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archive: 2019年08月

「石川美南第六歌集『架空線』」を読む

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〇  妬ましき心隠して書き送る〈前略、へそのある方のわたし〉〇  めりめりとあなたははがれ、刺すやうな胸の痛みも剥がれ落ちたり〇  へそのある方のわたしとすれ違ふパレードを持つ喧噪の中〇  へそのないわたしは冷えと寂しさに弱くて、鳴らす歩道の落ち葉〇  イアンはしばし考え込んだ。     「それって普通のことじゃないですよね?」〇  それつて案外普通のことよ わたしたちの昨夜に同じ記憶が灯る〇  ...

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「中津昌子第五歌集『むかれなかった林檎のために』 (2015・砂子屋書房刊)」を読む

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〇  あおぞらよりしみでるようにくるひかり むかれなかった林檎のために〇  雨粒がひとつ当たりぬ青空がまだ残りいる鴨川左岸〇  月はもう沈んだ頃か 吸いのみにすこしの水を飲ませてもらう〇  鬼百合のつぼみがあかくふくらむをまるごと濡らし雨は降るなり〇  地に近く黄の色を曳く蝶々よおまえがたてるものおとあらず〇  わたしがいないあいだに落ちしはなびらを丸テーブルの上より拾う〇  五年間服むことになる...

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「前田康子第五歌集『窓の匂い』(青磁社刊・2018年)」を読む

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〇  秋色のコントラバスよ子に抱かれある時は子に寄り添いくれし〇  好きだったコロッケ屋へと連れて行き僕の住む町教えおり子は〇  たこ焼きのプレートこわれ家族四人集まる時間少し減りたり〇  舞台挨拶見ていた頃に運ばれて脳の手術を受くとう母は〇  「いつも来る年寄りの人」と父を呼び母の話は辻褄が合う〇  食べ物とおむつの匂いの病棟を繁華街にてふいに思いぬ〇  三日月のように丸まりていく母よ老いて病み...

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