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archive: 2019年05月

「小島ゆかり第十四歌集『六六魚』」の再再読

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〇  やや、これは、やややや、まこと妊婦なる娘のお腹せり出してくる〇  世の中によくあることがわが家にも起きて驚く鳩の家族は〇  もの思ふ秋もへちまもありません泣きぢから凄き赤ん坊ゐて〇  われはもや初孫得たり人みなにありがちなれど初孫得たり〇  赤子泣くそこは世界の中心でそこは世界の片隅である〇  二日目のみどりごをガラス越しに見てしばらく立てり白い渚に〇  ゆふぞらの犬の太郎よ君の知る少女はお...

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古雑誌を読む(短歌往来・2019年6月号)

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     第十七回・前川佐美雄賞受賞作      小島ゆかり作『六六魚』50首抄〇  旅のはじめは旅のをはりに似てさびし足元に紺のトランクを置く〇  「昔は」と言ふたびわれを戒むる娘はむかしわれが産みたり〇  椿見れば椿に見られわれに棲む死者もつぎつぎ眼をひらくなり〇  三分間ゆつくり老いてシーフード・カップヌードル、いただきます〇  地下鉄の夜の車窓にならぶ顔 むかし海から来たわたしたち〇  世の...

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「小島ゆかり第十四歌集『六六魚』」再読

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〇  はるぞらのどこかチカッとひかりつつあけつぱなしの文房具店〇  ときどきはもんしろ蝶も出入りする文房具店だれかゐますか〇  文房具のにほひなつかし交換も一つおまけもなし人生は〇  さくらみな葉ざくらとなり新しき遠近感の街を歩めり〇  夕焼けの空に穴ありわたりゆく先頭の鳥見えなくなりぬ〇  猫たちに虫をいぢむる恍惚のときありて虹いろの両眼〇  見つめ合ふうち入れ替はることあるをふたりのみ知り猫と...

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古雑誌を読む(短歌・2019年3月号)

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     初役   栗木京子(塔)〇  紅葉がアルファベットのやうに散る道を歩みぬ黙してふたり〇  歩くとは厚さを踏みてゆくことか落ち葉の嵩や霜のきらきら〇  樹はどこにも行かない 約束を破りたる人に葉擦れの音のメールを〇  三角にとがれるサンドイッチ食む反故にされにし午後の約束〇  あくびしてゐし人なれど去り際に空に漂ふ鷲の目をせり〇  空高く飛ぶ鷲よりも海面に触れつつすべる信天翁うつくし〇  ...

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「丸山薫詩集『帆・ランプ・鷗』」より

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    翼 鷗は窓から駆けこんで 小屋のランプを微塵にして そのまま闇に氣を失つた かつては希望であつたらう 潮に汚れた翼が いまは後悔のやうに華麗に匂つてゐる    挿 話 蝙蝠が帆に巻き込まれ 帆は帆桁(ヤード)に括られたまま 風が出なかつたので いつまでも展らかなかつた ──あれからどうしたらう? 舷燈(ランプ)がそんな獨り言を言つた    闇 ランプを闇に點すと ランプは叫んだ ──むかふの闇...

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古雑誌を読む(短歌・2019年4月号・作品12首より)

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〇 幾種類もの水仙植ゑし塀の外遠回りして投函に行く  吉村睦人(新アララギ)〇 止まりよき電柱ならむその下にいつも数多の鳥の糞落つ〇 この花をともに見たりしかの時は二人は未だ独身なりき〇 思ひ当たる節のれどもすでにして十数年も前のことなり〇 ベートーベンの終の顔これ石膏のデス・マスク座右に古りて煤けぬ  小林サダ子(からの)〇 杉群の中より生れて朝もやはうつりうつろふ空にむかひて  児玉喜子(万象...

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