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archive: 2022年10月

「鈴木陽美処女歌集『スピーチ・バルーン』(ながらみ書房・2018年)」を捲る(其のⅡ)

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〇   鎮もれるルネ・マグリットの絵をかけてふしぎな夢をみたい月の夜〇   双六に似る地下鉄の路線図を五つ進んで乗換えしたり〇   測量士のはたらくそばを通るときわれはつかのま黒猫になる〇   たっぷりと雨の雫をはらみたる形とおもう「霽(はれる)」の文字は〇   束ねたる反故紙で切りし指の傷傘さすときにぴりんと痛む〇   たんぽぽの綿毛残らず風に飛び<負ける勇気>をおもう日曜〇   近づけばわがた...

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「鈴木陽美処女歌集『スピーチ・バルーン』(ながらみ書房・2018年)」を捲る(其のⅠ)

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〇   相性が悪かったのだ 糸偏は吉を選ばず冬を選んで〇   明け方の夢のおわりはあるようなないような虹の脚に似ていて〇   熱き風吹いているらむマティスの絵の開けっ放しの扉の向こう〇   「いまどこに?」「天神裏の珈琲屋」きみと重ねるスピーチ・バルーン〇   右舷から吹く風はらむ帆が立てりどこにも行かぬボトルシップに〇   後ろからアシスタントの現れて前後左右の髪乾きゆく〇   うすものを纏うが...

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「山中律雄第五歌集『淡黄』(現代短歌社・2022年)」を読む

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〇   大きなる鯉のあふりにたゆたへる水の濁りはしばしにて澄む〇   大なゐにさきがけて鳴るケータイはよそ事思ふことを宥さず〇   おのずから窪みにみづは集まりて秋の干潟にひかりを返す〇   海上に雲去りゆきてはつ夏の風吹く街は空軽くなる〇   貨車過ぎてふたたびわれのめぐりには春のあめ降るやさしき音す〇   カーテンを閉ざして高さうしなへる高層二十二階に眠る〇   繰りかへし池の面を打つ噴水が五...

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今日の一首

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〇   土蔵から黴の生えたる写し絵を掘り出してきて魅せゐる爺様〇   秋風に吹かれて何処に向かはむか行くさき孰れ冥途にあれど ...

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古雑誌を読む(『短歌』2022年6月号)

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〇   理科室へ続く廊下が長くって赤い消火器目印にする  (和歌山県)中尾加代 題詠部門の「大賞」受賞作である。 一首の意は、「娘の学校の理科室へと続く廊下はあまりにも長いから、私は、その途中にある赤い消火器を目印にして行くのである」といったところでありましょうが、三句目の「長くって」は、苦肉の策と思しき五音である。 更に言うならば、「理科室へ続く廊下が長くって」という、凡そ韻律らしきものが感じられ...

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古雑誌を読む(『短歌』2022年6月号)

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〇   まだ少しこの世を覚えている祖母は友理子と私を母の名で呼ぶ (東京都)野田鮎子 「病床に臥している祖母が自分の娘である作者の母と作者本人とを混同している」事を主題にした短歌はしばしば見掛けるので、本作の題材自体や作者の発想は、格別に目新しいものではありません。 敢えて言うならば、四句目中の「友理子」という具体に惹かれて、選者たちは、この作品を「大賞」受賞作に選定したものと思われる。 虫の息吐く...

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古雑誌を読む(『短歌』2022年6月号)

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〇   鋭角に燃ゆる藁火に初鰹焼いて待ちおり久しき悪友(とも)を   篠崎俊二 神奈川県厚木市在住の篠崎俊二氏の傑作であり、題詠部門の都道府県賞(神奈川県)を受賞した作品である。 「鋭角に燃ゆる藁火に」という、歌い出しの二句の着眼点が宜しく、真に適切を得た表現である。 作者の篠崎氏の職場は、厚木市の在の神奈川県愛甲郡清川村とお聞きしておりますから、おそらくは「藁火」で以て「初鰹」を実際に焼いてみた経験...

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今日の朝詠み(まほろばの島)

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〇   「久々に草刈機など振り回し疲労困憊気味」とのMALE〇   四時半に布団抜け出し草刈に専念せむとすれども眠し〇   爺様に睡魔が襲う早朝のブログ更新とても不可能〇   足腰に痛みが生じ往生す老齢なれば足取り重し〇   在庫から選出したる写し絵は海霧湧きて沈む粟島〇   貨物船「BARI GOLD」停泊中、在来船だがパナマ船籍?〇   特攻の訓練基地の在ったのは荘内半島香田集落〇   海霧もすっかり...

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「鶴田伊津第二歌集『夜のボート』(六花書林・2017年)」を読む(其のⅦ)

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〇   ゆうぐれに開くというを教えたりオシロイパナに指を染めつつ〇   ゆっくりとさよならをするアメンボにれんげに雲に広い背中に〇   茹で蛸をずんだずんだと切りながらゆうぐれという半端を端折る〇   ゆびさきのよろこびゆびはくりかえし味わうポン・デ・リングちぎりて〇   ゆるみたる微熱のからだ横たえて子の弾くハノン遠く聞きいる〇   夜毎夜毎しずかに編まれゆくものか夢の被りしくさかんむりは〇  ...

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「鶴田伊津第二歌集『夜のボート』(六花書林・2017年)」を読む(其のⅥ)

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〇   まお・こはる・ゆい・はるな・ひより 子の友に「子」の字のつきし名を持つ子なし〇   また夏は来る くるけれどこの夏のたった一度を文箱に仕舞う〇   まだわれの受け止められるかなしみもあるのだ夜泣きの子を抱きしめて〇   ママ友というはおらねど『綾野剛写真集』貸してくるるひとある〇   真夜中に眼鏡売りきて電燈のわずかな揺れを指し示しおり〇   「みおちゃんママ」などと呼ばれて手を振りしわれ...

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