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archive: 2022年08月

「小池光第四歌集『草の庭』(砂子屋書房・1996年)」を読む(其のⅦ)

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〇   「焼きソバパン」などで済ませて昨日今日午前と午後のけぢめもつかず〇   藪椿咲く道のべは看板の「老人多し 徐行」立ちをり〇   雪虫のとぶころとなりかんばんの赤一文字「灸」ぞ目に沁む〇   雪やみし夕微光にてザゴルスク聖トロイツェ修道院の庭いかに  〇   行くみづのながれにくだる石階にセキレイ降りて草川といふ〇   柚子の木のかたはらなりし井戸にして雪ふるなかに汲み上げにけり〇   ゆふ...

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「小池光第四歌集『草の庭』(砂子屋書房・1996年)」を読む(其のⅥ)

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〇   窓枠の四角い空にひだりより三番目の雲さかんにうごく〇   疎らなる苔のおもてに風はしり散るさざんくわのあたらしき花〇   マンホールの蓋はくるしく濡れながら若草いろの鞠ひとつ載す〇   水枕ゴムのにほひも懐かしくちりぢりに夢のなかにただよふ〇   みづからが苦しみ生みしまぼろしに或るとき憤りあるときすがる〇   みみかきの端なるしろき毛のたまよ触るるせつなにさいはひのあれ 〇   耳の垢ほ...

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「小池光第四歌集『草の庭』(砂子屋書房・1996年)」を読む(其のⅤ)

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〇   はるかなる野辺の送りに野球帽子とりて礼せり少年われは〇   春くれば軒下ひくき荒物屋天牛印軍手をぞ売る〇   晩春のなまぬるき夜を寝むとして壁にきつねの白面ひとつ〇   ひつそりと弓たづさへて少年は電車に居たり青葉にほひす〇   ひとのこゑきくうぐひすはいかばかり遠出して春の野にまよふ〇   ひるがへりたる瞬間の燕(つばくろ)は眼下なる白牡丹花を見しや〇   ヒンドゥーのクリシュナ祈祷の楽...

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「小池光第四歌集『草の庭』(砂子屋書房・1996年)」を読む(其のⅣ)

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〇   タコ来穴子来タコ、タコ来海老来稲荷も来ねこいらず来ずショーユも来〇   ただいちど降りける今年の雪にしてことしの雪におもひでのなし〇   ただいちど見し現実の寺山はポックリ下駄履き立ちてをりしに〇   ただしろく灯台のこる終末をおもひゑがきて屋上くだる〇   たづたづとこどもが弾けるバッハさへある時海のごとく深しも〇   煙草屋はむかしのごとく店土間の空きのはざまに自転車しまふ〇   ダア...

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「小池光第四歌集『草の庭』(砂子屋書房・1996年)」を読む(其のⅢ)

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〇   沙翁作冬物語がひと缶のビールとなりてわれは飲みけり 〇   昨年のどんぐりとことしのどんぐりがオルゴール箱にまじり合ふなり〇   さみどりの腹をひろげてカマキリは死にをりけりな電灯のもと〇   寒き日のゆふぐれに来しこども連れ「ものみの塔」の人を帰しぬ〇   散髪屋の椅子にのぼれば背後よりはさみあらはに人の来てゐる〇   残年の二人小声にしてをれる競輪懺悔もわれは聞きゐる〇   したたかに...

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「小池光第四歌集『草の庭』(砂子屋書房・1996年)」を読む(其のⅡ)

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〇   回転の方向はそれ左回り穴子来て鮪来てイカ来て穴子来〇   影なきにんげんはひとり泳ぐかな コンヴィニエンス・ストア二十五時〇   かへりくるランドセルみればそれぞれに小太鼓の撥二本さしをり〇   川しもに傾きふかく杭はたつ降りくる葦をせつにもとめて〇   河野裕子が永田和宏を叱るこゑゆめの渚のあけぼののころ〇   奇怪なる山本リンダの活動をたたみのうへに立ちつくし見つ〇   紀元前一三九年...

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「小池光第四歌集『草の庭』(砂子屋書房・1996年)」を読む(其のⅠ)

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〇   あくまでも空気の中に存在し飛行船あり春の現に〇   足裏にうどん踏みたる感触のよみがへり寒き日暮れとなる〇   青白く枇杷のわか葉のむれだちて少女のありし窓を覆ひぬ〇   「アジサイ」の木札の立ちてあぢさゐのそこに末枯るる遠き日の駅〇   あたらしき靴をおろして靴擦れにくるしみありく梅のさくみち〇   あぢさゐのつゆの葉かげに瓦斯ボンベこゑなく立てり家をささへて〇   穴子来てイカ来てタコ...

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「小池光第三歌集 『日々の思い出』(雁書館・1988年)」を読む(其のⅥ)

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〇   真昼間の寝台ゆ深く手を垂れて永田和宏死につつ睡る〇   道端に拾ひしカセットテープより意味不明なる声は出でたり〇   むかしわが万引したる一冊の島尾敏雄は純情深き〇   眼薬を入れられて眼はなみだするいつ来ても不機嫌な老医師のまへ〇   ゆく秋の曇りは垂れてチェルノブイリの蛙らもみな地中に入らむ〇   行春のあめのしずくは後楽園人工芝の針にすべるか〇   夕方を帰りてくれば隣家なる今井さん...

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「小池光第三歌集 『日々の思い出』(雁書館・1988年)」を読む(其のⅤ)

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〇   左手の中指半ばに生えきたる一本の毛は横たはらざり〇   日なたにて干し柿くひぬ干し柿は円谷幸吉の遺書にありしや〇   日の丸はお子様ランチの旗なれば朱色の飯(いい)のいただきに立つ〇   昼すでに寝てしまひたる夜にして南京豆など食べむとしをり〇   びりけつになりて我が子が卑屈なるおもざし見せて寄るをさびしむ〇   ファミコンはいつ買つてくれるかと電話にておもひつめたる声で言ひけり〇   ...

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「小池光第三歌集 『日々の思い出』(雁書館・1988年)」を読む(其のⅣ)

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〇   体育館器具室の窓に午前(ひるまへ)のしろく冷きさくらは見えし〇   立食ひのまはりはうどん啜るおと蕎麦すするおと差異のさぶしさ〇   父十三回忌の膳に箸もちてわれはくふ蓮根及び蓮根の穴を〇   つぎつぎと乳歯はづれてゆく吾子をうすきみわるしとまでは言はねど〇   つやつやと出でたる種三つぶ干し柿の身のうちにしてやしなはれ来ぬ〇   年老いしアナスタシアをおもふとき百日紅の花の下の永遠〇   ...

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