぎても元気なバアバ!  鳥羽散歩
     ナナハンを蒸かして飛ばせ能免道!百姓ばらを驚嘆させよ!


〇  深みどり肩怒らせてピーマンの守る空白真二つに切る  (川崎市)八嶋智津子

 「ピーマン」が「肩」を「怒らせて」「空白」を「守る」とは、アインシュタインの特殊相対性理論にも匹敵する大発見かも知れません。
 馬場選の六席。

     真二つに断たれて痛し!ピーマンの肩怒らせて守る空白!  鳥羽散歩


〇  ほんのりとシナモン匂う月の出て君を迎える紅茶の支度  (札幌市)森越裕里

 「月の出」と「シナモン」との香り合いが微妙な佳作である。
 馬場選の七席。

     ほんのりとシナモン薫る森のいへ月の出待ちて来ませ吾が君  鳥羽散歩

     
〇  言葉にはならないけれどしゃべってる歯のまだ生えぬ赤子の口は  (ひたちなか市)我孫子郁恵

 観察の行き届いた佳作です。
  馬場選の八席。

     「可愛くて可愛くてもう仕方がありません」って感じの佳作です!  鳥羽散歩


〇  われよりも先に新聞読みたがる九十三の母まだ惚けず  (岩手県)山内義廣

 宅配の新聞を購読していない家庭が激増している今日、「九十三の母」が「まだ惚けず」に居て、「われよりも先に新聞読みたがる」のは、極めて珍しく極めて望ましい傾向ではありませんか!
 馬場選の九席。

     記事よりも先にチラシを読みたがる消費社会に生きてる妻は  鳥羽散歩


〇  四年目の庭の桃の木実を百個付けて七月切なく撓む  (深谷市)森一枝

 「桃栗三年柿八年」という格言もありますから、「四年目の庭の桃の木」が「実」を「百個」も付けたこと自体は、それ程にも異とするには値しません。
 然しながら、小粒の桃は、出荷に不向きな等外果実と認定されますから、家庭で食する以外の術はありません。
 馬場選の末席。

     五年目の庭の桃の木今年こそ選り選りて大粒の実を  鳥羽散歩 

ブログ逍遥「黒田英雄の安輝素日記」より

 下掲の短歌は、孰れも「黒田英雄の安輝素日記」の「№3315・『塔』七月号・陽の当たらない名歌選2~塔を見捨てないで~ 」に掲載されている、結社誌「塔」の今年の七月号に掲載されている作品である。
 私が、この度、これらの短歌に就いて触れようと思ったのは、件の記事の後書で黒田英雄氏ご自身が仰って居られるが如く、「『塔』の結社誌が、一時の低迷を抜けて、最近面白くなってきている」と思ったからである。
 私は、現在、結社誌と名の付くものには、一切、所属していないし、これからもよほどの事が無い限り無所属のままで、 否、独り結社「詩歌句誌面」の同人として短歌を詠み、読んで行こうと思って居るのであるが、それでも尚且つ、『塔』、『短歌人』、『未来』、『心の花』、『かりん』などの有力結社の動向には少なからず注目して居り、『短歌』、『短歌研究』 などの総合誌を通じて、他の結社に所属する歌人などの作品にも注目しているのであるが、一結社の特定の号に掲載されている作品がこれだけの粒揃いであったことは、是までに絶えてありませんでした。
 こうした珍しい現象は、一に「陽の当たらない名歌選」の選者・黒田英雄氏の選歌眼の宜しきを得ての事でありましょう。
 就きましては、今回、私は、こうした佳作を私の前に披露して下さった黒田英雄氏に感謝すると共に、彼の卓越した選歌力に敬意を表しつつ、下掲の作品の鑑賞を試みたいと思います。

     「塔」7月号・陽の当たらない名歌選2

〇  左うで君の背中にゆったりとまわせばそれもリハビリとなる  落合優子

 年下の男性とのラブシーンを「それもリハビリとなる」と茶化したお手並みはなかなかのものである!
 「左うで君の背中にゆったりとまわせば」とは、決して、男性に依って抱かれてからの行為ではなく、自らが優位に立って、男性をゆっくりとした気持ちで抱く場面でありましょう。
     リハビリとしての不倫の恋である小遣い銭に不足はあらず  鳥羽散歩


〇  今はねえ宇宙論に夢中なのモルヒネ二倍に増やして友は  森永絹子

 終末医療にしての「モルヒネ二倍」投与」でありましょうか?
 それと知りながらも、「友は」私に「今はねえ宇宙論に夢中なの」と言葉にならない言葉で以って囁くのでありましょうか?
     宇宙とはわたくし自身のことである!私の没後に宇宙はあらず  鳥羽散歩
     

〇  産卵管ひきずりのたうつエイリアン慈悲か無慈悲か母であること  王生令子

 「産卵管ひきずりのたうつエイリアン」でさえも「母」として次世代の「エイリアン」を産出しなければならない運命を担っているのである。
 「エイリアン」にとっては、「母であること」が「慈悲か無慈悲か」か判別が付かないのでありましょう。
     エイリアンならざる者はあらざりき神の無慈悲のわがエイリアン  鳥羽散歩


〇  黒猫を見た日はいいことありさうな少し歩幅が大きくなつた  浅野美紗子

 「黒猫を見た日はいいことありさうな」とは、ゲン担ぎもいいところである!
 斯く申す、私もまた、最近「少し歩幅が大きくなつた」ような気がしますが、だからと言って、私は最近黒猫に出会ったことがありません。
    努力して歩めば歩幅が広くなる!終活にはまだ早過ぎるけど!  鳥羽散歩
 

〇  赤チンを塗った子供のいない世に膝小僧すりむいてしまった  石橋泰菜

 通称「赤チン」の正式名称は「マーキュロクロム液」である。
 我が国では、製造工程で水銀が発生するという理由から1973年頃に製造が中止されたが、大衆常備薬として求める声は多く、海外で製造した原料を輸入することで現在も販売されている。
 私の子供の頃は、駆けっこをして膝小僧を擦り剝いたからと言って「赤チン」を、野良仕事を手伝っていて蚊に刺されたからと言って「赤チン」を、センズリを掻き過ぎてまんずりとも眠れなくなったからと言って「赤チン」をと、この赤い消毒薬は、万能薬として持て囃されていたのであったが、この頃は「赤チン」を膝や腕に塗った子供は見掛けられなくなってしまいました。
 そうした折りも折り、彼女は女だてらに「膝小僧すりむいてしまった」のでありました。
 この泣くに泣けない悲劇から、本作の作者の石橋泰菜さんは、如何にして脱出出来るのでありましょうか?
    マニキュアを膝小僧に塗りたくり誤魔化しなさい怪我治るまで  鳥羽散歩


〇  首を横に振れぬ詰め襟の学生服 縦に振らせて同調うながす  上仲修史

 体育会系部活動に於いて、監督やコーチが部員相手によく遣る手である。
     首を振れ!私は監督!同意しろ!同意しなけりゃ試合に出さぬ!  鳥羽散歩


〇  犬小屋の灯りが雪に瞬きてちゃちゃの魂揺れているがに  中島芳子

 「ちゃちゃ」とは、愛犬の呼び名でありましょうか?
     犬小屋で雪に降られて暮らすのはさすがに辛いちゃちゃを助けて  鳥羽散歩


〇  懇々と諭されてゐる春の夜の眼鏡の似合ふ人だあなたは  新井 蜜

 「懇々と諭されてゐる」最中に、上司に向かって「眼鏡の似合ふ人だあなたは」も無いもんだ!
 上司は眼鏡美人の熟年女性でありましょうか!
     春の夜に諭されている新井さん床あしらいが下手な間男  鳥羽散歩
     

〇  中身のないビニール袋を持っているみたいな日々だ もう春が来た  紫野 春

 「中身のないビニール袋」とは、空虚にして存在価値の無いものである。
 本作の作者・紫野春さんは、自らの生活を顧みて「中身のないビニール袋を持っているみたいな日々だ」と言っています。
 と言う事は、紫野春さんの人生そのものが無価値・無内容なものであることを、紫野春さんご自身が告白した事になるのであるが、それでも尚且つ、紫野春さんは自ら「もう春が来た」と言っています。
 春夏秋冬という四季の巡りは、人間の暮しの価値・無価値に関わらず、時が来れば平等に遣って来るものである。
 だとすれば、私たち人間にとって最も恐るべきは四季の巡りである、という事になりましょう。

     中身が無くても春は春、恐るべし春の訪れ、四季の巡り  鳥羽散歩

 
〇  まだ誰も見たことのないコロンボのかみさんよりも影薄き我  王生令子

 刑事「コロンボのかみさん」の姿は、コロンボファンの私も見たことがありません。
 つまり、私たち刑事コロンボファンにとって、彼の「かみさん」は影薄き存在どころか、影も形も無い無価値な存在なのである。
 本作の作者の壬生玲子さんは、自らを「コロンボのかみさんよりも影薄き我」と呼んでいます。
 然しながら、そうした彼女の空しい思いを題材にした本作は、もの凄く大きな存在である。
 と言うことは、壬生玲子さんにとっては、本作こそは、一発逆転満塁さよならホームランなのでありましょう。
     壬生さんの起死回生の本塁打巨人の四番岡本見習え  鳥羽散歩


〇  痛みどめの薬にしては残酷なほどみずみずしい名前だ エリカ  小松 岬

 「エリカ」は「リリカ」の書き間違いかと思われますが、如何でありましょうか?
    「エリカ」より「リリカ」の方がみずみずし!残酷無情な女「リリカ」!  鳥羽散歩


〇  尖頭の墓碑は女名満州の従軍看護に往きて還らず  萩尾マリ子

 「先の尖がった墓碑」即ち「尖頭の墓碑」の多くは戦死者の墓碑の場合が多いようであり、「陸軍伍長泉谷彦四郎昭和十三年中国長沙の匪賊討伐戦に於いて抜群の手柄を立てるも名誉の戦死」といった碑銘とその添え書きが刻されている場合が多いようです。
 然るに、本作に於ける「尖頭の墓碑」には「女名」が刻されていて、「満州の従軍看護に往きて還らず」との添え書きが為されているとの事であります。
 本作の作者と「尖頭の墓碑」に刻された「女名「」とは、如何なる縁で繋がっているのでありましょうか?

   「陸軍伍長泉谷某「」と碑は刻む!その余の文字は毀れて読めず  鳥羽散歩


〇  僕は正しく生きていたいだけなのに天気予報がもう邪魔である  大橋春人

 「天気予報」が何が故に、「正しく生きていたいだけ」の「僕」にとっては「邪魔である」のか?
     雨が降る傘が無いから働けぬ僕は正しく生きて行きたい  鳥羽散歩

     
〇  まよなかのまぶたを圧すつよさにていつか聞きたいことがあります  小田桐 夕

 そんなにも強く圧迫しなくたって、私の記憶している限りの事ならば教えて上げますよ!
     記録にも記憶にもない事ならば教えてやろうにも教えられない  鳥羽散歩


〇  ブタ食えば体にしっぽが生えそうで焼肉の時はスカートはかず  北野中子

 「焼肉」」の「」パーティの後は、とかく男性どもがワイルドになりがちでありますから、「スカート」を着用せずに、出来るだけスリムなズボンを着用されて参加された方が宜しいかも知れません!
     ブタ喰えば唸ってみたくなる男セクハラ容疑で即刻逮捕!  鳥羽散歩


〇  汚染土にブルーシートを被せてるサ行ではない花見の場所取り  北野中子

 「サ行ではない」とは、「場所取り」するべき区域が、花見の為に区画された場所の「サ行ではない」場所という意味と、「場所取り」という仕事そのものが、会社で定められた正規の「作業ではない」という意味との掛詞でありましょうか!
     汚染土にレッドカードを貼り付けろ!悪徳業者を締め出せ被災地!  鳥羽散歩


〇  言いさしの言葉に栞するように春の暦に書きこむ名前  高松紗都子

 仰りたい事は十分に解りますが、「言いさしの言葉に栞」を差し挟む事は出来ません!
 また、本作の作者の高松紗都子さんはもう若くはありませんから、「春の暦」に「名前」を「書きこむ」を事も出来ません。
     若ければ春の暦に名を記し共に出でなむ春日野辺り  鳥羽散歩


〇  帰るまえ児らをぎゅうっと抱きしめる息子にはもうできない分も  中山惠子

 なんて可哀想なバアバでありますことよ!
 「児らをぎゅうっと抱きしめ」たりしたら、ババ臭くなると「息子」の嫁さんに嫌われますよ!
     抱き締めた貯金通帳ゼロにして児らの学資と嫁さんに出せ!  鳥羽散歩


〇  アメリカンショートヘアーの売れ残り甘え上手は愛され下手だ  海老茶ちよ子

 本作の作者の海老茶ちよ子さんは、「アメリカンショートヘアー」の子猫のブリーダーたらんとしているのでありましょうか!
 だとしたら、「甘え上手は愛され下手だだとしたら」とは、自らの半生を顧みての訓戒でありましょう。
     愛されて子猫みたいに捨てられて辿り着いたるブリーダーの道  鳥羽散歩
 

〇  不幸には敏感幸せには鈍感その傲慢をもう止めなさい  小川 玲

 「不幸には敏感幸せには鈍感その傲慢をもう止めなさい」とは、まさしく人間理解の至言である。
     極端に幸と不幸に敏感な小川玲さん傲慢なやつ  鳥羽散歩
     

〇  営業手法を説きつつ歩くなりたくはなかったかつての先輩として  池田行謙

 「歩くなりたくはなかった」存在になるのが、営業社員の宿命のようなものでありましょう。
     したり顔で営業手法を説き捲りホステス嬢に嫌われちゃった  鳥羽散歩


〇  乾杯ののちにするりと抜け出して万歳三唱までに戻りぬ  垣野俊一郎

 顧客を招待しての宴会に於ける、遣り手営業社員の泥酔対策の常套手段である。
     別室で板さん相手に茶を喫し英気養ひ再度登場  鳥羽散歩
 

〇  耳元で鰻を食うかと尋ねれば父は微笑み呼吸止めたり  鈴木健示

 斎藤茂吉の晩年の逸話を思わせる一首である。
     耳元で食うか食うかと囁かれ猫騙しを食はされて負け  鳥羽散歩


〇  散ることに全力なのだ 渦巻いて枝垂れ桜が人を隠した  島本純平

 古来、桜の散る様は私たち日本人が潔くぱっと命を散らす様に例えられて来たのであるが、本作での枝垂れ桜は、そうした世俗的な比喩などを連想させる事なく、花見客の存在などもまるで無視して、全力投球という感じで散って行くのである。
     散り逝くを急ぐ勿れと言はしめず万朶の桜の全き力  鳥羽散歩 

今週の「朝日歌壇」より(2018/7/29掲載・そのⅠ) お待たせ致しました!

〇  父の日や父ともならず戦死せし叔父の墓碑銘指先に読む  (長野県)千葉俊彦

 「指先に読む」だけが取り柄の一首である。
 永田選の首席。

    父の日や父であること認めずに父無し子にした男を恨む  鳥羽散歩


〇  「疲れた」と言えるうちはまだよくて(つかれた)をただ抱えて眠る  (国立市)佐藤建

 日本全国の「疲れた族」は、安倍内閣の「働き方改革」に因ってさぞかし救われることでありましょう。
 永田選の次席。

     (疲れた)を抱えて眠る君に告ぐ!疲れた程度じゃ死にはせんぞな!  鳥羽散歩


〇  もういいよもういいよって言ってやる止めてやらねば壊れてしまう  (白井市)毘舎利道弘

 「もういいよもういいよって言って」遣りなさいよ!
 但し、自公連立政権にですよ!
 永田選の三席。

     もういいよ!もう沢山だと言って遣れ!辞めてくれなきゃ壊れる国が!  鳥羽散歩


〇  慎ましく生きてると言えば見れば分るたまにくる息子あっさりと言いぬ  (新発田市)岡村愛子

 「慎ましく生きてると言えば見れば分る」とは?
 短歌表現のイロハも知らないような作者を入選させてはいけません!
 その責任の全ては、選者の永田和宏氏に帰すべし!
 永田選の四席。

     慎ましく生きていること見れば判る!口外すること勿れ息子よ!  鳥羽散歩

 
〇  すぐそこに虐待死する子があるに救えぬ我らサッカーに沸く  (摂津市)内山豊子

 摂津市にお住いの内山豊子さんは、ご高齢乍らもワールドカップサッカー・ロシア大会に現を抜かしたのでありましょうか!
 だとしたら、真にご苦労さんでありました!
 永田選の五席。

     虐待死する子を救うなんてこと容易く言うな!カッコ付けるな!  鳥羽散歩


〇  絵日記に続く帆と潮見るために子を連れて来し牛窓の海  (京都市)森谷弘志

 「絵日記に続く帆と潮見るために子を連れて来し」とは?
 文意不明の作品を入選させてはいけません!
 永田選の七席。

    絵日記に吾子が描きし潮の香を共に嗅ごうと赤穂まで来し  鳥羽散歩


〇  会えないと私は思い会わないとあなたは決めて梅雨明けの街  (横浜市)岡田紀子

 結局のところ、本作の作者の岡田紀子さんと彼氏とは「梅雨明けの街」で会ったのですか?
 それとも会わなかったのですか?
 会ったのかも会わなかったのかも判別出来ないような曖昧な表現で以って、選者や読者の頭を混乱させてはいけません!
 永田選の八席。

     梅雨明けの横浜そごうで待ってたが彼とは会えず仕舞いに終わった!  鳥羽散歩


〇  国中に大雨降る日選ぶごとオウム七名刑執行されぬ  (千葉市)鈴木一成

 我が日本国の領土の最東端は、「南鳥島・坂本崎(東京都小笠原村 北緯24度17分12秒 東経153度58分50秒)」であり、最西端は、「与那国島・西崎(沖縄県八重山郡与那国町 北緯24度26分58秒 東経122度56分01秒)」である。
 また、最南端は、「沖ノ鳥島・北小島(東京都小笠原村 北緯20度25分30.6585秒 東経136度4分11.1766秒 )」であり、最北端は、「択捉島・カモイワッカ岬(北海道蘂取郡蘂取村 北緯45度33分28秒 東経148度45分14秒)」である。
 と言うことになりますと、我が日本国の国土は極めて膨大であり、「国中に大雨降る日」などという「オウム七名」を死刑執行するに相応しい「日」は、物理的にはあり得ない事と思われ、また、仮に在ったとしても、それを「選ぶ」ことなどは極めて困難な事であろうと思われます。
 オウム事件の死刑囚の死刑執行を、安倍政権が何かの理由で以って、国際世論に逆らって急行した事に対しては、朝日新聞を肇としたマスメディアの多くが批判的であり、かく申す、私・鳥羽散歩も亦、全く同感ではあります。
 しかしながら、だからと言って、「国中に大雨降る日選ぶごとオウム七名刑執行されぬ」などと、出鱈目な事を言ってはいけません!
 暴風や大雨に因る災害、五歳児の虐待死、オウム事件関係の死刑囚の死刑執行、ワールドカップサッカー・ロシア大会、など等の「インスタ映え」ならぬ「短歌の題材とするに格好な大事件」が起きるや否や、世の歌人ちゃんは、挙げてその件に関わる短歌を詠んで新聞歌壇に投稿せんとする。
 「短歌は機会詩である」とは、斯道の権威者の弁ではありますが、確かにそうではありますが、何かの事件が起きると、此処を先途とばかりに短歌を詠み、新聞歌壇に投稿し、入選作として紙上に掲載されるような傾向は、必ずしも、望ましい者とは思われません。
 この点に就いての、本ブログの読者の方々のご意見を拝聴致したく存じ上げます。
 永田選の九席。

     歌人ちゃん挙りて詠まむ機会詩と!下手な横好き傍迷惑だ!  鳥羽散歩


〇  五輪前平成のうちにの声あり人を死なすはタイミングらし  (朝霞市)青垣進

 「声あり」とありますが、誰の「声」なのでありましょうか!
 本作も亦、此処を先途とばかり」的発想に因る駄作として読ませていただきました。
 永田選の末席。

     五輪前改元前に瓦解せよ!安倍某泥的内閣!  鳥羽散歩

今週の「朝日俳壇」より(2018/7/22掲載・そのⅡ)

〇   玉の汗流るる一行詩のごとく   (川口市)青柳悠

 「一行詩」とは、俳句や短歌の如き一行で以って読み切り、かつ完結する詩歌である。
 「玉の汗」が「一行」に流れる有様を「一行詩のごとく」と直喩表現したのである。
 長谷川選の首席。

     仁王門二行扁額勅願寺   鳥羽散歩


〇   夏草や蕪村の越えし与謝峠   (福知山市)森井敏行

 国道176号は、京都府宮津市から兵庫県丹波地方を経由して大阪府大阪市北区に至る、総延長184.3 km の一般国道であるが、「与謝峠」は、その旧道部分に相当する峠越え道である。
 この峠越え道は、現在、与謝トンネルの開通に拠って自動車が行き交うことが無くなってしまい、半ば荊棘に覆われた道、即ち、獣道に近い様相を呈しているのであるが、与謝トンネルの開通以前はコンクリート舗装されたこの峠を日本海側から瀬戸内海側に往復する自動車が行き交い、擦れ違うことさえも思うままにならない交通の難所とされていたのである。
 江戸中期・天明の俳人、与謝蕪村は摂津国毛馬村の生れであり、四十路過ぎになって著名な俳諧師として京都に定住するようになったのであるが、丹後国与謝村に生まれた母親との関りがあってなのか同地との関りが深く、この与謝峠を越えて京都と丹後国与謝村との間を幾度も往復したものと思われる。
 長谷川選の次席。

     木曽殿と背中合せのヤバさかな  鳥羽散歩


〇   白南風を見んと灯台辺りまで   (東京都)金子文衛

 風が人間の肉眼で見える訳がありませんから、「白南風を見んと」とは、「梅雨明けの南風に素肌を曝して、夏らしさを実感してみようととして」という意味である。
 長谷川選の三席。

     白南風や窓辺に見ゆる瀬戸の海  鳥羽散歩


〇   兜太とも青嶺続きよわが郷も   (千葉市)辺見雅朗

 本句の作者・辺見雅朗さんも、今は亡き金子兜太氏と同じ埼玉県の秩父地方の生れなのでありましょうか?
 長谷川選の四席。

     反戦や金子兜太は荒凡夫  鳥羽散歩


〇   マチスの絵歩いてサマードレスかな   (盛岡市)松田昭雄

 フランスの画家・アンリ・マティスの絵、即ち、作者の言うところの「マチスの絵」は、彼・アンリ・マティスが、自然をこよなく愛し「色彩の魔術師」と謳われ、緑溢れる世界を描き続けた画家であったが故に、「サマードレス」の柄にするに相応しいものである。
 長谷川選の五席。

     ダリの絵のサマードレスは売ってない  鳥羽散歩


〇   蘭鋳のチュチュを脱ぎたき仕種かな   (松戸市)をがはまなぶ

 「チュチュを脱ぎたき仕種」とは、真によく言ったものである!
 長谷川選の六席。

     チュチュと脱ぎチュチュと吸はれて棄てられつ  鳥羽散歩


〇   妻でなく母でなき日の夏帽子   (長野市)縣展子

 家族の柵から解放されて、ご皇室の女性の方々みたいな夏帽子を被って上高地辺りを散策するのでありましょうか?
 長谷川選の七席。

     妻で泣き母で泣く日よ麦藁帽   鳥羽散歩
     妻辞めて!事の序でに母辞めて!夏の帽子を被ってモテル!  鳥羽散歩


〇   親切な夫の団扇受けて寝る   (浜松市)田中ハツエ

 定年退職してしまえば、大抵の男は、妻女の前では親切男の振る舞いを演じるものですよ!
 長谷川選の八席。

     渋団扇叩く一閃逃ぐる夜蚊  鳥羽散歩


〇   遠ざかりゐし郭公のまた近く   (長岡市)長谷川回天

 「郭公」もまた、人里が恋しくて鳴くのである。
 長谷川選の九席。

     郭公のこゑ遠ざかりゆく十里越え  鳥羽散歩


〇   人生きて骨壺ひとつ夏子立   (柏市)関口清子

 「人生きて骨壺ひとつ」残せば、それで良しとしなければなりません。
 長谷川選の末席。

     骨ひとつ残さで逝きしミンダナオ  鳥羽散歩

今週の「朝日俳壇」より(2018/7/22掲載・そのⅠ)

〇   この齢を乗り切る汗でありにけり   (高崎市)山本春樹

 願望ばっかり言って居てはなりません!
 「そうは問屋は卸しません」との例しもありますよ!
 稲畑選の首席。

     
〇   子の電話冷房入れて水飲めと   (藤沢市)小田島美紀子

 事の序でに、電気料金も水道料金も支払ってくれたら宜しいのにね!
 稲畑選の次席。


〇   天国に増えしともがら雲の峰   (東京都)大久保白村

 全く同感ですね!
 稲畑選の三席。

     雲の峰眺めて偲ぶ戦友の金釘流の水茎の跡  鳥羽散歩


〇   切々の夢をつなぎて昼寝覚   (洲本市)高田菲路

 眠りが浅いと「切々の夢」を見るとは、よく聞きますね!
 稲畑選の四席。

     切れ切れの息に目覚めし昼寝かな  鳥羽散歩


〇   汗涼し軽き命はなかりけり   (神戸市)森岡喜恵子

 稲畑選の五席。

〇  張る枝の力瘤見よ大夏木   (米子市)中村襄介

 稲畑選の六席。

〇   日に雨に今日生き抜かん千日紅   (大阪市)友井正明

 稲畑選の七席。

〇   虚子に触れ子規を繙き明易き   (東吾妻町)酒井大岳

 稲畑選の八席。

〇   楽しみは待つてふ時間女王花   (神戸市)玉手のり子

 稲畑選の九席。

〇   次次と色の足し算七変化   (泉大津市)多田羅初美

 稲畑選の末席。

馬場あき子第七歌集『ふぶき浜』抄

〇   遠きもの霞みてみえぬ春なればおぼろに置かんわれの思いも   「幽居出でて」より
〇   きさらぎや逃亡の武者ひとりゆく戦記の故郷梅咲きにけり
〇   水と空静謐なれば三月の心さわぎて魚ちらしけり
〇   文字渉る夕べのまなこわびしきに対きて蒼ざめ立つ桜あり
〇   初夏の陽に箪笥小暗く開かれぬ歩み出でゆく影かぎりなし
〇   草刈りし手はほてりつつ午後におりことば生みたき疼きにも似て  「不実ぞ顕つや」より
〇   青白く冷たき手もて書きている文章のこと世冨慶われむ
〇   蜻蛉の日記に雨降り竹群に雨降り心しずかに昏む
〇   毬つく手弾む心をしずむる手夕日海なすなかを.漂う
〇   斬り死のごとき思いぞ少年は草薙ぎいたりいさかいのはて
〇   秋の風原野を分くるまぼろしのあずま路ありてわが下りゆく   「萩の中空」より
〇   君逝きし越中平野わが果つるあずまさがみのなかぞらの秋
〇   逃れ得ねば冬日に対きて目を閉ざす囚われのごときわが机辺かな   「雁を恋う」より
〇   一すじの思いにひかれ堕つるごとぜひなき生の冬を釣るなり
〇   綿菓子のはかなき嵩をあきなうや師走の空の無限に碧し
〇   夕暮るる多摩の横山一つ凧逝く年遠くみつめていたる
〇   白き紙ナイフに裂けば逝く年の愁いのごとし閑寂として
〇   歳の夢なきにあらねど水仙の手桶は暗き土間に片寄す
〇   生きながら魚切られおり極月の暗黒を走る霰きこゆる
〇   鳩棲みて彫刻荒れし転害門真闇深めてその鳩ぞ鳴く
〇   椿一花はわれのたなぞこ満たす量富士しみじみと背に澄みてあれ   「東方の魁」より
〇   卍なる心絡みて夕澄みの空を落ちくる男あらずや 
〇   談論のふさわしからぬ深秋やさびしきときの口を漱がん   「ことば立つみゆ」より
〇   藪椿見よとひらけり寒風のつれなき暗き宇津谷峠   「冬の奈落へ」より
〇   ゆきてまた何に会うべき降り出でて霰なりけることのうれしさ
〇   都鳥沖へ去りゆく夕暮れをみておりわれと昔男と
〇   山草はむすぼほれつつ丈低し日当る冬ぞさびしかりける
〇   たそがれてゆきけり浮寝する鴨もわれもわずかにひもじきながら      

今週の「朝日俳壇」より(2018/7/22掲載・そのⅣ)

〇   曲がりても曲がりても炎ゆ夜の上海   (川越市)横山由紀子

 「曲がりても曲がりても」は、単なる不眠都市「上海」の街の街路の複雑さの説明なのでありましょうか!
 高山選の首席。

     横車押して南沙諸島をせしめたり   鳥羽散歩


〇   肋浮く釈迦もイエスも夏衣   (埼玉県宮代町)鈴木清三

 痩身者みな聖者という訳ではありません。
 高山選の次席。

     父の名は骨皮筋右衛門角帯を三重に巻いても尺余も余る  鳥羽散歩


〇   かはほり漂ふハモニカ横丁の昼   (我孫子市)藤崎幸恵

 「ハーモニカ横丁(ハモニカ横丁)」を名乗る、間口が狭い飲食店や小規模商店が連立する路地は、青森県八戸市のハーモニカ横丁、東京都大田区京急蒲田駅前のハーモニカ横丁、神奈川県横浜市野毛の都橋商店街の通称としてのハーモニカ横丁、兵庫県明石市の明石駅前のハーモニカ横丁と、その規模の大小に関わらず言うと、日本全国に数え切れない程にも在るが、そのルーツは、我が国が第二次世界大戦.の敗戦国となった後の1940年代後期、荒廃した吉祥寺駅前に出来た闇市の通称なのである。
 東京都武蔵野市吉祥寺と言えば、日本一住み易い街として知られているのであるか、「ハーモニカ横丁」という通称で以って知られている、JR中央線吉祥寺北口駅前は、未だに闇市と呼ばれていた時代の面影を残していて、入り組んだ細い路地の中に、小まんじりとした小売店や飲食店が百軒近くも並んでいて、まさしく「ハーモニカの吸い口」の如き趣きを呈しているのである。
 この地区に「ハーモニカ横丁」なる愛称を奉ったのは、敗戦後間もなく吉祥寺や阿佐ヶ谷、中野などの中央線沿線に居住していて、夜な夜な飲み屋街を徘徊して居た作家連、通称「中央線作家」の一人であった亀井勝一郎であり、彼が、「この吉祥寺北口駅前のごみごみした商店や飲食店が百軒余りも立ち並ぶ様を、その頃流行りの楽器のハーモニカの吸い口に例えたことから由来している」という事である。
 それはともかくとして、千葉県内の何処かの街の「ハモニカ横丁」と呼ばれる狭い路地の飲食街には、真昼間でさえも「寛政蝙蝠が飛び交っているのでありましょうか!
 高山選の三席。

     首都圏と称してゐるが千葉県は昼もなお蝙蝠が飛び交ふ  鳥羽散歩


〇   古扇閉ぢて話芸の巨匠逝く   (豊田市)森本秀子

 私・鳥羽散歩は、つい最近まで横浜市の一郭に棲息していた、かつての「笑点」の司会者・桂某を、「話芸の巨匠」とは思っていません。
 高山選の四席。

     冨士子さん.残して死んだ歌丸が化けて出るかも盂蘭盆の夜  鳥羽散歩
     座布団を運んで幾年落語家の鈴々舎鈴丸こと山田隆夫


〇   梅雨の蟻モーゼの貌でさすらえり   (川西市)菱野としみ

 さすがの働き者の蟻さんも、梅雨の間は働こうにも働く場所が無いので、彼の古代イスラエルの民族指導者「モーゼの貌」で、苦悩しているのでありましょう。
 独裁者・ファラオに因って迫害されているヘブライ人を約束の地に導こうとする「モーゼの貌」と梅雨の間の「蟻」の「貌」とは、本作の作者・菱野としみさんの鋭い観察眼を以て観察すれば酷似しているのでありましょう。
 高山選の五席。

     我が杖は六尺余りの蛇になる!モーゼの貌に導かれ蟻さん運べ!


〇   しゃぼん玉ひらがなだけのしゃざいぶん   (新居浜市)上田由岐子

 五歳児虐待死事件に取材した作品でありましょうが、猫も杓子もの類と感じますので、この際は無視させていただきます!
 高山選の六席。


〇   少年の頭列べて草を刈る   (新座市)五明紀春

 「ならべて」と読むのならば「並べて」と表記すれば宜しいのであり、殊更に「列べて」と表記しなければならない理由は見当たりません。
 それに、今どき、「少年」が五人もがん首を並べて鎌で草を刈っているような光景が見られましょうか?
 高山選の七席。

     新座市はさすがに田舎!少年が五人揃って草刈りしてる  鳥羽散歩


〇   一の瀞二の瀞夏の鴨の瀞   (仙台市)三井英二

 福島県西白河郡西郷村に「西郷瀞」と呼ばれている清流が在ります。
 日本海を目指して流れる急流・阿武隈川の源流にほど近い断崖絶壁沿いの渓谷ですが、紅葉の季節以外には観光客が殆ど見当たりません。
 本作の作者の三井英二さんは、この猛暑の季節を殊更に選んで、「西郷瀞」におみ足を運ばれたのでありましょうか?
 高山選の八席。


〇   糶箱を逃げだす章魚をつれもどす   (八王子市)長尾博

 八王子魚市場での「糶箱を逃げだす章魚をつれもどす」劇の一幕でありました!
 係員の方の慌てふためく様子が髣髴とされる一句である。
 高山選の九席。

     糶箱を逃げ出したとて海まではあまり遠くて逃げられません  鳥羽散歩     


〇   サンダルの軽さで夏の恋は来る   (筑後市)近藤史紀

 尻軽女を例えて、「あいつはサンダルみたいだ!」などと言う。
 事ほど左様に、「サンダル」というものは軽くて安くて安易な履物なのである。
 筑後市にお住いの近藤史紀さんのこの「夏の恋」は、極めて安易な形で展開されているのでありましょうが、事の始まりがサンダルを履くが如く安易な形で始まったのでありましょうから、事の終りも擦り減ったサンダルを脱ぎ捨てるが如く、極めて安易な形で終るのでありましょう。
 高山選の末席。 

     矢部川の水辺で拾った恋だから空き缶みたいにポイと捨てよう  鳥羽散歩     

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