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archive: 2019年07月

「『真鍋美恵子全歌集 (1983年・沖積舎刊)』」を読む

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〇  薔薇の刺のやうなる青き爪研ぎて出でゆけば猫は深夜のけもの〇  蜥蜴のやうな指してスプーンをわが前に人があやつりてゐる〇  宣教師の卓にぬぎゆきし手袋が魚の肌のやうに光れる〇  量感のなべて希薄となれる午後酸ゆき木の実をわれは食みたり〇  鳥の脚のやうな茎せる植物が密生したるくらき渓あり〇  なめし皮の表のごとき海面が米穀倉庫の間より見ゆ〇  鈎傷のあぎとに深くある魚を焼きをり長く火にかがまり...

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「吉野弘詩集『北入曽』」より

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       秋の傷   奥さまがお有りのあの方と、私は歩いた   川岸にひろがる丈高い葦の茂みを   われ乍ら軽薄と思う冗談をふりまいて   「気をつけないと傷つけますよ」   あの方が、そうおっしゃった   それは葦の葉の鋭い切っ先のことでしたが   私は、こんなふうに聞きたかった   「僕を信じすぎてはいけません」   ──言うならば、何事かへの歯止め……   私は首をすくめた「小説の読みすぎだ...

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「永田紅歌集『春の顕微鏡』」を読む

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〇  これからを本番として 君は説く一点突破全面展開〇  自らの専門を武器となすことに微かな後ろめたさはきざす〇  若き日の糊しろ部分を生きている私よ走ってから考えよ〇  タイミング違えて生きる 息つぎのようにときおり君を見かけて〇  どんな人と聞かれて春になりゆくを 春は顕微鏡が明るい〇  居心地のよき背中なり凭れても撫でても我にひらかれていて〇  会うことも会わざることも偶然の飛沫のひとつ蜘蛛...

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古雑誌を読む(短歌・2019年6月号)

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〇  お遍路で初めて受けたお接待おにぎりひとつが六腑に染みた  香川県 島田章平 上掲の一首は、朝日歌壇や朝日俳壇でお馴染みの島田章平さんが角川俳壇に投稿されて、玉井清弘選の特選に選ばれた一首である。 選者の玉井清弘氏の選評には、「遍路をすると『お接待』に遭遇する。金銭、食べものなどが無償で提供される。初めて『お接待』を受けた驚きは大きく、とまどうことが多いが、やがて『六腑』に染みわたり、次へと歩...

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古雑誌を読む(短歌・2019年6月号)

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第53回 迢空賞受賞作     内藤明作 『薄明の窓』抄〇  突つ立ちて葦吹く風を見てゐたり流され来たる朝のごとくに〇  入り海といへど寄せ来る力あり水平線まで一途なる青〇  言葉とは行く雲の影 わたつみにいま生まれたる水泡を思ふ〇  手の甲に首の寝汗をぬぐひをりさを知らぬ中年のくび〇  むかしむかし水を湛ふる星ありと祖母が語りし日の繰れ方〇  存分に楽しみしゆゑ割れるのを待たずに捨てむ緑のグラス〇...

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「花山周子第三歌集『林立』」を読む

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〇  杉の伐採を雇用対策になさんとする麻生元首相の計画いかになりけん〇  一石二鳥、否、一石五鳥くらいの鳥が落ち来る政策〇  己が根を忘れ上へと伸びてゆく山のなだりに整然として〇  国木なき日本にたびたひげ起こるとうスギを国木にせんという意志〇  杉の根の軟弱さなど思いつつポケットに手を入れてバス待つ〇  杉山に人は孤独に散らばって文明開化の音を聞くべし〇  古河電工日光電気精銅所付属病院耳鼻科に...

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