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archive: 2020年10月

「塚本邦雄第二歌集『装飾樂句』」読む

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○  暗渠の渦に花揉まれをり識らざればつねに冷えびえと鮮しモスクワ○  五月祭の汗の青年 病むわれは火のごとき孤獨もちてへだたる○  愕然と干潟照りをり目つむりてまづしき惡をたくらみゐしが○  愚かしき夏 われよりも馬車馬が先に麥藁帽子かむりて○  長子偏愛されをり暑き庭園の地ふかく根の溶けゆくダリア○  わが飼へる犬が卑しき耳垂れて眠りをり誰からも愛さるるな  ○  さわがしき愛恋のすゑ老優がつひに飼...

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「塚本邦雄第一歌集 『水葬物語』」を読む

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○  革命歌作詞家に凭りかかられてすこしづつ液化してゆくピアノ○  地主らの凍死するころ壜詰の花キャベツが街にはこび去られき○  騎兵らがかつて目もくれずに過ぎた薔薇苑でその遺児ら密会○  海の泡、泡に映れるひるの月にやはらかき木のいかりをおろす○  眼を洗ひいくたびか洗ひ視る葦のもの想ふこともなき莖太き○  春きざすとて戰ひと戰ひの谷間に覚むる幼な雲雀か○  館いま華燭のうたげ 凍雪に雪やはらかくふり...

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「塚本邦雄第四歌集 『水銀傅説』」を読む

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○  燻製卵はるけき火事の香にみちて母がわれ生みたること恕す ○  橘に青銅の果はきざしつつ死後のくにの夏のはじめ ○  たましひは死にむかひつつカント・フラメンコと赤き海胆を愛せり ○  二月二人の底に深紅の井戸光りカンパーニュ・プルミエ街の断水 ○  処女らとわれら野にあそびてさむき晴天に烏賊焙れる呪ひ ○  雉子焙かれつつ昇天のはねひらく 神無き母に二まいのてのひら  ○  乳房その他に溺れてわれら...

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「塚本邦雄第五歌集『緑色研究』」を読む

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○  鼠滅ぼしわが家寺院のにほひする数日ののち鉄色の夏 ○  夏至のひかり胸にながれて青年のたとふれば錫のごとき独身 ○  風太郎おごそかに塩かつぎ去り蜩のその日ぐらしのこころ ○  アヴェ・マリア、人妻まりあ 八月の電柱人のにほひに灼けて ○  体育館まひる吊輪の二つの眼盲ひて絢爛たる不在あり ○  金砿貨車かたへ過ぎつつ 喫泉に口づくるわれはかりそめの死者 ○  揚雲雀そのかみ支那に耳斬りの刑ありて...

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「塚本邦雄第六歌集『感幻樂』」を読む

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○  褐色の猟銃あをき拳銃とあふ触れて夜の聖・銃器店  ○  睡りの中に壮年(さかり)すぎつつはつなつのひかりは豹のごとわれを噛む  ○  あまたなる愛の一つをえらびつつ青年の髪の底なる白髪  ○  黒硝子なす夜の天の天幕に網膜のあみみはれカナンよ  ○  豹 檜 冰室の冰 硝子工 すはだかを最高のよそほひとす   ○  歌満ちてうたはぬわれと藁の上に病める牡牛のやさしきおもさ  ○  ほほゑみに肖てはるか...

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「塚本邦雄第十一歌集『閑雅空間』」を読む

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○  壮年の今ははるけく詩歌てふ白妙の牡丹咲きかたぶけり○  豪雨来るはじめ百粒はるかなるわかもののかしはでのごとしも○  初蝶は現るる一瞬とほざかる言葉超ゆべきこころあらねど○  思ひ出でて父の怒りにむせぶ日もあらむ蓮田に花刈りつくす○  ニーチェにうときまままた真夏蕺草の花咲くかぎり咲かせおくべし○  女逐ひてうつつなかりし 六月に見ず八月に見たる紫陽花○  柘榴の膜にがしそれより若者のにがみはうす...

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今週の「朝日俳壇」より(2020/10/25掲載)

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     稲畑汀子選○   地に還る千の花びら萩起す  (神奈川県寒川町)石原美枝子 首席。 「花をつけた萩叢は風に倒れやすい。それを抱き起こすとき花に触れて地に零す。それを見事に描写した」とは、選者・稲畑氏の。掲句を誤解しての寸評である。 朝露夜露に濡れた萩叢は頭でっかちであるから風に倒れ易い事、及び、作者の石原美枝子さんがそれを抱き起こしたのは、選者・稲畑汀子さん仰せの如くでありますが、「それ...

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「石原吉郎歌集『北鎌倉』・同句集『石原吉郎句集』」を読む

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       『北鎌倉』○  今生の水面を垂りて相逢はず藤は他界を逆向きて立つ○  蹼の膜を啖ひてたじろがぬまなこの奥の狂気しも見よ○  わが佇つは双基立てる樹のごとき墓碑の剛毅の間とぞ知れ○  「我れ渇く」無花果の成るもと飢ゑたりし〈彼〉○  男の子しもロトのごとくにふり向きて塩の柱となることありや○  「この病ひ死には到らず」発念の道なす途の道の行く果て○  鎌倉は鎌倉ならじ鎌倉の北の剛毅のいたみと...

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今週の「朝日俳壇」より(2020/10/25掲載)  出逢つても黙して顔を下げるだけ!メガロポリスに暮らす侘しさ!  赤い羽 僕の背広に似合はない!そもそも僕は赤が嫌ひだ!  コロナ禍を怖れて窓を閉め切つた寝室での吾が夜長かな!

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     長谷川櫂選○   コロナ死者世界百万秋深む  (山梨県市川三郷町)笠井彰 三席。 「<秋深し>では終わらない。もっと深刻化するということ」とは、選者・長谷川氏の寸評。 昨夜、寝室の空気を入れ替えようとして窓を開けたら、隣りの家から二度も三度も咳をする音が聞えて来たので、これはいけないと思って、慌てて窓を閉めました。 隣家のご主人は、いつもなら、平日は朝早く革鞄を抱えて出勤して行き、土日に...

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今週の「朝日歌壇」より(2020/10/25掲載)  山峡の駅のホームで待つ合ひ間牡鹿入り来て牝鹿と交尾む!  鷹柱見むと思ひて来しかども鷹は見ずして海鵜見にけり!  石鎚に銀河が注ぐこの宵も君を恋ひをりテントの中で!  吾輩は跳び箱音痴の年寄りで開脚跳びの五段を跳べず!  姉ちゃんのアドバイスも空しくて後ろばっかり視ていたそうすけ!  被災地に首都の機能を移転して官僚どもを転住させよ!  政権が嫌ふからとて必ずしも学者であるとは言へません!  学童のふんどし借りて相撲取り葉書十枚せしめた島田氏!  金沢の男と同棲したりするなんて愚かなことしられんな!  春を告ぐる鶯さへも撃ち殺し焼鳥にして喰つてたもんだ!

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     馬場あき子選○  うたうたう小鳥の重さがひとさじの塩くらいだと知った日の空  (丸亀市)金倉かおる 首席。 「10グラムから15グラムくらいの体重の小鳥たちの切ないほどの命を塩の重さでうたったことが心に沁みる」とは、選者・馬場あき子氏の寸評である。 ところで、私・鳥羽散歩の体重は、日によって多少の違いがあるが、約六十㎏である。 六十㎏と言えば、昭和三十年代までお米の出荷に使われていた米俵一俵...

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