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archive: 2022年09月

「木下こう処女歌集『体温と雨』(砂子屋書房・2014年)」を読む(其のⅠ)

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〇   朝は胸に夕は踵にあるやうな悲しさのためにくつしたを履く 「朝は胸に夕は踵にあるやうな悲しさ」、即ち、全存在に亙る「悲しみ」なのである。 彼は何がゆえに「くつした」を履くのかな? 察するに、件の「くつした」なる履物には、「悲しさ」を和らげる働きがあるのかも知れません。〇   雨垂れの音飲むやうにふたつぶのあぢさゐ色の錠剤を飲む 察するに、件の「あぢさゐ色の錠剤」とは「睡眠剤」でありましょう?...

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「木下こう処女歌集『体温と雨』(砂子屋書房・2014年)」を読む(其のⅥ)

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〇   窓がみなゆふぐれである片時のアビタシオンに人のぼりゆく ほんの「片時」の安息を求めて介護付有料老人ホーム「アビタシオン」の階段を上って行く人々の目に映るのは「夕暮」の光景である。〇   真昼とはさみしき語感 蜘蛛の巣のひかりに絡められてゐる空〇   ママ、ママとまちがへながら吾に来し子は春に降る雨の目をして〇   路傍にしやがみて犬を撫づるとき秋をひとつの胡桃と思ふ〇   身にふれて濡るる...

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「木下こう処女歌集『体温と雨』(砂子屋書房・2014年)」を読む(其のⅤ)

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〇   長靴のつめたい踵にはりつきて誰の草笛だつたのだらう〇   肉体の温度せつなし夜の樹をぬけくる雨のとうめいな黒〇   ねぢれたる季節の風は窓にきて骨の色した卵を生めり〇   はつなつのひかりはほそく射しながらわたしの指の上を寒がる〇   はなびらの踏まれてあればすきとほり昼ふる雨の柩と思ふよ〇   葉のすみをすこし燃やしてよごれざるままに冷えたるじふやくの白〇   春といふ浅き器に草つみて農...

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「木下こう処女歌集『体温と雨』(砂子屋書房・2014年)」を読む(其のⅣ)

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〇   たうとつに蝶は噛むのと子は聞きぬ なにかが苦いやうな顔して〇   たくさんのがらくたたちがひかりだしそのはしつこが夜明けのやうで〇   たて笛に遠すぎる穴があつたでせう さういふ感じに何かがとほい〇   たまごからこぼれるやうに醒めにけり あなたが空と陸である夢〇   ダアリアを剪りつつ邪悪ね、と言ひぬ けふこひびとに差し出すダアリア〇   誰かいま白い手紙を裂いてゐる 夜のカップのみづ揺...

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「木下こう処女歌集『体温と雨』(砂子屋書房・2014年)」を読む(其のⅢ)

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〇   さらさらとさみしき冬日 花の茎ゆはへて水にふかくふかく挿す〇   サルビアの咲きてあかるむところまで晩夏の微温き水を運びぬ〇   紫苑から曼珠沙華へとつづくからひとりつきりが尊さになる〇   春泥をあなたが踏むとあなたから遠くの水があふれだします〇   食卓のトマトつめたくしたたりぬ軽羅にあはく蔓をひろげて〇   錠剤のひとつぶづつをのせてゆくてのひらは匙のうすさをもちぬ〇   梳かれつつ...

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「木下こう処女歌集『体温と雨』(砂子屋書房・2014年)」を読む(其のⅡ)

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〇   階段といふ定形をのぼりつめドアをひらくと風がひろがる〇   悲しみが降りやまぬゆゑあなたから白い枯れ葉を取り出してます〇   かんたんな気持ちで見知らぬ町に行き樹下をすぎゆくバスに乗りたし 〇   北の木のただいつぽんの佇みに質量のなき手をそへてゐし〇   北むきの窓辺の古きさむき椅子ふかく掛けたるとききしみをり〇   きだはしを下りると雨につつまれてもう赤茶けた火のあとの蓮 〇   樹の...

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「渡辺松男歌集『牧野植物園』( 書肆侃侃房・2022年)」を読む(其のⅠ)

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〇   あのへんは遠く清流だつたのだスカイツリーを天魚(あまご)がおよぐ〇   網戸の目一ミリ四方の密集をすりぬけてきし飛行機の影〇   石狩川河口へ曇天下にゆきて影なきわれは河口に見入る〇   烏骨鶏の卵(らん)をひるまにのみこめば黄身のかたちが空にもありぬ〇   えいゑんはとまりて落下せぬ雨を五十階にてつまむほそき手〇   炎暑にて無人の町のみづたまり蒸発をして足跡となる〇   落ちながら大き...

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今日の十余首(週刊誌の紙面広告より取材)

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〇   モギさんの<自民調査>は出鱈目だ!正直者が馬鹿を見たんだ?〇   官邸の最側近に潜み居る統一教会シンパサイザー?〇   狂会のシンパ告白!「キハラへの選挙支援を呼びかけた」とか?〇   モギさんがアソータローをもの凄く卑しい動機で非公表?〇   嘘バレた政調会長ハギウダの二進も三進も行かぬ昨今〇   国葬をアソーに云われ決意したキシダ草履の計算違い〇   三歳の園児死なせてヘラヘラと笑う園...

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「谷村はるか処女歌集『ドームの骨の隙間の空に』(青磁社・2009年)」を読む(其のⅣ)

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〇   破壊欲果てないわたしたちのため破壊途中にとどまるものよ〇   八月以外の十一か月の広島にしずかな声の雨は降りくる〇   人が人に贈る至高のやさしさは理由(わけ)きかぬこと雨があがった〇   一晩中呼びつづけたい名のために濁った街を抜け球場へ〇   昼ビール汗となり伝う首すじを許そう許しあおう死ぬまでを〇   広島が毎日わたしに言ったこと「愛を惜しめば、きっと悔やむ」と〇   ヒロシマと書き...

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「谷村はるか処女歌集『ドームの骨の隙間の空に』(青磁社・2009年)」を読む(其のⅢ)

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〇   タワレコでPOPを読んで時は過ぎるああこんなにも人間は言葉〇   誰も誰も誰かを欠いたあの日からこの街に無傷の人おらず〇   つばめ空の真中で止まる島の昼その静けさで壊せわたしを〇   東京のビール工場の屋上に海を嗅ぐわれら海の上に棲む〇   東京は雨の日がいい路上へと滲んだほうの町を見ている〇   父ちゃんと娘の前にひとつずつニュートーキョー大ジョッキは置かれ〇   鳥よおまえほのあたた...

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