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詩歌句誌面

読解なくして論評あらず。

今週の「朝日俳壇」より(2020/2/23掲載) 40首40句一挙大公開!乞う一読讃嘆!   泣き過ぎは泣かぬに劣る通夜の客!女人ひたすら泣かずに座せり!   縺れ居し関係を解く原因の一つとしての友人・Мの死!

     稲畑汀子選

〇   全山のリフトが動く雪到来  (米子市)中村襄介

 お待たせ致しました!
     長々と待たせましたが真打の瀬川雪之丞只今登場  鳥羽散歩


〇   ささくれの指に残れる寒さかな  (神戸市)池田雅かず

 「指」が「ささくれ」立つのは、このところしばらくの晴天続きで私たちの身の周りは極度の乾燥状態に置かれているので、その所為かも知れませんが、もう一つの原因としては栄養不足が上げられます。
 私たち日本人は、「指のささくれぐらいは何のその!」などと、つい、うっかり油断してしまいがちですが、もしかしたら、それは、体調不良のサインかも知れませんので、ゆめゆめご油断なされるな!
      十本の指のささくれ宇治宇治と痛む黄昏れ酒買ひに行く  鳥羽散歩


〇   今生の別れもあらむ鶴引けり  (鹿児島市)青野迦葉

 日本最大の鶴の渡来地である、鹿児島県出水市には、毎年10月中旬から12月頃に掛けて、一万羽を超える鶴が越冬のためシベリアから渡来し、三月頃まで滞留してするとの事でありますから、数多くの鶴の中には、再びシベリアに帰らなければならない時期になっても、何かの原因で飛び立つことが出来なくて、留鳥として彼の地に留まる者も在るに違いありません。
 鹿児島市にお住いの青野迦葉さんは、我が国最大の鶴の飛来地近辺の住人として、掲句を通じて、その種の不幸な鶴に思いを致したのでありましょう。
     根性で飛んだとしても息が切れ海の藻屑となる鶴も在る  鳥羽散歩


〇   もつれゐし枝先を解く寒の雨  (富津市)三枝かずを

 そんなケースもあり得ましょうか!
     縺れ居し関係を解く原因の一つとしての友人・Мの死!  鳥羽散歩


〇   鳴きすぎは鶯笛でありにけり  (泉大津市)多田羅初美

 或いは、稀にそんなケースもあり得ましょうか?
      泣き過ぎは泣かぬに劣る通夜の客!女人ひたすら泣かずに座せり!  鳥羽散歩 


〇   仕舞ひたる膝掛け探す余寒かな  (横浜市)松永朔風

 来週の日曜日から月曜日に掛けて、横浜市の気温が真冬並みになるとの事でありますから、「仕舞ひたる膝掛け探す余寒かな」というケースも、或いは在り得ましょうか!
     姉妹して湯たんぽ探す節句過ぎ妹の児は又も浪人  鳥羽散歩


〇   みしみしと山家軋ませ冴返る  (小樽市)伊藤玉枝

 せっかく春が来たとい云うのに、三月に入って寒さが再びぶり返したりする事があります。
 でも、「みしみしと山家軋ませ冴返る」なんて!
 それは北海道特有の「冴返る」ではありませんか?
      みしみしと山家軋ませ熊さんが捥ぎ残された渋柿漁る  鳥羽散歩


〇   海よりの風にさゆらぐ花ミモザ  (高槻市)小島公子

 私・鳥羽散歩が、北東北の田舎町から上京し、最初に観た美術展は、ナビ派に分類される19世紀~20世紀のフランスの画家「ピエール・ボナール展」でありました。
 今から半世紀以上も前の事なので、記憶も定かではありませんが、彼の描く、色彩鮮やかな「ミモザの咲く家」を目前にした事は、北東北の暗い冬から解放されて上京したばかりの私にとっては、頗る付きの感動的な体験でありました。
 それ以来、私・鳥羽散歩にとっては、「ミモザ」なる花は、.ヨーロッパ社会の豊かさを象徴する花として意識されるようになったのでありました。
      瀬戸内の海より吹ける春風にミモザ花咲き黄色鮮やか  鳥羽散歩


〇   蠟梅の日向大きくしてをりぬ  (高松市)白根純子

 「蠟梅の日向大きくしてをりぬ」とは、極めて大胆なスケッチである。
     蠟梅の花咲く日向.大きくて日がな一日縁先温し  鳥羽散歩


〇   立春の光の窓を開け放つ  (大阪市)山田天

 本句も亦、極めて大胆なスケッチに拠る一句である。
     立春の光の窓を開け放ち心放ちて従妹にメール  鳥羽散歩
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今週の「朝日俳壇」より(2020/2/23掲載) 40首40句一挙大公開!乞う一読讃嘆!   嶋割れて山と鳥とに別れたり!島の抱けるもう一つの山!   八十を略して三粒年の豆ウイルスまみれの掌で受け止めつ!   

     大串章選

〇   闇凍てて闇といふ字の音を聞く  (川越市)八嶋智津子

 「闇といふ字の音」を「耳」で「.聞く」のでありましょう。
     嶋割れて山と鳥とに分かれたり島の抱けるもう一つの山  鳥羽散歩


〇   雛飾り古き生家を輝かす  (福岡県大木町)徳永スキ子

 我が家でもお雛様を飾りました。
 我が家のお雛様は、栃木県の佐野の土人形雛と秋田県横手の中山の土人形雛であります。
     孫娘二人の入試合格を願ひて飾る土人形雛  鳥羽散歩
     孫娘二人の入試、上々の結果を得て終了間近!     


〇   蜷の道壊さぬほどの流れかな  (東かがわ市)桑島正樹

 春まだ浅い渓流を、あの小っちゃな蜷(カワニナ)が何処へ旅立とうとしているのでありましょうか?
 彼は、螢の餌になるのを嫌って、この谷間から川崎の工業地帯を貫くドブ川へ逃亡しようとしているのでありましょうか?
     カワニナのよちよち歩きの川宿に螢が居れば.餌にされちやふ  鳥羽散歩


〇   臥竜梅柩に姿勢正す父  (大村市)小谷一夫

 祭壇の前に置かれた父の柩!
 その柩の傍らには、父の道楽仕事の臥竜梅の鉢が置かれているのでありましょう!
 「臥竜梅」の如き捻くれ者であった父も、柩の中の人ともなれば、さすがに姿勢を正さざるを得なくなるのでありましょう。
     柩にて姿勢正すも遅かりき!桜を見る会!モリカケ疑惑!  鳥羽散歩


〇   学生に銭湯ありし冬の月   (岡山市)奥西健次郎

 花柳章太郎や水谷八重子や安井昌二などが演じて居た、かつての新派劇を思わせる一句である。
 ところで、入浴設備の無いアパートに入居している学生諸君にとっては、銭湯通いするよりもスポーツジム通いする方が割安にして健康的ではありませんか!
 しかも、運が良かったら仲良しの友達も見つかりますからね!
     書生らが銭湯帰りに見る月と同じ月見て通ふ吉原  鳥羽散歩


〇   年の豆両手の皺で受けにけり  (西海市)前田一草

 自分で食べるのだったら何も問題はありませんが、仮にでも、お孫さんなどに食べさせようなどとしたら、息子の嫁が黙って居ませんよ!
     八十を略して三粒年の豆ウイルスまみれの掌で受け止めつ  鳥羽散歩


〇   薄氷の光と稚魚の光かな  (日立市)川越文鳥

 川尻漁港からの堤防釣りに取材した一句でありましょうか?
     薄氷を踏むやコロナウイルス禍  鳥羽散歩


〇   落葉踏みやはらかき日を踏みにけり  (平塚市)日下光代

 湘南平へのハイキングに取材した一句でありましょうか?
     落葉踏み湘南平へハイキング!枯落葉とは言はせぬ夫!  鳥羽散歩


〇   梅真白父の日記の捨てられず  (廿日市市)和泉忠伸

 「梅真白」から連想される、ひらがな文字の「父の日記」、そして、その「父の日記」を「捨てられず」と思う、本句の作者・和泉忠伸さんは、既に御父上の死亡時の年齢を越えられたご長命であらせられます。
     梅紅く母の鏡に映え居たり  鳥羽散歩


〇   みちのくの民話の里の根深汁  (奈良市)上田秋霜

 「みちのく・民話・根深汁」という、何となく俳句を思わせる<役力士>三語の揃い踏みである。
 「みちのくの民話の里」とは、何処の地を指して云うのでありましょうか?
 岩手県の遠野を肇として候補地が目白押し状態である。
 また、<葱を具とした味噌汁>を「根深汁」と云うのは、関東地方特有の云い方である、という説も在り、「根深汁」という云い方がかくまでも普及したのは、池波正太郎作の連作小説『剣客商売』のお蔭である、との説も在る、との事である。
 私の出生地・秋田県が、奈良市にお住いの上田秋霜さんの曰く「みちのく」の範疇に入るか否かは存じませんが、私が「根深汁」という言葉を知り得たのは『剣客商売』を読む事に拠ってであり、東北地方出身の大多数の方々に於いても、私と同じように、「根深汁」という言葉は、池波正太郎作の『剣客商売』とセットになっているものと、私には推定される。
 以上、いろいろと並べ立てましたが、私・鳥羽散歩にとっては、本句は朝日俳壇の入選句としては、多々、不満の感じられる作品である。
      羽後の国男鹿半島のざっぱ汁  鳥羽散歩
      秋田県鹿角の里のだまこ鍋
      秋田県大館地方のきりたんぽ
      山内の杜氏の嬶の燻りガッコ
      きりたんぽ・稲庭饂飩・比内鶏
      三陸の浜のかあちゃんどんこ汁
      花巻は民話の里でわんこ蕎麦
      お祝ひに欠かせぬ料理まめぶ汁
      わんこ蕎麦・盛岡冷麺・いちご汁
      山形は庄内地方の芋煮会
      柏戸の大好きだつた納豆汁
      米沢の鯉の旨煮は高蛋白
      旧盆に欠かさず食べた棒鱈煮
      いとこ煮と芋つこぼた餅鶴岡市
      大間ではマグロ料理に堪能し
      八戸の煎餅汁はたまらない
      大湊海軍コロッケ恐山
      五所川原十三湖のシジミ汁
      十和田湖の姫鱒料理の淡白さ
      みちのくを民話の里と蔑むな
      色々と並べ立てたり鳥羽散歩

今週の「朝日俳壇」より(2020/2/23掲載) 40首40句一挙大公開!乞う一読讃嘆!   制服の生徒真顔で登校す大学入試の終へたる今朝を!   春風に馬糞の匂ひ漂ひて大國魂神社前を往く馬運車!   「さはるな」と書ける四文字のはかなくて来春あるを期せし我が父!

     高山れおな選

〇   枝先に春日の精の止りをり  (横浜市)込山正一

 「込山さん。<春日の精>は.芽吹き?または小鳥か蝶?あえて甘く曖昧に言ったところが良い」とは、選者・高山れおな氏の簡にして要を得た寸評である。
  なお、私・鳥羽散歩は<小鳥>説を採りたい!
     枝先に吾の刺したる肉片を啄みて鳴く瑠璃鶲かな  鳥羽散歩


〇   旋回は別れの言葉鶴引けり  (鹿児島市)青野迦葉

 「青野さん。特攻隊も連想されるがここは素直に鶴引く景と読んだ」との、高山れおな氏の寸評であるが、<鶴引く>景に取材しながら特攻隊をも連想せしめるのは、鹿児島市にお住いの青野迦葉さんならではの芸である。
     中将・大西滝治郎の自決せるは終戦時とは遅かりき  鳥羽散歩


〇   兜太忌や秩父の猪もみな修す  (松本市)小林幸平

 「小林さん。猪が雲集してまろび泣く、見立て涅槃図をイメージ」との、高山れおな氏の寸評に一言半句も付け加える必要無し。
     猪も熊も狸も俳人も観音経よむ金子兜太忌  鳥羽散歩


〇   春風を過り馬運車到着す  (東京都)竹内宗一郎

 「馬運車」とは、「広義ではウマを輸送する自動車のこと。狭義では競走馬、馬術競技馬を輸送するための自動車のことであり、一般的には馬バスの愛称で知られている」とのこと。
 東京都にお住いの竹内宗一郎さんは、東京都下・府中市の<JRA東京競馬場>に到着した「馬運車」をたまたま目にして、掲句を詠まれたのでありましょう。
     春風に馬糞の匂ひ漂ひて大國魂神社前を往く馬運車  鳥羽散歩


〇   翅たかく合はせ凍蝶葉のごとし  (東京都)望月喜久代

 「翅たかく合はせ」閉じたままで、陽の射さない樹下に泊まっている「凍蝶」の有様は、落ち葉の如く見えるのである。
     二枚羽を高く合はせ閉じたるや死を前にした凍蝶の矜持!  鳥羽散歩


〇   さはるなと書きし父の字種袋  (河内長野市)西森正治

 「種袋」に「さはるな」のひらがな四字を「書きし」は、今は亡き「父」の来春を期しての所業でありましょう!
     「さはるな」と書ける四文字のはかなくて来春あるを期せし我が父!  鳥羽散歩


〇   草払ひお狐洗ひ一の午  (所沢市)堀正幸

 掲句の作者・堀正幸さんは埼玉県所沢市にお住いの方。
 彼の地には、「一の午」に稲荷神社の参道の雑草を払い、「お狐」様を洗い清める習俗が残存しているのでありましょうか?
     草払いお狐様を清めたら我が身浄める吟醸・剣菱  鳥羽散歩


〇   二ン月や夕月の樹に触れて帰る  (船橋市)斉木直哉

 「夕月の樹」とは、<夕月を背景にして映える樹>。
 この「夕月の樹に触れて」帰宅する斉木直哉さんの胸中には、「やっとここまで漕ぎ着けた、もう間もなく花の咲く春が来るのだ」という気持ちと共に、「春まだ浅くて、これからも寒さが続くのだ」という気持ちが同居しているのでありましょう。
      夕月の雲に隠れて春浅し犬の糞など踏まずに帰れ  鳥羽散歩
 埼玉県だとか千葉県だとかと聞けば、「ああ、犬の糞便が滅多矢鱈に落ちてる田舎町だね!」などと思ってしまうのが、<秋田生れ、横浜育ち>の私・鳥羽散歩の性癖なのである。
     鬼門だね!千葉や埼玉、鬼門だね!住みたくないし行きたくもない!  鳥羽散歩


〇   気嵐に浮き見え隠れ浅蜊舟  (仙台市)鎌田一海

 ネット上の「気仙沼さ来てけらいん」と云うホームページは、「気仙沼の魅力をいっぺぇ詰め込んだ観光情報サイト」とか?
 その「気仙沼の魅力をいっぺぇ詰め込んだ観光情報サイト」に、次のような「気嵐」に関わる記事が掲載されているので、掲句の鑑賞に資するために、以下に転載させていただきます。
       気仙沼に冬を告げる幻想的な景色。「気嵐」を知っていますか?
 良く晴れた気仙沼湾。
 11月下旬。日の出時刻は6時20分過ぎ。
 星たちが主役の座を太陽に譲り、少しずつ明るくなる東の空。
 陽が昇る。
 太陽の光を浴びた海面から立ち上がる霧。
 徐々に濃くなった霧は次第にその姿を変え、雲海のよう。
 風に流され、霧たちは湾の奥へ、奥へと。
 陸地の寒気が海や川に移動し、海水面の水蒸気を冷やして霧に変える。
 海と陸の極端な温度差が「気嵐(けあらし)」を生むのだ。
 「蒸気霧」とも呼ばれ、よく晴れて風が弱くないと発生しない。
 寒さの厳しい冬を迎えるこの時期、冬を運ぶ風物詩として、気仙沼湾に現れる気嵐。
 入り江が深く、波が穏やかな気仙沼湾の地形は気嵐の発生に好都合だ。
 時間と寒さを忘れて魅入ってしまうほど幻想的なこの景色は、条件が良くないと見られない。
 雲が少なく、太陽がはっきり出る晴れの日。
 湾内の海水温と大気の気温差が大きいこと。
 強く風が吹かず、おだやかなこと。
 初冬の風物詩とも言える気嵐を、迫力たっぷりの漁船と一緒に写真に収められるのも気仙沼港ならでは。
 この景色を写真に収めようと通う熱心なファンも多い。
 初冬の気仙沼を訪れる際は少しだけ早起きをして、朝の光を全身に浴びながら幻想的な景色を堪能してはいかがだろうか。
 少し肌寒いピリリとした冬の朝の空気を胸いっぱいに吸い込んで、きっと一日のスタートが切れるはず。
     気仙沼はまだ冬だがら気嵐を見に気仙沼に来てけらいん  鳥羽散歩
 

〇   制服の生徒真顔や針供養  (玉野市)加門美昭

 「針供養」に臨んで「制服の生徒」の「真顔」だとか!
 令和二年の昨今、制服を着ていて真顔の生徒などは、滅多矢鱈に目にする事も出来ません!
 掲句の作者・加門美昭さんが女子高校の先生でありましたならば、自らの勤務校と在籍生徒を誇りにして、女生徒の教育と生活指導に専念して下さい。
 自慢して云う訳ではありませんが、我が家の近所の百里丘高校の女生徒なんかは、一人残らず唇を真っ赤に染めてて、バスの座席に踏ん反り返ってて、私たち高齢者に座席を譲ろうともしないんですよ!
     制服の生徒真顔で登校す大学入試の終へたる今朝を!  鳥羽散歩

今週の「朝日歌壇」より(2020/2/23掲載) 40首40句一挙大公開!乞う一読讃嘆!   女性の顔は履歴書にして自ずから己が半生を語る!   マスク掛け金融機関に入つても怪しまれない昨今である!

     佐佐木幸綱選

〇  薬局のマスクの棚の空白に薄き不安が積もりてゆけり  (東京都)水谷実穂

 本作の趣旨は「薬局のマスクの棚からマスクが消えて空間が出来たが、その空間にいつの間にか薄っすらと埃が堆積するようになってしまったのであるが、私は本来はマスクが置かれてあるべきスペースに堆積している薄っすらとした埃に目にするに付けても、自らの人生に薄っすらとした不安が堆積して行くような思いに囚われるのだ」といったところでありましょう。
 ところで、私たち日本人の多くは、例えマスクが必要になったとしても薬局へ行ってマスクを買い求める必要はありません。
 何故ならば、マスクなる衛生用品の販売は、「薬局」だけが独占的に行っているのでは無くて、薬局に加えて、所謂<ドラッグストアー>でも販売されている、否、薬局やドラッグストアーに限らず、例え、例えコンビニだろうと、よろず屋だろうと、八百屋だろうと、、魚屋だろうと、パチンコ屋だろうと、汲み取り式便所に堆積した糞便の処理を行う業者だろうと、その気になれば、いくらでも仕入れる事が出来てるのであり、当然の事ながら、仕入れたマスクは販売する事が出来るのでありますから!
 インターネット辞書『ウイキペディア』の記するところに拠りますと、「薬局とは、薬剤師が調剤を行い販売または授与をする施設。調剤のみではなく、既製の医薬品、医療機器や一般雑貨などの販売も行っている場合もある。一般に接客する場とは別に調剤室があり、多くの国では調剤室について法規制が加えられている。薬剤師は基本的にファーマシューティカルケアの理念に従い業務を行う。営業時間内には薬剤師が常駐していることが求められ、また薬局の経営者が薬剤師であることを求める国も多い」とか!
 従って、私は、この際、少しばかり悪戯心を発揮して、本作の作者・水谷実穂さんに「マスクが欲しかったら、何も薬局なんかに行く必要はありませんよ!ご近所の<FitCareDEPOT>だろうと、<マツモトキヨシ.>だろうと、<ウエルシァ>だろうと、<ツルハ>だろうと、ドラッグストアーに行けば、選り取り緑でいくらでも安く買えますよ!」などと云いたい場面ではありますが、ところが、その「マスク」とやらは、ここ数日の間に、日本中の店舗から示し合わせたようにして、一斉に消え去ってしまったのである。
 これは、我が国の生産機構に問題があっての事なのでありましょう?
 それとも、流通機構に問題があっての事なのでありましょうか?
 それとも、 自公連立政権の無為無策が問題なのでありましょうか?
 それとも、それとも、私たち日本国民のモラルが問われる場面なのでありましょうか?
     マスク掛け金融機関に入つても怪しまれない昨今である!  鳥羽散歩

 
〇  やつとひとつ残つてゐたと夫は見す「小さめマスク」それもピンクの  (埼玉県)小林淳子

 それはそれは、宜しゅうございましたね!
 例え「小さめ」のでも、例え「ピンクの」でも、一枚でも買えれば、運が宜しいのですよ!
 埼玉県の郡部にお住いの小林淳子さんの令和二年は憑いてますから、この際は、宝籤でもお求めになったら如何ですか!
      小さめは大口叩きの貴女には相応しからぬマスクなのかも?  鳥羽散歩


〇  なじむよう染まらぬようになかまらを横目でみてる絵画教室  (横浜市)馬瀬強司

 「絵画教室」に限らず、如何なる場面に於いても、「なじむよう染まらぬようにまかまら」に対するのが、長続きさせる秘訣なのかも知れませんね!
 でも「横目でみてる」のは、どうかしら?
     励むようさぼらぬようにするべきだ!マスクするのも忘れぬように!  鳥羽散歩


〇  嫁がせた娘見る目で庭梅の花を確かめ家主帰りぬ  (鎌倉市)小椋昭夫

 件の「家主」殿は、六月下旬の梅の実の捥ぎ時になったら、逸早く、籠を手にして小椋昭夫さん宅のお庭に出没するのでありましょう。
      嫁がせた娘見る目で梅を視て熟す前から捥ぐのか家主!  鳥羽散歩

 
〇  暖かな陽を背に三艇並びゆく櫂の揃いて瀬田川は初春  (大津市)中尾博子

 「初春」と漢字書きして「はる」と読ませるのは、いかにも近江商人の末裔に相応しい姑息な遣り方ではありませんか!

        『琵琶湖哀歌』    
              作詞・奥野椰子夫/作曲・菊池博/歌唱・東海林太郎並びに小笠原美都子
     一 遠くかすむは彦根城 波に暮れゆく竹生島
        三井の晩鐘 音絶えて 何すすり泣く 浜千鳥
     二 瀬田の唐橋 漕ぎぬけて 夕日の湖に
        出で行きし 雄々しき姿よ いまいずこ あゝ青春の 唄のこえ
     三 比良の白雪 溶けるとも 風まだ寒き 滋賀の浦
        オール揃えて さらばぞと しぶきに消えし 若人よ
     四 君は海の子 かねてより 覚悟は胸の 浪まくら
        小松ヶ原の 紅椿 御霊を護れ 湖の上
     君よ知れ!冬の琵琶湖の波枕!十一名の尊き命!  鳥羽散歩


〇  寒なのに雪なき魚沼薄陽さす牧之通りをスニーカーで行く  (新潟市)杵渕道子

 俄か覚えの「牧之通りをスニーカーで行く」とは猪口才な!
 恐れ多くも、私・鳥羽散歩は、鈴木牧之の著作ならば、断簡零墨に至るまで読解済の『北越雪譜』通なんだぞ!
      寒だから雪が降るとの考えは浅墓なるぞ杵渕道子!  鳥羽散歩


〇  退勤のタッチパネルが反応せず夕暮れの指はしろく乾いて  (町田市)村田知子

 「夕暮れの指」が「しろく乾い」たのは、「退勤のタッチパネルが反応」しなかったが故に慌てふためいたからなのでありましょう。
     退勤のタッチパネルを押さないでサービス残業遣れとの謎か?  鳥羽散歩


〇  酒のめぬ妻が脱皮を繰り返し我より強い蟒蛇になる  (三郷市)木村義煕

 我が国で最も大型の蛇は<青大将>である。
 でも、彼ら・青大将は幾ら繰り返して脱皮しても「蟒蛇」なんかになれませんよ!
 それにも関わらず、埼玉県三郷市にお住いの木村義煕さんのご妻女が「脱皮を繰り返し我より強い蟒蛇」になったのは、元々からその素質を備えていらしたからなのでありましょう。
 そして、その素質が露見して「蟒蛇」になるに至るまでには、ご亭主の並々ならぬご協力が在ったのでありましょう。
 それなのにも関わらず、今になって「酒のめぬ妻が脱皮を繰り返し我より強い蟒蛇になる」なんて、恥かしい歌を詠んで、人様の前で愚痴を零すなんて、凡そ、酒飲みの風上には置けません!
     夫は虎!妻は蟒蛇なればこそ夜ごとの日ごとの鯨淫ならむ!  鳥羽散歩


〇  中三の三者面談我が娘「気落ちするな」と母の肩たたく  (酒田市)高橋貴子

 気丈な中三娘であります事よ!
 内申の関係で県立の上位高校は無理でも、この気丈さを持ってすれば私立の進学校は必ず合格するかと思われますから、何卒、お気持ちをお安め下さい。
     山形東は無理だけど、日大付属山形ならば楽ちん合格!  鳥羽散歩 


〇  真夜中の居間に墨の香満つるとき母と妻ではない顔になる  (横浜市)大曾根藤子

 横浜市にお住いの掲歌の作者・大曾根藤子さんは幼年時より結婚して妻となり、更には母となった現在に至るまで書道を専らにされて居られる。
 しかしながら、結婚した後は、少女時代や学生時代とは異なり、真昼間から、たった一間切りしか無いお座敷に条幅を広げて居られる訳はありませんから、書道家を自負する自らの時間は「真夜中」に限定されるのでありましょう。
 書道家・大曾根藤子に与えられた時間は、ご家族達が寝静まった後の数時間に限られているので、条幅を前にし、毛筆を手にした、この数時間の彼女は、「母」でも無く「妻」でも無い顔をして「墨の香の満つる」お座敷にて、書道に勤しむのでありましょう。
     女性の顔は履歴書にして自ずから己が半生を語る!  鳥羽散歩

今週の「朝日歌壇」より(2020/2/23掲載) 40首40句一挙大公開!乞う一読讃嘆!  この際は死なば諸共道連れにせむと思ひてマスクを掛けぬ!   金髪にさようならして彼氏ともさようならして梨子就活中!

     高野公彦選

〇  疑へばすべて罹患者バスの中マスクがマスクを監視してゐる  (下関市)牛島正行

 まさしく「マスクがマスクを監視してゐる」昨日の川崎市営バスの車内でありました。
     疑へばすべて犯人終バスの乗客さながら面相わろし  鳥羽散歩


〇  マスク、マスク、マスク続きてマスクせぬ夫婦に出会い安堵する道  (東京都)神山明夫

 「彼ら夫婦は如何なる理由が在ってマスクを掛けていないのであろう?」などと、私・鳥羽散歩なら、「マスクせぬ夫婦」に疑いの眼差しを注いでしまいそうになったりしてしまいそうです!
     この際は死なば諸とも道連れにせむと思ひてマスクを掛けぬ  鳥羽散歩


〇  トランプァベ、シーチンピンとプーチンが率いる世界の未来は何色  (長野県)深沢茂子

 「アベ氏がトランプ氏に取り込まれていることを『トランプァベ』と表記した諧謔が面白い」とは、高野公彦氏の選評である。
 即ち、「トランプァベ」という云い方の中には、「トランプのアベ=トランプに取り込まれているアベ」という意味が託されているのである。
 とすると、本作は「米国のトランプ大統領と彼に取り込まれている我が国の安倍総理と、中国共産党総書記・習近平氏とロシア大統領・プーチン氏との四者が率いる、この世界の未来は何色」といった意になりましょう。
     格落ちの安倍氏も入れて雀卓を囲む夕べの色は漆黒  鳥羽散歩


〇  快適にお湯でお皿を洗ひをりさうかこの手が地球を壊す  (枚方市)東大路エリカ

 日本人の全てが「さうかこの手が地球を壊す」といった自覚を持って暮らしに臨めば、少なくとも我が国がオゾン層破壊の犯人扱いをされなくなるに違いありません!
      蒸し暑い、クーラー入れろ!その一言がオゾン層を破壊するのだ!  鳥羽散歩


〇  貴景勝を寄り切り顔をくしやくしやにして優勝す徳勝龍は  (本庄市)福島光良

 大阪春場所の番付が発表されたものの、その春場所の開催を見合わせるとか観客無しで行うとか、などとの論争喧しき今日、徳勝龍の幕尻り優勝に取材した短歌は、あまりにも色褪せ、説得力を失った存在ではありませんか!
     貴景勝負けて泣いたか初場所は!観客無しの春場所で勝て!  鳥羽散歩


〇  黒髪の私を見つけ見つめ合う就活中の駅の鏡に  (富山市)松田梨子

 松田短歌姉妹の短歌は、私・鳥羽散歩にとっては、もはや賞味期限切れである!
 それなのに、何を今更、染髪してた.頃の自分を懐かしむ歌なんか詠んだりして!
     金髪にさようならして彼氏ともさようならして梨子就活中!  鳥羽散歩


〇  かわりゆく街にカーナビ追いつけず車は今日も空白地ゆく  (中津市)荒谷みほ

 かつては、時代の最先端を行く存在の「カーナビ」であったのに、令和の今となっては、そのカーナビが「かわりゆく街」に「追いつけず」に「車は今日も空白地」進み行くのである!
 この一首、何と驚いた事に、大分県中津市の現状に取材した歌なんですよ!
 大分県と言ったら、群馬・栃木・埼玉の三県と並んで、我が国で最もダサイ県ではありませんか!
 しかも、その中の中津市と云ったら、中津城とか、福沢諭吉の旧居だとかが残っている江戸時代さながらの街ではありませんか!
 そのダサイ中のダサイ中津市の、変わり行く街並みにカーナビが追い付けないとは!
     型が古い!君の車のカーナビは!更新せよ君の頭もカーナビも!  鳥羽散歩


〇  石濡れて優しくなるを見てをりぬ石には石の表情がある  (高知県)藤田兆大

 本作の作者の藤田兆大さんって、高知県の郡部にお住いの方だから、わりかし暇人なんですね!
 だって、「石濡れて優しくなるを見てをりぬ」なんて仰ってるんですから!
 この一首に接して、私・鳥羽散歩は、「君が代は、千代に八千代に、さざれ石の、巌となりて、苔の生すまで」と云う『君が代』の歌詞を思い出しました!
     石濡れて穴を穿ちて幾世経て表千家の蹲となる  鳥羽散歩


〇  見罷りし夫の表札かけておく生きてるさまに咳一つ足し  (山口県)宮田ノブ

 「見罷りし夫の表札」を掛けて置くのは、一に泥坊除け、二に押し売り除けなのでありましょうが、「生きてるさまに咳一つ」足すのは、その駄目押しなのかも知れません。
     今は亡き亭主の靴を玄関に揃へて置くのも何かの呪ひ  鳥羽散歩
     

〇  透きとおるセンター試験の朝の空名前を付けたくなるような青  (富山市)松田わこ

 センター試験の初日の朝に限って関東地方にも雪が降るのは、如何なる理由が在っての事なのでありましょうか!
 私・鳥羽散歩は、センター試験の前身の大学入試共通一次試験の第一回試験の試験監督を遣った事がありますが、その時、以来、センター試験の初日ともなると、予め定められたようにして降雪を見るのは不思議でなりません!
     透き通る気持ちで受けた試験だが回答用紙は透明状態  鳥羽散歩

今週の「朝日歌壇」より(2020/2/23掲載) 40首40句一挙大公開!乞う一読讃嘆!  この際は何でも洗つてしまはむとアンパンマンも洗ふ暖冬!  もしかしてスパイを遣つて居たのかも?海量と呼ばれし頃の加津さん!

     馬場あき子選

〇  迎えに来る祖国があるということが羨しかりけむあまた難民  (水戸市)中原千絵子

 「コロナウイルスの広がりから自国民を守ろうとする迎えの飛行機などから発想して難民の身の上を思う.痛切さ」とは、馬場あき子氏の選評である。
      お迎えのママさんたちが待つ前で園児を叱る保育士も居る  鳥羽散歩


〇  二・二六の救護看護婦たりし母を詠まねば母は永遠に消ゆ  (茨木市)瀬川幸子

 「二・二六事件は、1936年(昭和11年)2月26日から2月29日にかけて、皇道派の影響を受けた陸軍青年将校らが1,483名の下士官兵を率いて起こした日本のクーデター未遂事件である」が、大阪府茨木市にお住いの瀬川幸子さんのお母様は、この事件に際して「救護看護婦たりし.」過去をお持ちの功労者であられますとか!
 件のお母様がその当時、二十歳であったとしても、八十四年経った現在の御年齢は百四歳である。
 その百四歳のお母様を題材としてお詠みになられた作品が、今回、朝日歌壇の馬場あき子選の次席入選作として選ばれ、こうして朝日新聞紙上に掲載された訳ですから、作者の瀬川幸子さん並びに幸子さんのお母様のお喜びは如何ばかりでありましょうか?.
     人間は不滅の生を持たざれば母の命を愛しむ娘  鳥羽散歩


〇  酒好きのわれ海量と呼ばれたり中国滞在の日々は楽しき  (鹿嶋市)加津牟根夫

 「海量」は「ハイリャン」と読み、我が国で所謂「酒豪」の意である。
 作中の「中国滞在の日々」とは、恐らくは、「作者が兵士とか軍属とか、或いは満鉄社員とかの役割りを帯びて中国に滞在していた戦時下の日々」を指して云うのでありましょう。
 だとしたら、日中関係が月日を重ねる毎に悪化して行く今日に於いては、「酒好きのわれ海量と呼ばれたり中国滞在の日々は楽しき」などと詠むのは厳に謹むべき事かと、私には思われますが、その点に就いての本ブログの読者の方々のご意見は如何で.ありましょうか?
     もしかしてスパイをやって居たのかも?海量と呼ばれし頃の加津さん!  鳥羽散歩


〇  認知症になるなと言われただ苦笑なりたくないが誰にもわからぬ  (飯田市)草田礼子

 「なりたくないが誰にもわからぬ」と云う、長野県飯田市にお住いの草田礼子さんのご意見に、私・鳥羽散歩も、全く以て同感です!
     呆け病になど罹りたくなかつたら食べろ.ぢやがすかカマンベール🧀!  鳥羽散歩


〇  早世の部下の通夜より帰り来し夫は静かに杯重ねをり  (さいたま市)齋藤紀子

 是も一種の<逆縁>と云うべきでありましょう。
 有能な部下に.先立たれての.夫の心境の複雑さを思うと、さいたま市にお住いの本歌の作者・斉藤紀子さんも、先刻から「杯」を「重ね」ている夫を叱る気がしません!
     早世の部下の通夜より帰らざる夫いづこを彷徨ひ居らむ  鳥羽散歩


〇  廃校となりて久しき校庭を耕している夜のイノシシ  (西海市)原田覚

 「廃校となりて久しき校庭を耕している」のは「夜のイノシシ」どもでありましょうが、「昼のイノシシ」どもは、西海市の観光スポット<長崎バイオパーク>の動物園の檻の中に整然として納まっているのでありましょうか?
     西海の夜の帝王イノシシが昼は居眠り檻の中にて  鳥羽散歩


〇  跡形も無く駆除されし蜂の巣に働き蜂の群れ戻り来ぬ  (松山市)吉岡健児

 このところ数日の晴天続きで、件の「働き蜂」どもは古巣に戻って来たのでありましょう。
     戻らぬは女王蜂のみ古巣にて働き蜂が活躍開始!  鳥羽散歩


〇  大暖冬アンパンマンのぬいぐるみベランダに干され空を見ており  (仙台市)小室寿子

 「アンパンマン」は、体型からして常に上向き志向なのであり、私・鳥羽散歩は、俯き加減で歩いているアンパンマンを目にした事が絶えてありません。
     この際は何でも洗つてしまはむとアンパンマンも洗ふ暖冬!  鳥羽散歩


〇  徳勝龍三十三歳これからと聞けば米研ぐこの手に力が  (横浜市)杉本恭子

 大阪春場所の新番付が既に発表されている今日に於いての徳勝龍ネタは新鮮味に欠けましょう。
     前頭西二枚目に躍進し!今場所期待の徳勝龍関!  鳥羽散歩

今週の「朝日歌壇」より(2020/2/23掲載) 40首40句一挙大公開!乞う一読讃嘆!   姓ならぬ名として背負ふ「ナカムラ」の重さや如何!件の嬰児!   訪ふ者も居ない三鷹の禅林寺!七月九日・森鷗外忌! 

     永田和弘選

〇  訪う人もこんなに老いて尹東柱碑にたちのぼる宇治の川霧  (大和郡山市)四方護

 2019年、宇治川上流の白虹橋右岸に、抵抗の詩人・尹東柱(ユン・ドンジュ)の「記憶と和解の碑」の建立された。
 だが、今の若者たちにとっては、尹東柱(ユン・ドンジュ)と云ってもどんな存在なのか、「記憶と和解の碑」にどんな意味があるのかも解るはずは無く、たまに訪れる者が居たとしても、それは行く末短い高齢者ばかりなので、これからの日韓関係が余計に心配になる、と、大和郡山市にお住いの四方護さんは危惧されて居られるのでありましょう。
 <紫式部作『源氏物語』の舞台・宇治>と<抵抗の詩人・尹東柱碑>との取り合わせは、一見すると奇妙な取り合わせではあるが、<古今東西、類例を見ない新鮮な取り合わせ>と云うべきでありましょう。
 本歌は、俳句で謂うところの<二物衝撃>で以て構成された一首であるが、「源氏物語の薄幸の美女・浮舟」と、「抵抗の詩人・尹東柱」との<二物衝撃>からはどんなに巨大なエネルギーが発散されるのでありましょうか?
   尹東柱詩集「空と風と星と詩」から  『序詩』
       死ぬ日まで空を仰ぎ
       一点の恥辱なきことを、
       葉あいにそよぐ風にも
       わたしは心痛んだ。
       星をうたう心で
       生きとし生けるものをいとおしまねば
       そしてわたしに与えられた道を
       歩みゆかねば。
       今宵も星が風に吹き晒らされる。(伊吹郷訳)

◯ユン・ドンジュ略年表(立教大チャペルで行われた追悼会で配布された小冊子より抜粋し加筆)
 1910年 日本の韓国「併合」。朝鮮半島の植民地化。
 1917年(便宜上付記 大正6年) 12月30日 中国東北部(満州)間島省和龍県明東村に長男として生まれる。(注:現在の中国延辺朝鮮族自治区)
 1925年(大正14年) 治安維持法制定(41年に改正され、重罰化)
 1931年 満州事変。関東軍による中国東北部(満州)の占領へ。
 1932年3月 傀儡国家満州国誕生。
 1935年(昭和10年)9月 平壌の崇実中学に編入学
 1936年3月 神社参拝拒否で崇実中が自主廃校となり故郷の中学に編入。
 1938年 ソウルの延禧専門学校(現・延世大学)に入学。いとこの宋夢奎(ソン・モンギュ)と寄宿舎に入る。
 1940年2月11日 朝鮮総督府の制令により「創氏改名」が施行される。創氏改名に抗議し投身自殺した人も出る。
 1941年 延禧専門学校卒業。手書きの朝鮮語による詩集「空と風と星と詩」を3部作り、恩師と親友に贈る。日本に渡る前に尹を「平沼」と創氏。平沼東柱を名乗った。いとこは宋村と創氏し、宋村夢奎と名乗る。
 1942年2月ごろに渡日。立教大学文学部英文科に選科生として入学。10月には同志社大学文化学科英文学専攻に選科生として編入。いとこの宋村は京大史学科選科に入学。
 1943年7月14日 治安維持法違反の嫌疑で逮捕される。いとこの宋村も逮捕。
 1944年 裁判の結果、2年の刑が確定し福岡刑務所に収攬される。
 1945年2月16日 福岡刑務所で獄死。3月6日に故郷に埋葬される。いとこの宋村は3月10日に獄死。
 1948年 韓国で詩集「空と風と星と詩」が刊行される。
 1984年 尹東柱全詩集「空と風と星と詩」(伊吹郷訳、記録社)が刊行される。
 1995年 没後50年 延世大学で50周年追悼会開催。同志社大に「序詩」の碑が建立される。韓国KBSとNHKが共同で「空と風と星と詩~尹東柱・日本統治下の青春と死」を制作し、放映する。
     訪ふ者も居ない三鷹の禅林寺!七月九日・森鷗外忌!  鳥羽散歩  


〇  同年の関取二人初場所のかたや優勝こなた引退  (山梨県)笠井彰

 徳勝龍の優勝と豪栄道の引退に取材した一首であるが、なにせ大阪春場所を前にしての今日では、<賞味期限切れの題材>と云うべきでありましょう。
     勢に豪栄道に稀勢の里!<花のイチロク組>の徳勝龍!  鳥羽散歩


〇  こののちは緒方貞子のいない日々乾いた月が山から登る  (福岡市)松本千恵乃

 本作も亦、時流便乗短歌の典型である!
 なにしろ、あまりにも大袈裟過ぎます!
     春場所は豪栄道の姿無し!ご当地力士は勢関だけ!  鳥羽散歩
     勢は歌手になっても人気出る.!比嘉真美子と結婚もした.!
     これからは萩野の居ない水泳界!瀬戸大也の金メダルは無し!


〇  ナカムラと名づけられたる嬰児は小さき拳に深い目をして  (鹿嶋市)大熊佳世子

 1993年に東京都昭島市のスナックを営む夫婦が生まれた男の子に「悪魔」と命名して市役所に届け出をしたが、結局受理されずに、マスコミの話題となりました。
 悪魔という名前は、一端は受理されたとの事でありましたが、いくら我が子でも、子供に「悪魔」と名付けることが社会通念上、問題があるとして、東京法務局が親権の濫用と判断したので、逆転不受理という扱いになったとの事でありました。 
 しかしながら、この両親は東京家庭裁判所・八王子支部に不服申し立てを行い、裁判の結果、勝ってしまうという結果に終わりましたが、裁判終結後、母親の意向もあって、件の「悪魔くん」は「亜駆」という名前で再申請し、受理されましたとの後日談も話題となりましたし、その後のこの夫妻子三名の間には、世間を騒がせる様々なる話題がありましたが、本稿は、それを採り上げることが目的ではありませんので、この件に就いてのこれ以上の詮索は.無用と思われます。
 ところで、本来は.苗字である「ナカムラ」を、名前として背負っていかなければならない「〇〇ナカムラ君」は、言わば<十字架を背負ってゴルゴダの丘を登るイエス・キリスト>のような存在なのかも知れません。
    姓ならぬ名として背負ふ「ナカムラ」の重さや如何!件の嬰児!  鳥羽散歩


〇  「募ってはいるが募集はしていない」意味を五十字以内で述べよ  (観音寺市)篠原俊則

 「つのつては/いるがぼしゆうは/.しいいない/いみをごじゆうじ/.いないでのべよ」と、二句目と四句目が.字余りと.言えば字余り句みたいてあり、しかも、下の二句に<句割れ・句跨り>の技法を用いた迷歌でありましょうか?
      募っても.募集もせぬがこんなにも変な短歌が.入選作とは.?  鳥羽散歩      


〇  春わらひ夏はしたたり秋よそほひ冬ねむる山に二十年暮らす  (霧島市)久野茂樹

 春は桜の花を咲かせ、夏には緑を滴らせ、秋には紅葉の錦に装い、冬は雪の布団に包まれて眠る山に二十年も暮らしていらっしゃいながら、今週も亦ご入選を果たされるとは、霧島市にお住いの久野茂樹さんはなかなかなる歌詠み巧者である。
     膝笑ひ鼻血滴り止まざるに霧島山に日帰り登山  鳥羽散歩


〇  櫛笥なるつげのをぐしも艶おびて母ありし日のはるかとなれり  (東京都)長谷川瞳

 作中の「櫛筍」とは、「櫛や化粧道具を入れておく箱」を指して云うのである。
 であるならば、本作は「櫛筍に入れて大事にしておいた、今は亡き母の形見の柘植の櫛もかなり艶を帯びて来た!と云う事は、母が.生きていた日は、今となっては.遙か遠い昔の事と成り果ててしまいました」とでも、読解するべきでありましょう。
     櫛筍なる珊瑚の櫛も罅割れむ!酷暑続きか今年の夏も!  鳥羽散歩


〇  寅さんが好きで良かった車椅子の父を連れ出し一緒に泣けて  (東京都)伊東澄子

 本作の.作者・.伊東澄子さんは、「車椅子」のお父様を「連れ出し」て、葛飾柴又の<帝釈天・題経寺>にお参りに出掛けられたのでありましょうか?
 出掛けられたとするならば、当然のことながら「寅さん記念館」をもご見学になられた筈ですし、また、髙木屋老舗にお立ち寄りになられて、寅さん所縁の草団子もお召し上がりになられた筈でありましょう。
 であるとするならば、父と娘とが手を取り合って「一緒に泣けて」来るのも、これ亦、当然の理と云うものでありましょう。
     寅さんが死んで二代目寅さんが現れないから僕がなろうか  鳥羽散歩
     笠智衆も渥美清も死んだが山田洋次は未だ健在!
     森川信は死に松村達雄は降板!下條正巳が三代目のおいちゃん


〇  ポンポンとお餅のカビを払い食む祖母はいつでも最強だった  (アメリカ)アダムス理恵

 「ポンポンとお餅のカビを払い食む」が故に、アメリカにお住いのアダムス理恵さんの御祖母様は「最強だった」とか?
 して、彼女の何が最強だったのでありましょうか?
     なんのその!コロナウイルスそこを退け!私の祖母は米国最強!  鳥羽散歩

今週の「朝日俳壇」より(2020/2/16掲載)  40首40句一挙大公開!乞う一読讃嘆!   まだ財布開いてくれぬさいたま市大谷口の叔母とても欲張り!  

     稲畑汀子選

〇   凍蝶の命か風か翅ふるへ  (大阪市)上西左大信

 「凍蝶」とは「 寒さのため凍てついたようになる蝶」のことであり、俳句では冬(晩冬)の季語である。
 本句の意は「蝶が一頭、寒さ最中のこの季節に凍りついたようになりながらも翅を震わせているが、これはこの蝶の命の震えなのか、それとも風の為す業なのか!」といったところでありましょうか。
 凍蝶の翅の震えを蝶自らの命の震えとして捉えながらも、否、この震えは風の為す業かも知れない、などと、様々に思い巡らす作者の心理状態の震えが描かれている佳句である。

     掃き寄せて凍蝶死んでをらざりし/稲畑汀子
     凍蝶の眼を怖ぢタイプライター打つ/横山房子
     凍蝶の全き翅をひらきもし/阿部みどり女
     凍蝶は枇杷の花よりひそかなる/田中冬二
     凍蝶を風の栞りてゆきしなる/片山由美子
     凍蝶のそのまま月の夜となりし/深見けん二
     凍蝶に待ち針ほどの顔ありき/みつはしちかこ
     凍蝶に触るる薄刃に触るるごと/小川斉東語
     凍蝶に日のかげ深くなりゆけり/柴田白葉女
     凍蝶に指ふるるまでちかづきぬ/橋本多佳子
     凍蝶に生きてゐたいか問うてみる/櫂未知子
     凍蝶の翅のうごめきにこころとむ/飯田蛇笏
     凍蝶の日ざせばほろほろ飛ぶ形/柴田白葉女
     凍蝶のあやふき小みちいそぎけり/小池文子
     原人の歯牙凍蝶となりにけり/百合山羽公
     凍蝶の翅ををさめて死ににけり/村上鬼城
     凍蝶のやがて石とも別れねば/堀井春一郎
     振りむけば凍蝶額を越えにけり/対馬康子
     凍蝶にすがりつかれし指のあり/仙田洋子
     凍蝶の胸透く翅をたたみけり/増田なづな
     大いなる凍蝶に威のありにけり/田中裕明
     凍蝶を踏むや命の飛散せり/鳥羽散歩
     凍蝶を踏めば佳きこと在らざりき/鳥羽散歩
     凍蝶の踏まれて廊を彩りつ/鳥羽散歩


〇   良きことはすぐに信じて初みくじ  (小樽市)遠藤嶺子

 「大吉」と出たのかな!
 でも、おみくじはいつもいつも大吉ばかりが出る訳ではありませんから、以下の記事を見よ!
 「どんな粗末なものでも、仕立下しの着物で町を歩いてゐて、時ならぬ雨に出逢ふ位、はかないばかり憂欝なものはない。いや、私の神経質は、ちよつと汗をかくのにも、ざらざらと砂埃を含んだ風に吹きつけられるのにも、あるひはまた乗物や他家の座席の不潔さにも、やり切れない嫌悪の情を起させるほどである。ある夏の日、私は浅草に近い貧民窟で、――そこで知合になつた男について、物語らうとするのがこの小説であるが、――狭つ苦しい裏町のトタン屋根の傾いた一軒で、半裸体の男が、どう見ても芸者の出の着物らしい華美で豪奢なものを縫つてゐるのを目撃してぞつとしたことがある。その座敷着の品質や柄模様を詳しく述べるだけ私に和服の知識がないのは残念だが、とにかく、裾を引いた艶やかな女の肢体や脂粉の香さへも一瞬に聯想される不思議な色気を持つた仕立物が、恐らく指先から流れる汗も褐色ではないかと考へられるやうな垢黒い男の手にかかり、べとべと光つてゐるその股や腕に無造作に置かれてゐた。私は、ある一種の皮肉な気持よりも、たまらない感じに襲はれて、視線を逸らしたものだ。自分の知らない間に、かうしてどれだけ他人の汗や垢のしみをつけられてゐるのか分らないのだから、自分だけが潔癖がつてゐても仕方なからうと思ふこともあるが、それでもやはり、着はじめた当座は、一切の汚れを避けたいと、誇張して云へば、小心にも戦々兢々としてゐる」とは、武田麟太郎作『大凶の籤』の冒頭部である。
      初夢に良きこと見たし宝船  鳥羽散歩
      大凶の出て引き直す初御籤


〇   春時雨貸してくれしは女傘  (今治市)横田青天子

 それと無く自らの艶福をひけらかすのは、今治市にお住いの横田青天子さんである。
     春時雨貸してくれない軒の下  鳥羽散歩
     女傘借りてとまどふ春時雨
     

〇   やはらかく蔓の伸びゆく春隣  (八代市)山下しげ人

 八代市にお住いの山下しげ人さんちでは、隣家との屋敷境に木通の生け垣を結い回しているのでありましょうか?
      生け垣の破れかぶれや春隣  鳥羽散歩
      生け垣の木通熟るるや秋隣


〇   春立ちぬ立ちぬと庭の木々に声  (千葉県横芝光町)藤田考成

 「庭の木々」が「春立ちぬ立ちぬ」と叫んでいるのでは無くて、本句の作者の藤田考成さん自らの気忙しさが原因でそのように聴こえたと思ったのでありましょう。
     春来れど千葉の横芝光町宮井さんちは音沙汰無しだ  鳥羽散歩
     

〇   初日あぶマッターホルン鋭角に  (大阪市)行者婉

 言われてみれば確かに富士山は鈍角であり、マッターホルンは鋭角である。
 でも、鈍角だとか鋭角だとかと区別すること無く、元旦が好天であれば、富士山もマッターホルンも初日を浴びるのである。
 「初日」と「マッターホルン」との取り合わせに新味あり!
     富士山やマッターホルンのみならず初日は遍く峰々に射す  鳥羽散歩


〇   川涸れて水の緩急ありにけり  (玉野市)勝村博

 「川涸れ」とは、「川に水が無くなる」いう事でありますから、「水の緩急」も何も無いはずである。
 大相撲の決まり手の一つに「踏み足」という負け技がありますが、本句は、玉野市の勝村博さんが勢い余って犯した「踏み足」的な一句でありましょう。
     川涸れてしまへば水も流れない!緩急無きは当然の事!  鳥羽散歩


〇   老犬より老人元気冬の朝  (芦屋市)高杉靖子

 「老犬より老人元気」とは、流石に芦屋市は違いますね!
 私が、今から十年前に寄寓していたさいたま市の場合は、それとは真逆の現象が冬の朝に展開されていました。
     飼ひ犬の綱に牽かれて老耄の足取り重きさいたまの冬  鳥羽散歩


〇   まだ心開いてくれぬ春の霜  (芦屋市)笹尾玲花

 私・鳥羽散歩は、一見するや否や、本句を今週の稲畑汀子選一番の傑作だと思いました。
 未だ融けない「春の霜」を眼前にして、本句の作者・笹尾玲花さんは、「(彼は私に)まだ心開いてくれぬ」と嘆いて居られるのでありましょう。
 斯くして、笹尾玲花さんは芦屋市にお住いの女性ならではのセンスの良さを、この一句を詠む事に拠って、満天下の俳句ファンの方々にご披露なさって居られるのでありましょう。
     まだ財布開いてくれぬさいたま市大谷口の叔母とても欲張り  鳥羽散歩


〇   空仰ぎ空仰ぎ春待ちにけり  (和歌山県上富田町)中松健

 「空仰ぎ空仰ぎ」と、和歌山県上富田町にお住いの中松健さんは、花咲くの訪れを待ち焦がれて居る自らの切ない心情を述べようとしているのでありましょう。
     そら扇げ!そら扇げ!扇がなければ役に立たない扇風機かも!  鳥羽散歩

   

   

永井荷風作『濹東綺譚』作中句

〇   そのあたり片づけて吊る蚊帳哉

〇   さらぬだに暑くるしきを木綿蚊帳

〇   家中は秋の西日や溝のふち

〇   わび住みや団扇も折れて秋暑し

〇   蚊帳の穴むすびむすびて九月哉

〇   屑籠の中からも出て鳴く蚊かな

〇   残る蚊をかぞへる壁や雨のしみ

〇   この蚊帳も酒とやならむ暮の秋

今週の「朝日俳壇」より(2020/2/16掲載) 40首40句一挙大公開!乞う一読讃嘆!  秒針の手繰り寄せてもゴールせず設楽悠太の三人目無し!  シスターがオール捌ける世の中で投句捌きの苦手な選者!  豆撒きやクルーズ船から逃げられず!

     大串章選

〇   初蝶来この世に迷ひたるやうに  (角田市)玉手聡子

 「初蝶をそのように感じたのは作者に迷いがあったから。所謂感情移入の句」とは、大串章氏の選評である。
 それはさて置いて、本句の作者・玉手聡子さんは宮城県角田市にお住まいであり、角田市は市制が布かれているとは言えど、阿武隈川に沿った人工三万人足らずの田舎町である。
 宮城県角田市の年間平均気温は< 11.4℃>でありますから、同地は気候寒冷なる東北の田舎町と申し上げても、必ずしも失礼な言い方ではありませんし、斯く申す、私・鳥羽散歩が住んでいる川崎市の年間平均気温が<15.7℃> でありますから、仮に私が何かの原因(例えば、勤務先の勢力争いに巻き込まれての左遷)で角田市民になって現地に住んだとしたら、角田市の冬の寒さには、とてもとても耐える事が出来ませんので、<泣いた赤鬼>よろしく皹を切らして大泣きに泣くに違いありません。
 「初蝶」とは「春になって初めて飛んで来る蝶」であり、俳句では春の季語とされているが、東北宮城県の角田市辺りでは二月の下旬から三月の上旬辺りが「初蝶来」の時期でありましょう。
 蝶の仲間でも、モンシロチョウやベニシジミは幼虫や蛹で冬を過ごし、春になって気温が高くなると羽化して飛んで来るのであるが、同じ蝶と言えども、ルリタテハ、テングチョウ、キタテハなどは、成虫のままで寒い冬を過ごして、季節が春になったと識るやいち早く私たちの身の周りに飛んで来て、私たち人間に春の訪れを知らせるのである。
 作中の「初蝶」は、成虫のままで冬越しをした蝶と思われ、彼・蝶は、ここ数日の暖か日和に騙されて、春が来たものと錯覚して飛び来たるものの、とてもとてもじゃない寒さに耐えきれずに、恰も成仏出来ずにこの世に再び彷徨い出たようにふらふらと玉手聡子さんの周りを飛んでいたのでありましょう。
 従って、「初蝶来この世に迷ひたるやうに」との作者の思いは、選者のいわゆる「作者に迷いがあったから」とは異なり、初蝶がふらふら状態になって辛うじて飛び回ってい
!る有様を活写しての事でありましょう。
 拠って、本句は選者の所謂「感情移入の句」にあらずして、斎藤茂吉の所謂「実相観入の句」でありましょう。
     初蝶来、蝶ふらふらと飛び舞へば選評少し認識浅し!  鳥羽散歩


〇   豆撒や逃げ出しさうな鬼瓦   (新潟市)齋藤達也

 「逃げ出しさうな鬼瓦」だって!
 いくら何でも、鬼瓦が逃げ出しそうにしたりはしないでしょう!
 それに奴らは、硬直状態で屋根に繋がれて居るんですから、そんなにも易々と逃げられはしませんよ!
     豆撒きを前に逃げ出す被告ゴーン  鳥羽散歩
     豆撒きや僕も逃げたや北欧に
     豆撒きや総理逃げ出す気配無し
     豆撒きやクルーズ船から逃げられず


〇   秒針の手繰り寄せたる春浅し  (松戸市)をがはまなぶ

 刻々と一秒を刻む秒針!
 その秒針に手繰り寄せられたかの如くに、春は近づきつつあるのであるが、如何せむ未だ春未だ浅し!
     秒針の手繰り寄せても春浅くコロナウイルスのみ飛んで来る  鳥羽散歩
     秒針の手繰り寄せてもゴールせず!設楽悠太の三人目無し!


〇   シスターのオール捌きや風光る  (柏市)藤嶋務

 シスターと漕艇とは凡そ無縁の存在なのでありますが、本句の作者・藤嶋務さんは、それを承知の上で、敢えて、この両者を結び付けて一句を成したのでありましょう。
 「風光る」時節ともなれば、KO義塾大学体育会漕艇部クルーは勿論のこと、早稲田大学漕艇部クルーや東京大学漕艇部クルーや京都大学漕艇部クルーに加えて、千葉県柏市の沼南キリスト教会のシスターまでがオール捌きも鮮やかに利根運河に繰り出すに違いありません。
 それはともかくとして、私・鳥羽散歩としては、本句を「シスターがオール捌いて何とする!」とでも改作したい思いではありますけれど!
     シスターがオール捌けるこの世にてグラブ捌きの下手な二塁手!  鳥羽散歩
     シスターがオール捌ける世の中で投句捌きの苦手な選者!


〇   廃村に取り残されし雪をんな  (春日部市)斉藤とし彦

 フェミニストの斉藤とし彦さんとしては、「廃村に取り残されし雪をんな」がいるかも知れないが、もしもいたとしたら私は凍え死んでも宜しいから、彼女に逢いに行きたい、などと思っているのでありましょう。
 だが大変残念なことに、現代社会の廃村には「雪をんな」はおろか雌狐だっていません。
 そもそも、農村や山村が廃村化する過程の第一歩は、村から適齢期女性が居なくなる点にあるのであり、したがって、既に廃村化している村には、女性と名の付く者はただの一人としている筈はありません!
 本句の如き類の俳句を称して、世の識者は<土俗俳句>と呼んで尊ぶのでありましょうが、私・鳥羽散歩には、そうした回顧趣味はありません。
     廃村に取り残されし古タイヤ  鳥羽散歩
     廃村に捥ぎ残されし柿幾つ
     廃村の黄一色や泡立ち草
     廃村の夜を走るやハクビシン
     廃屋に電波時計の秒刻む
 

〇   死線越え八十七歳目刺焼く  (新座市)丸山巌子

 米寿を前にしての死線越え!
 しかも、死線を越えて尚且つ生きる為に、あの塩辛いだけが取り柄の目刺を焼いて食さなければならないとは、<死ぬも無残!生きるも無残!>の老耄絵巻でありましょう。
     死線越え死線越えして焼く目刺  鳥羽散歩
     満州に死線越え来て彼岸花
     春真昼 肴澤とふ邑を過ぐ塩鯖を焼く煙に咽び


〇   寒鴉声まで黒く聞こえけり  (川西市)上村敏夫

 本句こそは、選者・大串章氏の所謂「感情移入の句」でありましょう。
     努力して黄色い鴉になりたいと願ひ半ばに茶色いカラス  鳥羽散歩
     声までも黒く聞こゆと言ひけるは上村さんの上から目線


〇   大冬木しづかに樹齢重ねゆく  (合志市)坂田美代子

 「しづかに」しかも<ありとあらゆる苦難に耐えながら>、件の「大冬木」は「樹齢」を「重ね」て来たのでありましょう。
。た 即ち、巨大樹の年輪の広狭は、当該年の寒暖の差異をそのまま実証しているのである。
     年輪の幅の狭さが明示する天保四年の夏の冷害  鳥羽散歩

     年輪の幅の広さが暗示する昭和九年の房総大飢饉


〇   古民家の囲炉裏を守るボナンティア  (立川市)笹間茂

 「古民家の囲炉裏を守るボナンティア」とは、よくぞ言ったり!よくぞ詠んだり!
 私の住んでいる川崎市には、<川崎市立日本民家園>という名称の市立博物館が在り、この施設には、江戸時代に建てられ古民家など二十五棟の文化財建造物が移築され、展示されているのであります。
 展示されている古民家の裡の数棟の囲炉裏端には、其処に座るに相応しい一対の男女の高齢者が、其処が自分たちの神から定められた指定席であると主張しているが如くに座って居て、私たち見学者がその古民家の軒を潜るや否や、逸早く私たち見学者に語り掛けて来て、件の古民家の来歴や特色などを解説して下さるのでありますが、その話し振りの滔滔たるや、恰も黒竜江の中流域のそれの如しといったところなのであります。
 彼ら、囲炉裏端の高齢者たちは、一定期間の講習を経た後に、件の展示施設の運営の補助者として採用された「ボランティア」の方々であり、彼ら・ボランティアさんたちのサービス精神の旺盛さには、流石の私・鳥羽散歩も負けてしまいそうなのであります。
 是に拠って解るが如く、今や、彼のボランティアの方々は、災害が在ると見るや、早速、手弁当で被災地に押し掛け、オリンピックやパラリンピックが開催されるとの情報に接するや、逸早く、開催本部にボランティア選抜要綱の郵送方を依頼するやの大わらわなのであります。
 ある筋から得たる情報に拠りますと、今春の石原マラソンには、所謂<市民ランナー>の出場が不可との事であり、その分だけ、ボランティア諸氏の活躍舞台が喪失した事になりましょうが、仮に、中国伝来のコロナウイルス騒動が長期に亘り、その結果として<オリンピックやパラリンピックの開催見合わせ>などと云う緊急事態が現出したならば、彼ら、ボランティア諸氏は、一体全体、何処に自らの活躍舞台を求めんとするのでありましょうか?
 我が日本国のボランティアを巡る事情がこうした状況である限りに於いては、政府の施策の一環として、彼ら・ボランティアの恒久的な活躍舞台を現出せしめるのが、自公連立政権に課せられた課題の最大なるものでありましょう。
     それ噴火!其れ大飢饉だ!活躍の舞台現出!飛び出せボランティア!  鳥羽散歩
     恰も徴兵制の如くなり!我が国のボランティアを巡る現状は!


〇   寒椿苦吟の老婆笑ひけり  (幸手市)藤井順子 

 自らを殊更に「苦吟の老婆」呼ばわりして、選者諸氏や私たち朝日歌壇の読者たちに媚を売るという卑屈なる手段を用いての、大串章選の末席入選なのでありましょうか?   
      寒椿 老婆の苦吟笑ふのみ  鳥羽散歩
      苦吟して老婆心を発揮してやうやく得たる末席の椅子!

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