fc2ブログ

archive: 2021年11月

「横山未来子第三歌集『花の線画』(青磁社・2007年)」を読む(其のⅡ)

No image

〇  立てかけられし斧の柄も朽ちゆくほどに永き日花の影は揺れゐつ〇  暖色をうしなひてゆく雲の群れ喉ひらききり泣きし頃あり〇  地のうへの枯れ葉踏みゆく音しるく湖の縁冷えはじめたり〇  てのひらに湿りて在りし夏蜜柑の色ながれ出づ視野をはなれて〇  天上とおもふ位置より降りて来ぬ冬の小鳥の嘴を出づるこゑ〇  熱のなきひかりを生みて手底(たなぞこ)に在りぬあらざるごとき軽さ〇  逃れられぬわが輪郭の見ゆ...

  • 0
  • -

「横山未来子第三歌集『花の線画』(青磁社・2007年)」を読む(其のⅠ)

No image

〇  あの夏と同じ速度に擦れ違ふ歳月のあはき肉をまとひて〇  あふむけに運ばれてゆくあかるさの瞼の外に遠き雲あり〇  あをき血を透かせる雨後の葉のごとく鮮しく見る半袖のきみ〇  一日のなかば柘榴の黄葉のあかるさの辺に水飲み場みゆ〇  いつまでも日日は続くと思ひゐて君に未完の言葉告げ来つ〇  薄紙は椅子にかかれり春の花を巻き締めてゐし疲れを残し〇  卯の花の咲き撓みゐるゆたかさよ誰もたれもが時をこぼ...

  • 0
  • -

「横山未来子第二歌集『水をひらく手』(短歌研究社・2003年)」を読む(其のⅡ)

No image

〇  砂塵さへかがやく朝(あした)菜の花の茎明瞭に水を吸ひ上ぐ〇  春嵐にきしみてをらむその髪を濯ぐべくわが川ゆたかなれ○  「好きだつた」と聞きし小説を夜半に読むひとつまなざしをわが内に置き〇  急かさるるやうに応へを求めゐき雪にならざるものは音立つ〇  空の弧に沿ひつつ雲の群れながれだれの足跡もあらぬ明日へ〇  高き樹に夕立の前の風は来てざわざわと二の腕の冷えたり〇  土の下の種よりしろき根の伸...

  • 0
  • -

「横山未来子第二歌集『水をひらく手』(短歌研究社・2003年)」を読む(其のⅠ)

No image

〇  秋の水に顔濯ぎをり身体からにじめるものの熱を薄めて〇  朝霜の小鳥の脚に砕かるるかすかにきみに怯えてゐたり〇  朝のひかり届き来れる数分をはなやぎてゐる銀杏の大樹〇  逢ひしことの温度を永く保たむととざせり耳をまなこを喉を〇  一歩退きて満開の樹を仰ぎゐるわづかに温度低き身として〇  いづくにか大樹あるらし春の日をとほく囀りの器となりて〇  うつむきて過ごせる幾日ゆらぎあふ木漏れ日は踏めぬも...

  • 0
  • -

「横山未来子第一歌集『樹下のひとりの眠りのために』(短歌研究社・1988年)」を読む(其のⅡ)

No image

○  月と藻のゆらめきまとふ海馬(うまうま)となりたり君の前にうつむき○  手渡さぬままのこころよ口中のちひさき氷嚥みくだしたり〇  隣りあふひと時のみに身の裡の水のおもたく片寄るを知る○  鳥の名をわれに告げゐる唇をもて苦しきことを誰に語らむ〇  夏の陽を反せるバスの窓へだて音声のなきさよならをしつ○  眠られず君は寝がへりうちゐるかわが夢の面(も)のときに波立つ〇  睡りよりつひに帰らぬ少年のため折り...

  • 0
  • -

「横山未来子第一歌集『樹下のひとりの眠りのために』(短歌研究社・1988年)」を読む(其のⅠ)

No image

○  青草に膝をうづめて覗きこむ泉にわれは映らざるなり○  秋草のなびく装画の本かかへ風中をゆくこの身透くべし〇  あざやかに今は笑みたし黄の花は絵の具を厚くのせて描かな〇  おぼろなる心に小石投げ込みてその優しさのふかさ知りたし○  抱へもつ壺の内にて水は鳴り予感せりとりのこさるる日を○  風に乗る冬の揚羽にわが上に一度かぎりの一秒過ぐる〇  愛(かな)しみに手ざはりはなくセーターの背(せな)にて水...

  • 0
  • -

今日の一首 ──クロモジ──

No image

〇   クロモジを見つけてその場に立ち止まり「匂ひを嗅いでみなさい!」と云ふ  鳥羽散歩 相も変わらぬ「山行ブーム」である。 昨今は、さしたる高山に登る訳でもない<山女>たちの山歩きに限らず、大丈夫の男性どもさえも<山岳ガイド>に付き添われての山行流行りであるとか? 彼らが、ガイド付きで山歩きをしようがチョモランマ登攀を試みようが、付き添いのガイドに支払う費用を、この私が負担しなければならない謂れ...

  • 0
  • -

「笹公人第三歌集『抒情の奇妙な冒険』(早川書房・2008年)」を読む(其のⅢ)

No image

〇  廃駅に兆せる凶事のまぶしさに金田一耕助が手を振る ルンペン同然の金田一耕助にとっては、「廃駅に兆せる凶事」が「まぶしい」のである。 即ち、「失業者は、就業の機会が到来したことを<まぶしさ>を伴って感得する」のでありましょう。〇  二十年(はたとせ)も風呂場の隅に置かれいるスーパーボールに宿るたましい かつては、遊び道具として少年たちの生活身辺から決して離れることが無かった「スーパーボール」であ...

  • 0
  • -

「穂村弘×堀本裕樹『短歌と俳句の五十番勝負(新潮社刊)』」便乗短歌五十首(其のⅠ) 全面改訂、決定版!

No image

【01番】 お題─椅子─ 出題者─穂村弘(歌人・51歳・♂ )    〇   透明な椅子が近くにあるはずだそれから透明な洗面器  穂村弘    〇   新涼やひさしく触れぬ椅子の脚  堀本裕樹    ●   椅子ならば座れるはずだ座れない椅子をばさして椅子とは言はぬ  鳥羽散歩  【02番】 お題─動く─ 出題者─堀木裕樹(俳人・39歳・♂)    〇   駄目な詩をひとつ消したケシゴムの滓がふわふわ動き出す夜  穂村...

  • 0
  • -

「笹公人第三歌集『抒情の奇妙な冒険』(早川書房・2008年)」を読む(其のⅡ)

No image

〇  血塗られし系図の上を駆けてゆく黒い羽織をひらりなびかせ〇  超特急ひかりの鼻に散らばった2年2組のプリクラたちは〇  鉄球が俺の部屋までぶっ壊す夢から醒めて外は大雪〇  鉄人を地下に隠して夕暮れる博士の洋館(やかた)は蔦に覆われ〇  東京に負けた五郎の帰り来て大工町の名はまた保たれる〇  デンジマスク作り終えたる青年のハンダゴテ永遠に余熱を持てり〇  トラウマなる言葉の意味を知りたるは冒険の書が...

  • 0
  • -