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archive: 2019年06月

「佐伯裕子第八歌集『感傷生活』」を読む

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〇  口中に広がる笑い祖父に似るジョーカーいくどもわれは引き当つ〇  祖父の処刑すめば遺りし勲章の切れこみ深きもみじの葉っぱ〇  敗戦が終戦、占領は進駐へ。やさしく饐えて匂える言葉〇  この風は上州生まれの祖母の息わたしが吹けば祖母も吹きくる〇  歳月はふっと消え去りゆきしかば「ふっ」という息の妙なる香り〇  眠るのは逃避と言われし若き日よ咎めし母も老いて眠りぬ〇  膝ついて母の靴ひも結ぶときもう...

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高辻郷子の短歌

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〇  氷泥をだぶんだぶんと打ち上げて結氷を告ぐる海の肉体   『農の一樹』〇  砕土するめぐりに遊ぶ鶺鴒よ鬼にもなれる男ぞわれは〇  都会には住めぬ男ら火を囲み火よりも熱き言葉投げ合う〇  淡雪を全身にあびて立つ松よ愚直なる男を好きかお前は〇  殺気立ちているにあらずや雪の中ビート掘りせる男の背中〇  われはいま星に刺されて酔う男秋耕夜なべ終えしひととき〇  耕せる大地を覆い雪深しここは終の地譲れ...

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『滝沢亘歌集 (国文社刊・現代歌人文庫 12)』を読む

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〇  鰯雲北にかがやきこころいたし結核家系われにて終る〇  陽を避けてアーケードゆき木陰ゆくわれは蝙蝠(かはほり)のごとき孤独に〇  曇り日に天水槽の彦がみゆ重き一個の精神のごと〇  亜麻色の複眼にわれを追ひながら病むごとくしずかなりし蟷螂〇  熱のあるこころさびしも夢にさえ息切々と船漕奴隷(ガレリアン)われ〇  餘計者とみづから知れどにじみくる泪はついに至らざるゆゑ〇  午後の森尽きて燦たる泥濘...

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不条理短歌へのアプローチ

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①   物語性の欠如②   時間や空間の曖昧性③   コミュニケーションの不全④   アイデンティティーへの不安⑤   上記四条件を満たした上でのプラスアルファー的要素とは何か?...

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古雑誌を読む(短歌・2018年10月号)

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 特別作品30首     夏の影   睦月都(かばん)〇  空間は爛れてゐたりひとむらののうぜんかづら咲かせむがため〇  昼の陽に感情の底洗ひつつゆきかふ日々の靴が脱げさう〇  妹が帰らぬ夜のひとつあり真珠のやうに寂しかりけり〇  蟬声は軍事のごとく近づけり七月朔のうすき窓辺に〇  空想に蛇を飼ひつつ昼ありて夜はケーキをたべて眠らむ〇  家々の屋根とがらせて七月の町はひとでのやうにたゆたふ〇  夜の...

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「栗木京子第十歌集『ランプの精』」を読む

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 私にとって歌を詠むということは、遠いどこかからこのランプの精を呼び寄せることなのではないか。子供っぽいと笑われそうですが、そんな気がしています。ランプの精が差し出すのは恋ごころだけに限らず、驚きや寂しさや嘆きやなつかしさなど、とりどりの表情をもつ感情です。(「あとがき」より)〇  半身をけむりのやうになびかせて秋の夜ランプの精出で来ずや〇  触れたれば音出るものをよろこびし幼き吾子を憶ふ初夏の夜...

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