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詩歌句誌面

読解なくして論評あらず。

「佐藤涼子第一歌集『Midnight Sun』」を読む

〇  ドーナツで丸く切り取る夏の空この先ずっと寄り道でいい

〇  震度7母が我が子を抱くように職場の床でパソコン抱く

〇  舗装路の菫を健気と言う人に「そうなんですか」と二回頷く

〇  星空に火薬の匂い 耳鳴りのような記憶をふと持て余す

〇  吐瀉物のような記憶をiPhoneのメモに溜め込み「歌」と名づける

〇  一切は空の空だと知っている 生き残されてしまった世界

〇  片翼で飛べるだろうか 春雲が広がるばかりのビルの屋上

〇  飲み干した酸味ばかりの珈琲の澱のかたちで明日を占う

〇  紫陽花に四葩の呼び名があることを教える声に雨が重なる  

〇  ドーナツで丸く切り取る夏の空この先ずっと寄り道でいい

〇  マグカップ割れてようやくこんなにも疲れていたと気づいてしまう

〇  夏の空そしてまた空どこまでも私の代わりはいくらでもいる 

〇  しゃぼん玉ぽろぽろ吹けば寂しくて多分産まないまま死ぬだろう

〇  カフェラテの泡薄くなる昼下がり欲しいものなら奪ってしまおう

〇  健康で長生きしたいですよねと聞かれて頷く そうでもないが

〇  かぼちゃ煮てセーター編んだと詠むような 人生だってあったはずだが

〇  眩暈か余震かもはや誰にも区別はつかない ただ揺れている

〇  凍蝶の羽が崩れる 生き返りそうな気がした夜明けの浜辺

〇  ずる休みするなら春の旅がいいエクセル表は壊れたままで

〇  「今後ともお願いします」とお辞儀する 来世は草木になると決めつつ

〇  ふわふわと卵スープをかきまぜて歌詞でたらめに歌うボサノバ

〇  眠ったら明日になってしまうからベッドで夜を見つめ続けた

〇  ガリラヤのイエスのようにボーカルは観客達の頭上を歩む

〇  「サラブレッドに乗りませんか」とアナウンス流れる春の夕べのバスに

〇  打ち明けられた恋の話を思い出す 白菊手向ける祭壇の前

〇  海よりも青い案内標識を見上げて夏のアクセルを踏む

〇  川沿いに歩き続けて夕月夜ふわり迷子になるための旅

〇  海までのフルスロットル 決めないという三つ目の選択のため

〇  猫背の男、好きかも レモンイエローのサンダルを手に越えるせせらぎ

〇  あの人も発見されたと言うけれど十日目だから生死は聞かない

〇  白パンのチーズの羽を引きちぎり誰を待とうか土砂降りの朝 

〇  飲み干した酸味ばかりの珈琲の澱のかたちで明日を占う   

〇  呼吸するたび痛むのは肺なのか雨の匂いの風強く吹け  

〇  水色のバスがゆっくり通り過ぎ予報通りの雨が降り出す

〇  頬で聞く心臓の音やわらかく今夜の雨はきっと止まない

〇  エンジニアブーツの重さでとどまったこの世に雨の歌口ずさむ

〇  時が解決するという噓 逆さまのスノードームに雪を降らせる

〇  ゆるやかにだし巻き卵を焼きながら春の星座を君に教わる

〇  降り立って迎えを待つ間にカカオマス栽培図を見る千歳空港

〇  たこ糸の版画を刷る手に北朝鮮ミサイル発射のテロップが載る

〇  排ガスがテールランプに照らされる 雪の夜道は葬列めいて

〇  「フクシマ」の表記の是非の話には口を出さずにカフェラテを飲む

〇  ギター店に八十三円足りないと言う少年を残して目覚める

〇  「誰だって人喰い虎でいっぱいの檻に入れれば死ぬ」と励ます

〇  「よそよりもうちだけ遺体が上がるのが早くて何だか申し訳ない」

〇  そうですか 怒鳴り続ける声があり頷きながら思う白鷺

〇  ミサイルはどこだ 孤独と題された版画が映りニュースは終わる

〇  性別不明身長計測不能だが頭があれば死者に数える

〇  何人が見ているだろうCAは「ふー」と声出し救命具を吹く

〇  見た者でなければ詠めない歌もある例えばあの日の絶望の雪
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鳥羽散歩

Author:鳥羽散歩
卑しくも<詩歌ブログ>を名乗る以上は、イラストやカラー写真で以て読者に取り入ろうとしてはなりません。ましてや、田舎町の安手のレストランで食べた料理のカラー写真で以て読者を幻惑させようとするのは論外です!当ブログは、カラー写真やイラストの類の夾雑物は一切無しの<詩歌ブログ>です。

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