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詩歌句誌面

読解なくして論評あらず。

今週の「朝日歌壇」より(2020/10/25掲載)  山峡の駅のホームで待つ合ひ間牡鹿入り来て牝鹿と交尾む!  鷹柱見むと思ひて来しかども鷹は見ずして海鵜見にけり!  石鎚に銀河が注ぐこの宵も君を恋ひをりテントの中で!  吾輩は跳び箱音痴の年寄りで開脚跳びの五段を跳べず!  姉ちゃんのアドバイスも空しくて後ろばっかり視ていたそうすけ!  被災地に首都の機能を移転して官僚どもを転住させよ!  政権が嫌ふからとて必ずしも学者であるとは言へません!  学童のふんどし借りて相撲取り葉書十枚せしめた島田氏!  金沢の男と同棲したりするなんて愚かなことしられんな!  春を告ぐる鶯さへも撃ち殺し焼鳥にして喰つてたもんだ!

     馬場あき子選

○  うたうたう小鳥の重さがひとさじの塩くらいだと知った日の空  (丸亀市)金倉かおる

 首席。
 「10グラムから15グラムくらいの体重の小鳥たちの切ないほどの命を塩の重さでうたったことが心に沁みる」とは、選者・馬場あき子氏の寸評である。
 ところで、私・鳥羽散歩の体重は、日によって多少の違いがあるが、約六十㎏である。
 六十㎏と言えば、昭和三十年代までお米の出荷に使われていた米俵一俵の重さであり、その当時の農家の男衆は、是を両肩に担いで歩いていたものである。
 それなのに、現代社会には「うたうたう小鳥の重さがひとさじの塩くらいだと知った日の空」なんて、まるで我が身のか弱さを誇りにしているような女性が居るなんて、一体全体、日本人は何処までだらしなくなって行くのでありましょうか?
     春を告ぐる鶯さへも撃ち殺し焼鳥にして喰つてたもんだ!


○  仕送りをおろす時浮かぶ母の顔「ムダ使いしられんな」の声も  (富山市)松田わこ

 次席。
 「母の言葉、優しい口調とともにきびしさもある」とは、馬場あき子氏の寸評。
 「ムダ使いしられんな」とは、「ムダ使いをしてはいけない」という意味の富山弁である。
 即ち、富山弁の「○○しれんな」は、「○○」する事を軽く禁止する言い方なのである。
      金沢の男と同棲したりするなんて愚かなことしられんな!


○  ふうせんが九つとんでいきました選者四氏の心の中を  (高松市)島田章平

 三席。
 「10月4日付歌壇のやまぞえそうすけ君の歌に感じての歌」とは、選者・馬場あき子氏の寸評である。
 馬場あき子氏の寸評に曰く「10月4日付歌壇のやまぞえそうすけ君の歌」とは下掲の一首であり、私・鳥羽散歩は、その四選者共選という朝日歌壇史上稀に見る傑作に対して、次の如き戯評(ならぬ愚評)を加えているので合せて記して置きます。

    ふうせんが九つとんでいきましたひきざんはいつもちょっとかなしい  (奈良市)やまぞえそうすけ
 馬場あき子選の三席及び佐佐木幸綱選の九席、高野公彦選の末席、永田和宏選の八席。
 「下句の<かなしい>の発見がすばらしい。大量の風船の喪失感」とは、共選者の一人・馬場あき子氏の寸評である。
 奈良市名物の「山添短歌一家」のご長男の<やまぞえそうすけ>君の出番でありますが、「スーパーの開店記念大売り出しで貰った風船十二個の中の九個がママのうっかりミスで風に吹き飛ばされました。残りの風船は幾つででしょうか?」とは、まさしくも「いつもちょっとかなしい」「ひきざん」でありましょう!
     風船を幾つもくれる売り出しはアフターコロナの昨今は無し!
     引き算はいつも哀しい!今週はみんな揃つて嬉しい入選!

 改めて熟慮してみるに、やまぞえそうすけ君は、今年の夏休み中に、新装成って開店記念大売り出しの運びとなった、さるショッピングモールに足を運んで、やっとの思いで手に入れた風船十二個の中の九個を、お母さんのうっかりミスで失ってしまった事を、悔やんでも悔やんでも悔やみ足りない程にも悔やんだのでありましょう。
 そうした彼の悔しい思いが「ふうせんが九つとんでいきましたひきざんはいつもちょっとかなしい」という、四選者共選の傑作を現出せしめたのであり、「<せっかく手に入れた風船十二個の中の九個を失ってしまった事>=<12-9=3>」と即断して悔やむのは、世知辛い現代社会に生きる者としては極めて当然の事でありましょう。
 然るに、この度、この難問に関わり、新たに香川県高松市にお住いの島田章平さんなる畢生のマジシャンが登場して、彼の引き算を一躍掛け算に変幻せしめたのである。
 即ち、件の四選者共選作に関わる数式は、作者・やまぞえそうすけ君の意図としては「12-9=3」という引き算だったのであるが、是が一旦、彼の畢生のマジシャンこと島田章平氏の手に掛ると「(12-3)×4=36」という、掛け算の数式に早変わりするのである。
 「(12-3)×4=36」!
 即ち、小学一年生・やまぞえそうすけくんは、件の畢生のマジシャン・島田章平氏に御助力を仰いだ結果、当初は十二個に過ぎなかった風船を三十六個に変化させ、それに加えて、郵便葉書を四十枚も手に入れたのである。
 持つべきものは斯道の良き先輩であり、粗略に扱わざるべきものは、高齢者の叡智である!
    学童のふんどし借りて相撲取り葉書十枚せしめた島田氏!

  
○  政権に嫌われてこそ学者なれガレリオカント滝川美濃部  (渋川市)中村幸生

 四席。
 手抜きしないで「ガレリオ・カント・滝川・美濃部」と書きなさいよ!
     政権が嫌ふからとて必ずしも学者であるとは言へません!


○  九年半汚染土袋はまだ積まれ一万二千個の仮死の土あり  (福島市)澤正宏

 五席。
 自民党政権と東京電力と福島県の政治屋とが結託して、彼の地に東京電力の原発を誘致しようと画策していた折りに、福島県民の多くがそれに賛意を示した事や、本気になって反対運動を起さなかった事のツケが、それから半世紀以上も過ぎた今になって回って来たという事ではありませんか!
      被災地に首都の機能を移転して官僚どもを転住させよ!


○  さんかんびおねえちゃんからポイントをおしえてもらううしろをむかない  (奈良市)やまぞえそうすけ

 六席。
 嘘おっしゃい!
 先週の高野公彦選の九席入選作が、「初めての一年生の参観はかわるがわるに子らの振り向く」という作品であり、その作者欄には「奈良市・山添聖子」とありましたよ!
 奈良市の山添聖子さんと言えば君のお母さんでしょう!
 そうすけ君は、お母さんが参観に来てるかとうか気になって、まょろきょろ後ろばっかり視てたんじゃないの!
     姉ちゃんのアドバイスも空しくて後ろばっかり視ていたそうすけ!

 
○  ロケットになったつもりで走り出すへいきゃくとびでとび箱五だん  (奈良市)山添葵

 七席。
 「ロケットになったつもりで走り出す」が、抜群にカッコいい!
 山添短歌姉弟の詠歌レベルは、往年の松田短歌姉妹のそれを凌駕しつつあるような感じである!
     でかした!でかした葵さん!
     閉脚跳び箱五段とは!
     月ロケットにも劣るまい!
     見事でかした葵さん!
         オリンピックに出られるかもね!

     吾輩は跳び箱音痴の年寄りで開脚跳びの五段を跳べず!


○  石鎚に銀河が注ぎ込むを待つ君とカメラと星のテント場  (西条市)丹佳子

 八席。
 「石鎚に銀河が注ぎ込むを待つ」との、上の三句は題材が目新しくて宜しい!
 然しながら、下の二句で「君と+カメラと+星のテント場」と、月並みな語句を連ねて<逃げを打った>のは、あまり宜しくありません。
     石鎚に銀河が注ぐこの宵も君を恋ひをりテントの中で!


○  藤村と芭蕉にゆかし伊良湖岬鷹の渡りを灯台に待つ  (津市)中山道治

 九席。
 「鷹ひとつ見つけてうれし伊良湖岬」とは、貞享4年に俳聖・松尾芭蕉がこの地を訪れた際に詠んだ句であり、伊良湖岬の国道259線沿いの「芭蕉の句碑公園」に句碑が建てられてある。
 また、明治31年(1898)の夏の朝、この地・伊良湖岬の恋路ヶ浜を散歩していた後の民俗学者・柳田国男は椰子の実を見つけました。
 その話を東京に帰ってから友人の詩人・島崎藤村に語ったところ、それを素材として、島崎藤村は、彼の有名な抒情詩「名も知らぬ遠き島より流れよる椰子の実ひとつ・・・」を詠んだとのことである。
 時移り、この抒情詩が発表されてか36年後の昭和11年7月、大中寅二によって曲が付けられました。
     名も知らぬ 遠き島より
     流れ寄る 椰子の実一つ
        故郷の岸を 離れて
        汝はそも 波に幾月
     旧の木は 生いや茂れる
     枝はなお 影をやなせる
        われもまた 渚を枕
        孤身の 浮寝の旅ぞ
     実をとりて 胸にあつれば
     新たなり 流離の憂い
        海の日の 沈むを見れば
        激り落つ 異郷の涙
     思いやる 八重の汐々
     いずれの日にか 国に帰らん

    鷹柱見むと思ひて来しかども鷹は見ずして海鵜見にけり!
     

○  山峡の駅のホームの湾曲に沿ひて牝鹿は歩み去りたり  (ひたちなか市)篠原克彦

 末席。
 「山峡の駅のホームの湾曲に沿ひて」とあるが、件の「駅のホーム」は、両側に山が迫っている谷間の湾曲した地形なりに造られているのであり、その湾曲したホームを、件の「牝鹿」は「歩み」去って行ったのでありましょう。
 無人駅と思しき「山峡の駅のホーム」の静けさと、件の「牝鹿」が駅の構内に侵入してから、湾曲したホームに沿って歩み去るまでの時間の経過をも描いている佳作である。
     山峡の無人駅での待ち時間 牝鹿入り来て線路を歩む!
     山峡の駅のホームで待つ合ひ間牡鹿入り来て牝鹿と交尾む!
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卑しくも<詩歌ブログ>を名乗る以上は、イラストやカラー写真で以て読者に取り入ろうとしてはなりません。ましてや、田舎町の安手のレストランで食べた料理のカラー写真で以て読者を幻惑させようとするのは論外です!当ブログは、カラー写真やイラストの類の夾雑物は一切無しの<詩歌ブログ>です。

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