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詩歌句誌面

読解なくして論評あらず。

とととととととととと

とととととととと
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今週の「朝日歌壇」より(2021/2/21掲載)  

     高野公彦選

〇  赤貧とコロナの中へ出獄す失うものを持たぬ青空  (東京都)十亀弘史

 首席。
 「出獄しても待っているのは貧困生活とコロナ禍。しかし作品には生きる気力が凛々と満ちている」とは、選者・高野公彦氏の寸評である。
 迂闊にも、「茨城県ひたちなか市にお住いの十亀弘史」とまで記し、作者の住所欄に目線を遣ったところ「(東京都)十亀弘史」とあったので、朝日歌壇名物の十亀弘史さんか獄舎生活から解放されたことに気付きました。
 『ZENSHIN NEWS NETWORK』(2021.01.16付け)の報じるところに拠ると、「1月13日朝、迎賓館・横田爆取でっち上げ弾圧で4年7カ月の獄中闘争を貫徹した十亀弘史同志が、水戸刑務所から元気に出獄した。3日に出獄した板垣宏同志を始めとする出迎えの人々を前に、『完全黙秘・非転向で頑張りました。勝ったとはまだ言えないが、決して負けなかったと言える。労働者階級の力を示せたと思います』と語った」との事である。
 四年七カ月の牢獄生活から解き放たれたとは言え、本作の作者・十亀弘史さんの前に待っているのは、緊急事態宣言下の東京での暮らしと物見高い世間様の目線だけでありましょう。
 十亀弘史さんは、昭和十九年二月二十一日生まれですから、釈放前々日に喜寿の誕生日を迎えられたはずである。
 故郷の愛媛県東予市では、老齢のご両親がご子息の帰りを待ち焦がれて居られるに違いありません。
     勝ちもせず負けもせずとは言ふけれど寄る年波に勝つこと出来ず!
     「赤貧は洗ふが如し」と云ふけれど洗へど落ちぬ垢をあるんだ!
 

〇  朝の雪コロナ禍の今ありがとう 新聞受けのメッセージに泣く  (甲州市)麻生孝

 次席。
 「新聞の配達先の人から感謝され、感激する作者」とは、選者・高野公彦氏の寸評である。
 山梨県甲州市にお住いの本作の作者・麻生孝さんは朝日新聞を配達する方のご苦労を思い、コロナ禍の朝早く、路面に降り積もる深雪の除雪でもされたのでありましょうか?
     日頃からお世話になつてる人のため除雪作業に勤しむ暇人!
     暇人と言はれたつても構はない暇があるだけ少しは増しだ!


〇  天翔る鳥となるため白鳥は韋駄天走りに泥田を羽搏つ  (羽咋市)北野みや子

 三席。
 「空に浮かぶために必死で泥田を走る白鳥の健気な姿」とは、選者・高野公彦氏の寸評である。
 「白鳥」はその名に相応しからぬ体重であるが故に、一端「天翔」ようとする際には、「韋駄天走りに泥田を羽搏つ」など、並大抵の苦労ではない苦労をしなければならないのである。
     天翔ける鳥になるため格安の搭乗券を求むる吾は!
     大関の貴景勝の体重に劣る筈なき白鳥のそれ!


〇  風花とふ言葉教へし師のありてふるさとしなの麻績小学校  (土浦市)佐藤由美子

 四席。
 「風花・師・ふるさと・しなの」などと、一語だけで詩になるような美しく懐かしい言葉から構成されている一首であるが、それらの中でも取り分けて美しく懐かしいのは、何と言っても「麻績小学校」という校名でありましょう。
 ところで、「麻績村は、長野県東筑摩郡の村である。長野県の中信地区、北国西街道沿いに位置し、麻績宿が設置されていた。村内には聖山(ひじりやま)があり、越後の高僧である聖がこの山を修行山としたことが名前の由来であり、その後も幾つかの寺院が建立された。村内に在る学校は、麻績村立麻績小学校、及び麻績村立筑北中学校の二校だけである」との事、村立の二校を卒業された後、幸・不幸、様々なる人生経験を経られて、原住地・茨城県土浦市にお住いになられる迄の作者の半生が偲ばれる一首である!
     聖山 小高い岡に過ぎません!美味しい兎が獲れるぞたまに!
     麻績川に小鮒を釣りし彼の日々の友達はみな音信不通!


〇  わが前で妻に尾を振る老犬はパワーバランス熟知しており  (福岡県)末松博明

 五席。
 「パワーバランス熟知しており」とは、極めて僻みっぽい言い方であるが、私・鳥羽散歩と連れ合いとの関係も全く同様でありますから、作者の気持ちには同感せざるを得ません!
     犬にまで嫌はれちやつてこれ以上長生きしても楽しみが無い!
     老犬よたまには僕の前でだつて尾ぐらい振つていいではないか!


〇  馬毛島のボーリング調査始まりぬ揺れる小舟に乗る反対派  (西之表市)島田紘一

 七席。
 「時価相場の百層倍の札束を叩いて、自公連立政権が宗主国のアメリカさんの為に入手した!」との噂も高い馬毛島を巡って、過日行われた西之表市長選挙で、在日米軍の空母艦載機訓練の馬毛島への移転計画に反対する現職が八選を果たしたとのことでありますが、その得票差は微差であり、菅政権は移転計画を変更する事なく断行するとの事でありますが、その帰趨は如何ならんや?
     馬毛島に辺野古の海にモリカケに桜を観る会東北新社!


〇  酒あおり久方ぶりに熟睡す永遠の眠りの姉の隣で  (光市)松本進

 八席。
 「久方ぶりに熟睡」と「永遠の眠り」との対比!
 通夜番の一夜、永遠の眠りに就いた姉の亡骸の入った棺の前で未だ息災の年下の兄弟姉妹たちとお酒を飲み交わした後、酒の勢いを借りて二つ折りにした座布団を枕代わりにして熟睡しているのは、山口県光市にお住いの本作の作者・松本進さんである。
 酒の力を借りて「久方ぶりに熟睡」している作者も亦、孰れその裡に、永遠の眠りを就かれるのでありましょうが、その点に就いては、私・鳥羽散歩も全く同様でありましょう。
     酒煽り棺の前に眠りても孰れそのうち死期訪れむ!


〇  告げられしステージⅢは闘病の始まりなだけ死ぬのではない  (向井好美)

 末席。
 昨今の医学の進歩は目覚ましく、「癌」は今や死の病に非ず!
 「ステージⅢ」を宣告されて後、十年以上も息災で三十歳年下の初婚の男性と再婚した八十代の女性が、私・鳥羽散歩の近辺に居たりするのである。
     告げられしステージⅢを武器にして更に一期の市長就任!

今週の「朝日歌壇」より(2021/2/21掲載)  日の丸を掲げ祝ふる家も無く今日は天皇誕生日なり!

     馬場あき子選

〇  冬休み明けラテン語の先生の声は今年も低くつややか  (富山市)松田わこ

 首席並びに高野選の六席。
 「ラテン語の先生は『低くつややか』な声に人物まで浮かぶようだ」とは、選者・馬場あき子氏の寸評である。
 「今年も低くつややか」との着目点の宜しさが評価されての首席入選でありましょうか?
 ところで、「ラテン語の先生」に留意すると、本作の作者・松田わこさんは、昨春、真に目出度くも東京大学に合格し、現在、第三外国語として「ラテン語」を履修して居られるものと推測される?
     冗談は止せよ!松田わこさんは管理栄養士を目指してるんだ!


〇  自らが濃厚接触者と知りし生徒は差別を恐れて泣きぬ  (神戸市)斎賀万智

 次席。
 「幼い濃厚接触者の恐れが痛ましい」とは、選者・馬場あき子氏の寸評である。
 作中の一語「生徒」に留意すると、神戸市にお住いの本作の作者・斎賀万智さんは、件の「生徒」を教え導く立場の人間、則ち、件の生徒が在籍する学校の先生なのかも知れません!
 であるとしたならば、本作の作者・斎賀万智さんは、自らの勤務校の「生徒」がコロナウイルス感染者の「濃厚接触者」であると知らされて級友たちからの「差別を恐れて」泣いているのにも関わらず、件の「生徒」を励まし守り庇おうともせずに、朝日歌壇に投稿する短歌のネタにしているような不届千万なる教師と断定せざるを得ません!
 であるとしても、数多くの先生たちの中には、「佐野朋子のばかころしたろと思ひつつ教室へ行きしが佐野朋子をらず」などという不届千万なる名歌で以て知られた超著名なる歌人も居られますから、私・鳥羽散歩は、本作の作者を一概に貶したりは致しません!
     万智さんもコロナ感染すれば良し!実体験をネタに歌詠め!


〇  唯一の被爆国が加入せぬ核禁条約たくましく発つ  (安中市)鬼形輝男

 三席。
 「同じ嘆きをうたった歌が多くあった」とは、選者・馬場あき子氏の寸評である。
 総合的且つ俯瞰的見地に立っての非加入でありましょうから、私たち庶民は如何様にも出来ません!
     唯一の被爆国にて非加入の理由は日米軍事同盟!


〇  スペイン風邪を生きぬきし詩人を福岡の獄で死なせた治安維持法  (宇治市)紺谷延子

 四席。
 「詩人は尹東柱。民族独立運動の途上で獄死した」とは、選者・馬場あき子氏の寸評である。
 「尹東柱(윤동주)」は、「太平洋戦争中に日本の立教大学に留学し、その後京都の同志社大学に転学し、そこで朝鮮独立運動に関わると疑われ治安維持法違反の容疑で逮捕され、福岡刑務所にて収監されている間にわずか27歳で獄死した。その残された詩は、学校での朝鮮語教育も制限された時代に、全編朝鮮語で書かれていた」との事である。

     死ぬ日まで天を仰ぎ
     一点の恥じ入ることもないことを、
     葉あいにおきる風にさえ
     私は思い煩った
     星を歌う心で
     すべての絶え入るものをいとおしまねば
     そして私に与えられた道を
     歩いてゆかねば。
     今夜も星が 風にかすれて泣いている。
                        (一九四一.一一.二〇)
                   尹東柱詩集『空と風と星と詩』その1「序詩」(金時鐘編訳岩波文庫、2012年)

     残されし少なき日々を惜しみつつ真摯に歌を詠むべし鳥羽も!



〇  蠼螋、百足、蚯蚓らかたまりてなかよく冬越す朽木のうろに  (蓮田市)斎藤哲哉

 五席。
 埼玉県人の「ゲテモノ趣味」とは、よく謂ったものである!
     ワニ・サソリ・マムシ・イグアナ・アナコンダ・ニシキヘビ・セイジカ・カメレオン!
 埼玉県人はだしの「ゲテモノ趣味」に徹しながらも、「ニシキヘビ・セイジカ・カメレオン」とする、下二句十四音に見れらる<句割れ・句跨り>の技巧にご注目あれ!


〇  北関東はやはり寂しい梨盗人は「帰国の金ない」実習生なりき  (水戸市)中原千絵子

 六席。

 下記は、平成三十年十月末現在の「茨城県の外国人雇用届出状況」である。

 ○ 外国人労働者を雇用している県内事業所数は 5,857 事業所【全国 10 位】(前年 10位)で、前年同期と比較すると 598 事業所、11.4%の増加となった。また、県内の外国人労働者数は 35,062 人 【全国 9 位】(前年9位)で、前年同期と比較すると
3,697 人、11.8%の増加となった(平成 19 年 10 月に届出が義務化されて以来、事業所数・労働者数ともに過去最高。)
 ○ 国籍別外国人労働者数は、中国(香港等を含む)の 8,015 人(外国人労働者全体の22.9%)が最も多く、次いでフィリピン、ベトナムの順で、それぞれ 5,997 人(同17.1%)、5,178 人(同 14.8%)となっている。
 ○ 在留資格別の外国人労働者数は、永住者や永住者を配偶者に持つ人等「身分に基づく在留資格」の 14,089 人(外国人労働者全体の 40.2%)が最も多く、次いで「技能実習」が 13,174 人(同 37.6%)、技術・人文知識・国際業務等「専門的・技術的分野の在留資格」が 3,768 人(同 10.7%)となっている。
 ○ 地域別の外国人労働者数は、ハローワーク土浦管内の 8,558 人(県内全体の24.4%)が最も多く、次いでハローワーク常総管内の 6,035 人(同 17.2%)、ハローワーク筑西管内の 4,440 人(同 12.7%)となっている。

 件の「茨城県」に限らず、栃木県・群馬県などの北関東地方には外国人労働者が多く、しかも、その作業内容は、飲食業や風俗業に従事している東京・横浜などの首都圏内のそれとは異にしていて、中小零細企業での工業生産や農作業に従事しているケースが大半なのである。
      茨城は凄く寂しいライバルの栃木に越され人気最下位!


〇  澄みわたる真冬の空の水色を抱きしめる卒論提出日  (富山市)松田梨子

 七席。
 「朝日歌壇」名物の<松田短歌姉妹>のお姉さん・松田梨子さんの先週の投稿作「卒論をプリントアウトしドンドンとそろえる音のうれしい響き」は、馬場あき子選の首席入選作でありましたが、<強い者苛め>の好きな私・鳥羽散歩は、その傑作を評して「<トントンとそろえる音>の軽さがいみじくも<卒論>の内容の軽さを象徴しているのである」などと、嫉妬に駆られた余りに少し意地悪な論評を加えたようにも記憶して居りますが、今週の投稿作は、妹の松田わこさんに後れを取って七席入選である。
 それは兎も角として、「卒論提出」真におめでとうございます!
     トントンと揃える音の軽さには遊び惚けし四年の思ひ!


〇  10分のオンラインなる面会にただ手を振りし病院の妻  (吹田市)船越一英

 八席。
 「ただ手を振る」しか為す術の無い、たった「10分」きりの「オンラインなる面会」だったんですね!
     夫として為すべき事も為し得ずに手を振るだけの六百秒間!


〇  コロナ禍の北吹く野良に勤しめる実習生の交はす母国語  (和歌山県)市ノ瀬伊久男

 九席。
 作中の「実習生」とは、「農業の外国人技能実習生」であり、「その実態は、技能実習との名目で外国人労働者を低賃金で農作業に従事させて、農家の人手不足の解消を図っている」という説も為されているのである。
 「例年ならば年末に一時帰国する筈の実習生諸氏が、コロナ禍の為にそれが叶わず、正月元旦から寒風吹き荒ぶ畑の中で野菜やミカンなどの収穫に勤しんでいた」とのニュースが、朝日新聞を始めとしたマスコミ報道が為されていたことを、私も記憶している。
     コロナ禍に北吹く風が重なつて凄く辛いがお金も欲しい!


〇  御神渡りの期待の結氷打ち砕き零下七度の風吹き渡る  (松本市)馬木和彦

 末席。
 【問】 長野県松本市にお住いの本作の作者・馬木和彦さんは、如何なる理由で以て、「御神渡り」を「期待」してるのでありましょうか?
 【答】 長野県松本市にお住いの本作の作者・馬木和彦さんは、我が国有数の観光県・長野県の県民の一人であるが故に、「御神渡り」を「期待」してるのでありましょう! 
 ところで、「御神渡り」とは、「凍結した湖や沼の氷が堤状にせり上がる自然現象。長野県・諏訪湖のものが有名で、昼夜の寒暖差などにより裂け上がった氷の高さは30センチから1メートル80センチほどになる。湖を横切るようにできるため、神が渡った跡であるかのように思われ、この名がついた。諏訪湖の伝説では、諏訪神社の上社の男神・建御名方神(タケミナカタノカミ)が下社の女神・八坂刀売神(ヤサカトメノカミ)へ会いに通った道とされている。諏訪湖の御神渡りを検分する特殊神事<御渡り神事>は1978年、諏訪市無形民俗文化財に指定された」との事であり、「諏訪湖の御神渡り」に就いては、「結氷が早い年は豊作、遅い年、できない年は不作、また下諏訪側にできた時は豊作、天竜川の河口方面にできた時は不作という言い伝えがある」との事である。
     御神渡り観るため諏訪に押し寄せる観光客がゼロなら不作!

今週の「朝日俳壇」より(2021/2/21掲載)  初版!出血覚悟の大後悔!

     高山れおな選

〇   たてよこに鳥たわむれる冬木立  (長崎市)下道信雄

 首席。
 「枯木寒鴉など古来の着眼に類するが『たてよこに』でモダンに。桂信子に<たてよこに富士伸びてゐる夏野かな>」とは、選者・高山れおな氏の寸評である。
 掲句を掴まえて「枯木寒鴉など古来の着眼に類するが」と断言するところに高山れおな氏の高山れおな氏たる所以が在る!
     カステラを縦横に切り八等分一切れ食べて残りは後日!


〇   絨毯に優しき人の在りし跡  (新庄市)三浦大三

 次席。
 「故人の家を訪ねての感慨か。詠み口自体も優しい」とは、選者・高山れおな氏の寸評である。
 件の「絨毯」の何処にも井丹凹みが認められないのは、亡き人のお尻が殊の外に小さかったからなのかも知れません!
      殊の外お尻のデカい女ゆゑ凹みの目立つ形見の絨毯!


〇   溜席の美人佐保姫かも知れず  (伊丹市)保理江順子

 三席。
 「先日の初場所の景との事」とは、選者・高山れおな氏の寸評である。
      「相撲中継に映り込む<謎の美女>にネット上は大盛り上がり」!!
 白鵬、鶴竜の両横綱をはじめ、初日から関取16人が休場という異常事態で始まった大相撲初場所。10日目には綱取り場所だった大関・貴景勝まで左足首のケガで休場し、相撲協会は終盤の取組編成に苦労した。大関・正代と前頭・大栄翔と正代の優勝争いは千秋楽までもつれる展開になったとはいえ、見せ場は極めて少ない土俵になってしまった。そんな中、「土俵の外」で話題を集めていたのが、NHKの大相撲中継で向正面の東花道脇(テレビ画面では左上隅)に映り込む、背筋をピンと伸ばした女性だった。
 新型コロナ対策で観客がまばらな溜席の同じ位置、それも先場所から「皆勤」。凛とした佇まいもあいまって、相撲ファンの目に止まった。
 ネット上では、〈毎日同じ場所で観戦している姿勢の良いマスク女性は誰だ〉〈溜席のワンピースの正座女性〉と話題になり、「有名歌手Kの知人のモデル」「大物タニマチTが持っている席だ」などの具体的な書き込みもあった。
 白やピンクのロングワンピース、フレアトップス、プリーツスカートなど、日替わりの清楚系ファッションで、傍らに置かれた高級そうなバックも服装に合わせているのか毎日異なる。14日目となった23日は、白地に花柄をあしらった華やかなワンピース姿だった。
 そして、ネット上では「溜席の妖精」なる呼び名もついた。
 テレビ画面越しだけでなく、国技館で取材する相撲担当記者の間でも初場所序盤から話題になったが、彼女が何者なのかは謎のまま。場内警備を担当する若手親方に聞いてみたが、「いろんな知り合いから聞かれるけど、俺もわからないんだ。親方衆の間でも話題になっているんだけどね」というばかり。
 中日頃には「貴景勝の後援会のメンバーでは」という情報も流れたが、貴景勝の休場後も現われたことで”デマ”と判明した。
 彼女が連日座っている溜席は、「(今場所はコロナ対策で座席数制限を設けており)ネットやプレイガイドでは売り出されない、茶屋の常連客や親方が優先的に使用できる席のひとつです。協会や相撲部屋にそれなりに顔がきかないと、15日間通しで座ることはできないはず。また向正面は必ずテレビに映り込むので、視聴者の目にとまりやすいことはご本人も分かっているとは思います」(若手親方)とのこと。
 13日目の打ち出し後、帰路につく彼女に国技館前で話を聞いてみた。観客が一斉に出てくる中でも、清楚な雰囲気と特徴的な服装でひときわ目を引く。意外だったのは、溜席では背筋をピンと伸ばしているので長身に見えたが、どちらかというと小柄なタイプだったことだ。声をかけると、涼し気な笑顔で会釈してくれた。
 ──テレビ中継で東花道に毎日映る女性として話題になっていますが、お話を伺えませんでしょうか。
 「私は一般人なので…(再び軽く会釈)」
 ──どちらかの部屋の後援会の方でしょうか。
 「私ではなく、家族ですね」
 ──どの関取のファンなのか、聞かせてもらえませんか?
 「いえ、一般人なので…」
 そう言ってもう一度軽く会釈し、両国駅前のタクシー乗り場から乗り込んでいった。
 その後、協会関係者に取材を進めると「二所ノ関一門のある親方がお世話になったタニマチのお嬢さんだと聞いています。それ以上は話せません」ということだった。
 休場力士が相次ぐ中、皆勤を続けた「溜席の妖精」。相撲中継の視聴率にも貢献した(?)のだから、協会は「殊勲賞」として彼女を表彰してもいいのでは。
     マスク取り素顔顕はれ驚きぬ妖精ならぬ醜の御楯だ!


〇   暗いなあと外野手の声つちぐもり  (越谷市)新井高四郎

 四席。
 「外野手」とあるから、ベイスターズからFAでジャイアンツに移籍した梶谷隆幸選手なのかな、と思ったりもしましたが、いくら顔も口も育ちも悪い彼だって、紳士球団の巨人軍の一員となったからには、そんな不満めいたことは言ってられません!
 察するに、件の「外野手」が「暗いなあ!」と愚痴を零したのは、先々週の土曜日に川口市の青木町公園総合運動野球場で行われた草野球の試合での出来事だったのかも知れませんね!
     霾るや「暗いぢやんか!」と呟きて松原聖弥外野に走る!
 

〇   手袋を嵌め煮詰まつてくる答  (東京都)望月清彦

 五席。
 「手袋を嵌め」ると、何故か膠着状態に陥っていた商談も「煮詰まつていくる」から不思議なものですね!
 但し、同じ手袋と言っても「軍手」ではいけませんよ!
 最低でもブランド品の革手!
 出来得れば、「ポロ・ラルフローレン」ぐらいは嵌めてみたいものですね!
     ヘマをして小指三寸詰めたから革手嵌めてもサマにならない!


〇   下萌や生きよと言はれゐるやうな  (高山市)島尻順子

 六席。
 何しろ寒風吹き荒ぶ裏日本の凍土を突き破って姿を現わすんですから、その顕示欲たるや橋本聖子さんのそれに百層倍するものなのかも知れません!
 私・鳥羽散歩は、裏日本の野菜どころに生まれ育ったものですから下萌えした雑草の新芽は勿論の事、例え山菜であろうとも、コゴミだとか、カタクリの花だとか、薊の薹だとか、蕗の薹だとかの食べて美味しくないものは食べません。
そうそう、たったの今、思い出したばかりでありますが、私が<>

下萌の大盤石をもたげたる/高浜虚子
下萌のいたく踏まれて御開帳/芝不器男
相模ノ国国分寺址下萌ゆる 塩田博久
建仁寺八百年の下萌ゆる 宮崎正
南朝の風吹く史跡下萌ゆる 林和子
下萌や引込線の鉄路錆ぶ 石黒興平
下萌の日ごと広がる土手の道 後藤克彦
下萌の荒れ野斜めに過ぎりけり 山本無蓋
下萌や歩幅大きく測量士 佐々木よし子
妻の座の長き月日や下萌ゆる/川口咲子




〇   冒険の赤のセーター落ち着かず  (香川県琴平町)三宅久美子

 七席。

〇  知らんけど推すアイドルが推すおでん  (安曇野市)望月信彦

 末席。           

今週の「朝日俳壇」より(2021/2/21掲載)  毎日更新!訂正版!

     長谷川櫂選

〇   心から笑へる春を待ちにけり  (伊万里市)松尾肇子

 首席。
 「ほんとうに来るのだろうか。昔のような春が」とは、選者・長谷川櫂氏の寸評でありますが、選者の仰る「昔春」は、私たち庶民が、本当に心の底から「笑へる」ような「春」だったのでありましょうか!
 このコロナ禍の中で<東京オリパラ>を強行しようとしている現状だとか、菅内閣がコロナ禍からの脱却よりも<経済を回す>事を優先する政策を断行している現状だとか、著名な男性が目前に現れると無暗矢鱈に抱き付いて行ったり接吻する事を強要するような人物が<東京オリパラ大会組織委員会>の会長に就任している現状だとか、自分の息子と他人の息子との区別もつかないような人物が内閣総理大臣に就任して威張っているような現状だとかに就いて少し真面目に考えてみれば、私たち良識ある庶民にとっては、今年の春だって笑って遣り過ごすしか術の無い春なのかも知れませんよ!
     日本語も碌にしやべれぬ分際が何語でしやべる国際会議!


〇   人日のいよゝ離るゝ人と人  (富士見市)阿部泰夫

 次席。
 「正月七日は人の日。今年はこんなぐあい」とは、選者・長谷川櫂氏の寸評でありますが、「こんなぐあい」を具体的に説明すると、「不要不急・三密・社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)」という事になりましょうか!
      来年もこんな具合の暮らしなら国債売つて腹を満たさむ!
 

〇   セクシーとほめられてゐる狩の犬  (栃木県壬生町)あらゐひとし

 九席。
 察するに、件の「狩の犬」は陽物が殊の外に巨大であったのでありましょう!
    殊の外チンポのでかい犬だから<セクシーわんこ>と持て囃されつ!

今週の「朝日俳壇」より(2021/2/21掲載)  改訂版出来!出血覚悟の大後悔!

     大串章選

〇   風の中明日へ明日へと冬木の芽  (合志市)坂田美代子

 四席。
 斯くして季節は、冬から春へとそよりそよりと動いて行くのでありましょう。


〇   梅林を上り梅林を見下ろせり

 八席。
 越生梅林吟行に取材した一句でありましょうか?
 「越生梅林」は東武東上線越生駅からバス15分、関越自動車道鶴ヶ島ICから30分の距離に在り、1000本余りの紅梅・白梅が咲き誇り、三月上旬から中旬頃までが梅花の見頃である!      

今週の「朝日俳壇」より(2021/2/21掲載)  出血は覚悟の上だ!

     稲畑汀子選

〇   冬帝や災ひ治め去り給へ  (東京都)河野昭彦

 首席。
 「冬帝は、冬をつかさどる神という。世界中をおびやかす災いに対しての、作者の心からの願いの句である」とは、選者・稲畑汀子氏の寸評でありますが、朝日俳壇へ投稿し、あわよくば首席入選を果たさんとする世の俳人たちにとっては、コロナ禍や大震災などは、絶好にして格好の句材なのであり、当然の事ながら類想句が数多投稿されることが予測されるから、例えば、コロナ禍をテーマにして詠む場合でも、他の投稿者の方々の作品とは趣向を変えて、新味のある作品に仕立て上げなければなりません。
 本作の作者・河野昭彦さんの場合は、彼の胸中に「冬帝」という漢和辞典に出て来る単語が浮かんだ瞬間に、稲畑汀子選の入選が決定付けられたのである、と言っても決して過言ではありません!


〇   吾が余生真ん中あたり日向ぼこ  (神戸市)岸田健

 次席。
 「日向ぼこをしながら自分を振り返る。余生の真ん中とは妙」とは、選者・稲畑汀子氏の寸評である。
     もう止せよ!コロナ退治が大切だ!嘘で固めた東京オリパラ!


〇   一羽てふことのなかりし寒雀  (横浜市)小川龍雄

 三席。
 「寒雀に寄せる作者の温かな情」とは、選者・稲畑汀子氏の寸評である。
 試みに「一羽てふことのなかりし群雀」と改作してみましたが、原作よりはずっとずっと面白い句になったような気がしますが、本ブログの読者の方々に於かれましては如何お思いでありましょうか(笑)!
 冗談は兎も角として、「なかりし」の「し」は、<自らが体験した過去の出来事を回想して述べる>際に用いられる助動詞「き」の連体形であるから、厳密な事を言うと、横浜市にお住いの掲句の作者・小川龍雄さんが、件の「寒雀」を実見したのは過去の出来事、という事になりましょう!
 私が思うに、掲句が、朝日俳壇の入選句に相応しい佳作として称揚されるとしたならば、それは「電線や冬木立に寒雀が群れを成して止まっている光景を眼前にして、『寒雀ってヤツは一羽で止まってるってことがなく、必ず群れを成して止まってるんだな!』と作者ご自身が実見し、感動した事を述べた場合、則ち現在進行形の作品の場合に限られましょう!
 従って、原句は「群成していつも止まるや寒雀」などと改作されなければなりません! 
          ♪電線にスズメが三羽止まってた!
           それを猟師が鉄砲で撃ってさ!
           煮てさ焼いてさ食ってさ!
           よ~い!よ~い!よ~い!よい!
           おっとっとと!     『デンセンマンの電線音頭』
                           作詞:田村隆/作曲:不詳/編曲:東海林修 
     電線にイロハニホヘと並び居る吹き矢で落とし焼き鳥にせむ!


〇   幾度も胼の十指を消毒す  (泉大津市)多田羅初美

 六席。
 正岡子規作の「いくたびも雪の深さを尋ねけり」を脳裏に置いての一句であるが、世上に「罅胼(ひびあかぎれ)に効く塗り薬」という、昔ながらのコピーが在りますが、通常「胼」は「あかぎれ」と読み「ひび」とは読みません!
     殊更に「胼」の字を「ひび」などと読ませる必要いずこに在りや?


〇   遠目にも紅梅放つ色仄と  (大阪市)友井正明

 八席。
 高浜虚子作に「白牡丹といふといへども紅ほのか」という名句が在るが、大阪市にお住いの友井正明さん作の本句の場合は、「紅梅放つ色仄か」であり、作者には、「遠目」からの確認ではありますが、「紅梅」が「紅梅」として認識されているのであり、それを今更「色仄か」などと言い直しても訂正する事は出来ません!
     BSの話題出たのか出ないのか今となつては記憶には無し!
 「紅梅といふと言へどもいろ仄か」

今週の「朝日歌壇」より(2021/2/21掲載)  執筆スペース事前確保!

     佐佐木幸綱選

〇  十年前あの日もやはり雪だった今の自分は確かにわたし  (大船渡市)富谷英雄

 首席。
 「東日本大震災からそろそろ十年を迎える。下句、<あの日>をじっさいに体験した作者ならではの感慨」とは、選者・佐佐木幸綱氏の寸評である。


〇  手拍子なきラデツキー行進曲は初春の耳にあたらしされどさびしき  (東京都)福島隆史

 次席。
 「コロナ禍の新年。無観客で演奏された今年のウィーンフィルのラデツキー行進曲である」とは、選者・佐佐木幸綱氏の寸評である。

〇  再びの自粛に書道教室の墨拭き上げて戸締りをする  (さいたま市)齋藤紀子

 三席並びに永田選の末席。

〇  二昼夜で雪2メーター嬉しきはシャベルを持ちて尋ね来る友  (上越市)鈴木道夫

 四席。

〇  玄関も窓も吹雪に埋まるる日除雪車の後ろゴミ収集車来る  (米沢市)青柳ひろ江

 五席。

〇  オートバイを反転させて新聞をくばりし跡のみ雪上にあり  (盛岡市)山内仁子

 六席。


〇  軛解く退職辞令のその軽さ明日から会わぬ人の優しさ  (岐阜市)木野村暢彦

 七席。

〇  子を持たぬ吾が父母の名を墓誌に彫り家系途絶える村を後にす  (大館市)小林鐐悦

 八席。

〇  耳成の猫は肥えたり林野庁が餌をやるなと触れを出すまで  (宝塚市)小竹哲

 九席。

〇  始めてのスマホで話す母の声ボリューム上げて畑に響く  (仙台市)新村レミ子

 末席。




〇   ()


 三席。
 「 」とは、選者・佐佐木幸綱氏の寸評である。

今週の「朝日歌壇」より(2021/2/21掲載)  執筆スペース事前確保!

     永田和宏選

〇  座るよりその床下を争ったスキー帰りの夜行の「ちくま」  (大和郡山市)四方護

 首席。
 「夜行は確かに席より床が大事だった。私には山行きの懐かしい思い出」とは、選者・永田和宏氏の寸評である。


〇  ピーター・フォークも小池朝雄をゐないのにドラマは進む刑事コロンボ  (生駒市)辻岡瑛雄

 次席。
 「主演と声優を並べたのが巧い」とは、選者・永田和宏氏の寸評である。


〇  「あきちゃんがむかしあかちゃんだったとき」三歳にもう昔のありて  (千葉市)角田春美

 三席並びに高野選の九席。
 「三歳が昔なんて言うのも微笑ましい」とは、選者・永田和宏氏の寸評である。

〇  お風呂より聞こえる子らの笑い声ほくろをつなげば星座になるらし  (奈良市)山添聖子

 四席。 
 「子らが黒子を連ねて星座と笑うのも微笑ましい」とは、選者・永田和宏氏の寸評である。

〇  おばちゃんと自分のことを言えなくて私のままで幼児と話す  (川崎市)川上美須紀

 五席。

〇  さよならと言うとき最も海に近い水門としてひらくくちびる  (さいたま市)丹羽祥子

 六席。

〇  手洗いもマスクもできぬニワトリが密に飼われて埋められてゆく  (八王子市)野口絢子

 七席。

〇  飲み食いと旅することが経済だとはじめて知ったこの一年で  (滋賀県)木村泰崇

 八席。

〇  好き好み介護されてるわけじゃない妻の言い分もっともと聞く  (舞鶴市)吉富憲治

 九席。  

「門脇篤史第一歌集『微風域』」を読む

〇  食道をしづかにくだる牛乳の朝を伝へる冷たいちから

〇  ハムからハムをめくり取るときひんやりと肉の離るる音ぞ聞こゆる

〇  ミの次がファであるやうな感覚であなたの横に座りてゐたり

〇  競争の花言葉持つルッコラのサラダを皆に取り分けてゐる

〇  鎮魂の儀式のごとく食器から値札シールをひたすらに剥ぐ

〇  たぶんもう飛べないだらういらいらと餃子の羽を菜箸で折る   

〇  死者ばかり増ゆる世界に住んでゐてぼくはただただ生きねばならぬ     

〇  わたくしをぢっと薄めてゆく日々に眼鏡についた指紋を拭ふ

〇  うつすらと反吐のにほひを漂はせ少女は首をかすかに揺らす

〇  ハンガ一にきのふとけふを干しながら忘れてもよいことがらを選る

〇  慈雨のごと降つて湧きたる休日に身体中から芽を出してゐる

〇  誰ひとり死んでゐないが指先についた朱肉の赤をぬぐへり

〇  今はなき臨終図鑑の上巻を誰に貸したか思ひ出さない

〇  地方自治体のあはひに溜まる解釈に溺れぬやうに夜を進みつ

〇  故郷との距離思ひをりひとり立つコイン精米機の薄明かり

〇  子をなさぬ理由をけふも問はれたり 梅雨の晴れ間に散歩に行かう

〇  この忙しい時にあなたが補充する液状のりのよろこびのこゑ

〇  二分半ひかりを浴みてパンの上(へ)に正方形のとろけるチーズ

〇  原付を追ひ抜くせつな吾にきざす言語化といふ仄暗きもの

〇  くれなゐのホールトマトの缶を開けいつかの夏を鍋にぶちまく

〇  蟹缶を自分のために開けてゐる海がこぼれぬやうにそおつと

〇  天井のスピーカーからこぼれ落つ死んだ男のピアノの音が

〇  つつつつと剃られた髭が落ちてゐるもう僕ぢやないただの汚れだ

〇  これはまだ私だらうか手のひらにひかりをためて顔を洗へり

〇  廊下にも夏は満ちきぬ隅にある消火器の中も夏だらう

〇  曇天をしんと支ふるビル群の一部となりてけふも生きをり

〇  秒針と長針短針さういへば同じ給与で働いてゐる

〇  先月に辞めた同期の消しゴムを遺品のやうにまだ持っている

〇  幾重にも緩衝材によろはれて死にけるひとの画集は届く   

〇  捨つるため洗ふ空き缶水道の水を満たせばふたたび重し

〇  透明な袋の金魚暗闇を切り取るやうに泳いでゐたり

〇  先月に辞めた同期の消しゴムを遺品のやうにまだ持つてゐる

〇  いま妻は祈りのやうな体勢でヨガをしてをり自分のために

〇  ほとばしる汗ぞさみしき妻の目は恍惚として輝きを帯ぶ

〇  「油断すると肘があたるから、肘にも気をつけてね」

〇  振り方はきのふ習ひきファンたちに当たらぬようにタオルを振りつ

〇  鶏卵をあらん限りの勢ひで混ぜれば白き秋は迫りぬ

〇  雨音を夢にうつつに浴みながら夢の中には傘をささざり

〇  故郷から届く馬鈴薯いくつかは鍬の刺さりし跡を残して

〇  「このLIVEに行くと決めたのは、歩み寄らうと強く思つてゐた頃だ。」

〇  少しだけ足らざる水の頼りなさあなた未満にあなたはゐない    

〇  天体に触れたるやうなしずけさでボイルドエッグ剝く朝のあり

〇  権力の小指あたりに我はゐてひねもす朱肉の朱に汚れをり

〇  くうどうと呟きながら早朝の竹輪のうろに挿し込む胡瓜

〇  悲しみは光度をかへて降るだらう成城石井のたふときひかり

〇  たましひを抜き取るやうに一本の薄荷煙草をきみから貰ふ

〇  わたくしの性役割を思ひつつ卵でとぢる百合根と占地

〇  そんなには元気ぢやないが問はれれば大きなこゑでイェーイと言ふ 
    
〇  ふたりゆゑかくも孤独な真夜中は夜露に濡るる楡を思へり
 
〇  置き傘をときどき使ふ傘であることを忘れてしまはぬやうに

〇  来年の夏がきちんと来るやうに使い古した付箋を貼りつ

〇  いつからか蛍光灯は間引かれて我らを淡くあはく照らせり      

〇  会議室を元の形に戻しをり寸分たがはずとはいかねども 

〇  ぼうぜんと電車の窓を眺むればあんなところにある室外機

〇  世界から隔絶されたこの場所でジェットタオルの風に吹かれて 
 
〇  たぶんもう飛べないだらういらいらと餃子の羽を菜箸で折る 
  
〇  死者ばかり増ゆる世界に住んでゐてぼくはただただ生きねばならぬ     

〇  側溝に入れなかつた雨たちがどうしやうもなく街をさまよふ

〇  なにもなき日々をつなぎて生きてをり皿の上には皿を重ねて

〇  捨つるため洗ふ空き缶水道の水を満たせばふたたび重し

〇  アヲハタのジャムの小瓶に詰めてゆく自家製ジャムのたしかなる熱

〇  コピー機を腑分けしてゐる一枚の詰まりし紙を探しあぐねて

〇  五線譜にをさまるやうに生きてゐるコロナビールにさし込むライム

〇  ひえびえと異国のみづに満たされてペットボトルはひかりのうつは

〇  感情はしづかに積もる錆の浮く穴開けパンチの残土を捨てる

〇  わたくしをぢっと薄めてゆく日々に眼鏡についた指紋を拭ふ

〇  遺失物処理係がゐてあなたへの回路はゆつくり閉ざされてゆく

〇  夕闇にジャングルジムはいくつもの立方体を容れて立ちをり


 1986(昭和61)年島根県生まれ。同志社大学社会学部卒。ウェブサイト「うたの日」等への投稿を経て、2015(平成27)年「未来」に入会し、大辻隆弘に師事。2016(平成28)年度未来賞、2018(平成30)年、「風に舞ふ付箋紙」300首で第6回現代短歌社賞受賞。『微風域』は第一歌集。

 

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Author:鳥羽散歩
卑しくも<詩歌ブログ>を名乗る以上は、イラストやカラー写真で以て読者に取り入ろうとしてはなりません。ましてや、田舎町の安手のレストランで食べた料理のカラー写真で以て読者を幻惑させようとするのは論外です!当ブログは、カラー写真やイラストの類の夾雑物は一切無しの<詩歌ブログ>です。

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