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archive: 2019年09月

「大口玲子第六歌集『ザベリオ』」(2019年・青磁社刊)を読む

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〇  菜の花は何を忘れて この春もひたむきに黄をこぼしつつ咲く〇  山茶花のくれなゐこぼす木の下へわれは密書を携へて来つ〇  生ハムを一枚いちまいはがすとき鎌倉彫のお箸をつかふ〇  九階にのぼればあをき海の見えパジャマの人の背中うごかず 〇  面倒をやり過ごさむとする時に言ふなり「夫と相談します」〇  口論のさなか目を閉ぢ天からの雪に感応して立ち上がる〇  祈りとは遠く憧るることにして消しゆく われ...

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事の序でに「岡崎裕美子第二歌集『わたくしが樹木であれば』」も捲る

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〇  わたくしが樹木であれば冬の陽にただやすやすと抱かれたものを〇  飴玉のようなボタンと言いながら外してくれた夜 雑司ヶ谷〇  横にいるあなたの点滅たしかめるさっき魚を殺めた指で  〇  ほの暗い空蟬橋を渡るとき握らずにいた手だったと思う〇  自転車の冷たい管に触れている手を取らぬまま駅で別れた〇  おばさんでごめんねというほんとうはごめんとかないむしろ敬え  〇  太腿も腕も絡めて眠りたり目覚...

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「佐藤文香第一句集『海藻標本』」を睨む  

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〇  アイスキャンディー果て材木の味残る〇  秋の湖しばらく息を吐かずにおく 〇  朝顔や硯の陸の水びたし〇  足長蜂足曲げて飛ぶ宝石屋〇  暗室に時計はたらく冬の蝶〇  空蝉に指の湿りを移しけり 〇  海に着くまで西瓜の中の音聴きぬ〇  音いつぱいにして虫籠の軽さかな〇  牡蠣噛めば窓なき部屋のごときかな〇  傘差すに音のいろいろ芝青む〇  傘立てに日傘の影を忘れけり 〇  逆光の汽船を夏と見しこ...

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