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archive: 2019年11月

今日の一首(11月30日)

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〇  枇杷の実の貧乏くさき実が成れる路地を曲がれば葬式に遭う  永田和宏 『饗庭』所収。 詠い出しで「枇杷の実」と言い、二句目と三句目に跨って更に「貧乏くさき」という必ずしも誉め言葉ではない形容詞付きで、その枇杷の「実」を強調している。 この「(枇杷の)実」の重出には如何なる意図があるのだろうか? 作中主体(=作者)の胸中には、枇杷というバラ科の常緑高木に成る果実としての「枇杷の実」に対する理想像...

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今日の一首(11月29日)

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〇  投げられし檸檬のゆくえ思いつつきょう初夏の聖橋越ゆ   藤田千鶴 『白へ』所収。     或の日湯島聖堂の白い石の階段に腰かけて     君は陽溜りの中へ盗んだ     檸檬細い手でかざす     それを暫くみつめた後で     きれいねと云った後で齧る     指のすきまから蒼い空に     金糸雀色の風が舞う       喰べかけの檸檬聖橋から放る       快速電車の赤い色がそれとす...

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今日の一首(11月28日)

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〇  隣にて小便をする男不意にわが歌の批評を始めたり  永田和宏 世界的権威の細胞生物学者であり、京都大学名誉教授たる者が! その勢力下に、一千名以上の歌詠みを擁する、短歌結社「塔」の前・主宰たる者が! 掲出の短歌を収めている、歌集『饗庭』をご上梓された後、十数年後の今日、天下に名だたる愛妻にして恐妻たる歌人、河野裕子に先立たれて泣きの涙で暮らしている、歌人・永田和宏氏ともあろう者が、一体全体、真...

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「永田和宏第六歌集『饗庭』」を読む

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            『饗庭』抄      鳥羽散歩選〇  やはらかき春の雨水の濡らすなき恐竜の歯にほこり浮く見ゆ  (「比叡の肩」)〇  大いなる伽藍のごとく吊られいる骨の真下を見上げつつ行く〇  ミイラ並べる地下より出でて夕光の深き角度はやや不安なり〇  遠り雨過ぎたる坂の石だたみ 無人の坂は立ち上がる気配〇  土まだら草生まだらに濡れている西より日照雨の脚はやく去る〇  川端丸太町西岸に来...

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参考文献

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「『聖戦の詔勅を拝して』(短歌研究・昭和十七年一月号)」より(参考文献)宣戦の詔勅を拝して 「短歌研究」(昭和十七年一月號)北原白秋 天にして雲うちひらく朝日かげ真澄み晴れたるこの朗ら見よ おぼほさむ戦ならずしかもなほ今既にして神怒り下りぬ 事しありて死なまく我ら一億の定あきらなり将た生きむとす 長き時堪へに堪へつと神にしてかく嘆かすか暗く坐しつと吉井勇 大詔いまか下りぬみたみわれ感極まりて泣くべく思...

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「春日真木子第十三歌集『何の扉か』」に頭を垂れる

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〇  さくら散る時間(とき)の光を牽きて散る 何の扉か開くやうなる〇  何いろにわが眼に映る今年花 憲法九条あやふきときに〇  花桃のひらきてわれは九〇歳 ああ零からの出発の春〇  九〇歳は吉事にあらめこれよりはボーナスタイムよ朗ら澄む空〇  鳩寿なるわれと並びて二歩三歩土踏む鳩の歩みは優し〇  九十歳のわれの腕に湯気ぬくし女のみどりごの桜じめりよ〇  中年が宙年ならば老年は牢年なりや 朗年とせむ...

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古雑誌を読む(短歌・2018年11月号)

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      「雨に近づく」     田村元(りとむ・太郎と花子)作  〇  ポロシャツが少し毛羽立ちたるころに今年の長い夏も行きたり 昨年のの夏は、暑くて長かったからね!  その暑くて長い昨年の夏を、君はポロシャツ一枚で過ごしたのでありましょうか! 歌会の席などで、私がいつも感じていることでありますが、短歌を詠む男性の中には、(それが男らしい、と言えば、それまでのことですが、)服装や恰好に気を遣わ...

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「馬場あき子第二十七歌集『あさげゆふげ』」を読む

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〇  朝餉とは青いサラダを作ること青いサラダは亡きはは好みき  (あさげゆふげ)〇  絶妙な薄さに切られあるハムを剥がしてしんめうに二皿とする〇  みめよくて大力にて大食の僧の自在をめでし兼好〇  茶柱が立つてゐますと言つたとてどうとでもなし山鳩が鳴く〇  するべきかせざるべきかと思ふこと「一言芳談」はすなと訓へき〇  ノンアルコールも晩酌といへば晩酌で田螺の味噌煮ですお肴は〇  丸めて捨てる紙が...

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「藤島秀憲第三歌集『ミステリー』」を読む

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〇  三月のわが死者は母左折する車がわれの過ぎるのを待つ〇  学歴にも職歴にも書けぬ十九年の介護「つまりは無職ですね」(笑)〇  父が建てわれが売りたりむらさきの都わすれの狂い咲く家〇  医学生が父の解剖する午後をチラシ配りに歩くわたしは〇  献体を終えたる父を連れ帰る父が来たことないアパートに   〇  七月のすずめはスリム足もとに来たるすずめにパン屑落とす   〇  「あの場所」で君に伝わるあ...

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「藤島秀憲第二歌集『すずめ』」を読む

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〇  もうみんな大人の顔つき体つき冬のすずめに子供はおらず〇  来る人と去る人の数合っていて結局ひとりぼっちのすずめ〇  雨どいに溜まりし水を初恋の味のごとくにすずめは飲めり〇  お手玉になった気分でとびはねる雀よ ぼくにも好きな人がいる〇  一羽かと見れば二羽いる目白かな われは苦しい恋をしており〇  川からの風に露わとなる額理性が恋を長持ちさせる〇  クマノミがイソギンチャクにまた隠れあなたを...

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