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詩歌句誌面

読解なくして論評あらず。

「盛田志保子第一歌集『木曜日』」を捲る

○  誰ひとり年を取らないギャグ漫画夕日に塩を撒いて笑うんだ
  
○  藍色のポットもいつか目覚めたいこの世は長い遠足前夜

○  見ぬ夏を記憶の犬の名で呼べば小さき尾ふりてきらきら鳴きぬ

○  廃線を知らぬ線路のうすあおい傷をのこして去りゆく季節

○  海水に耳までつかり実況のない夏休み後半に続く
 
○  今日の日はなにもつけずに召し上がれこの世の甘い味がするから

○  箱庭に雨降らせたし箱庭にかみなりさまは飴を落とせし

○  ああなにをそんなに怒っているんだよ透明な巣の中を見ただけ

○  障子戸が開きむかしのいとこたちずさあっとすべりこんでくる夜

○  レコードの針には毒が盛られている長い溝にはいろいろあるから
  
○  夕暮れの車道に空から落ちてきてその鳥の名をだれもいえない  

○  うつむいているはずだから愛すると思うすべてのギター奏者を 

○  トランプを切るとき黒い落ち葉降る一人一人に黒い落ち葉降る

○  今を割り今をかじるとこんな血があふれるだろう砂漠のざくろ

○  今日の日はなにもつけずに召し上がれこの世の甘い味がするから

○  本屋から杓子に汲んで持ち出せばぽたぽた星になる言葉たち

○  りりあんを光のなかで編むように書いてしまった知らない手紙

○  神さまは鳩を放ってやるように一人一人に時間をくれた

○  ヘリコプター海にキスする瞬間のめくるめく操縦士われは

○  「左手に見えます恋の終わりです」腹から声が出ないバスガイド

○  一心に糸を巻く夜 死ぬ時は胸のところが遠くなって死ぬ

○  猫いえり「たしかめ算でまちがった答えは見つけられっこない」と

○  「ねえ先生 生きるの辞めてどこいくの」「南へいくんだ 南に着くまで」

○  このヘッドホンのコードはみたこともない花びらにつながっている

○  海の花咀嚼している波の音聞いてやすらかなるわが眠り

○  雨だから迎えに来てって言ったのに傘も差さず裸足で来やがって

○  トキの保護センターに降る雨音ときみの寝息のひみつをおもう

○  幾重にも折り重なって吹く風のふしぶしに残る赤いまち針

○  あのこ紙パックジュースをストローの穴からストローなしで飲み干す

○  食べ終えたアイスの棒が指先を離れるまでの時をいとしむ

○  暗い目の毛ガニが届く誕生日誰かがつけたラジオは切られて

○  秋の朝消えゆく夢に手を伸ばす林檎の皮の川に降る雨

○  おおよその配合でつくる真夜中のお菓子ほど美しいものはない

○  さよならは練習次第ラケットをぶんぶん振って走るよみんな

○  トラックの荷台に乗って風に書く世話になる親戚の系図

○  このヘッドホンのコードはみたこともない花びらにつながっている

○  障子戸が開きむかしのいとこたちずさあっとすべりこんでくる夜

○  紫陽花と肉体労働キッチンの床に寝て聴くジミ・ヘンドリックス

○  クーリンチェ少年殺人事件興す青い力のなかで出くわす

○  口に投げ込めばほどけるすばらしきお菓子のような疑問がのこる

○  廃線を知らぬ線路のうすあおい傷をのこして去りゆく季節

○  ばらばらにきみ集めたし夕焼けが赤すぎる町の活版所にいて

○  三月のクラリネットの仄暗さやさしい人を困らせている

○  世の中でいちばんかなしいおばけだといってあげるよまるかった月

○  ジャンパーになんだかわからない種のいがいがつけて踊っていた日

○  野外フェスのそこだけ晴れるなんてやっぱりスタアなんだな民生は

○  甲斐もなく死んでしまったいとこたち青い山道将棋倒しに

○  地図よりも人を信じる信じたらたどり着けない海辺のホテル

○  はい吸って、とめて。白衣の春雷に胸中の影とられる四月

○  連絡がとだえたのちのやわらかい空き地に咲いたコスモスの群れ

○  きみが身に纏いしものはなにもかもこの世のものなり 北風の勝ち

○  泡志願少女は波にのまれゆく地に足つけてあゆめる痛み

○  ひらがなはたぐいまれなる 空中にぽっかり浮いて静止する言語

○  春の日のななめ懸垂ここからはひとりでいけと顔に降る花

○  しみこんでくる夕闇の明るさよ田舎とは透明ということ

○  かなしみは一人に一つかきごおり食べ切るころに鳴る稲光

○  笑いあう夏の記憶に音声はなくて小さな魚が跳ねる
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鳥羽散歩

Author:鳥羽散歩
卑しくも<詩歌ブログ>を名乗る以上は、イラストやカラー写真で以て読者に取り入ろうとしてはなりません。ましてや、田舎町の安手のレストランで食べた料理のカラー写真で以て読者を幻惑させようとするのは論外です!当ブログは、カラー写真やイラストの類の夾雑物は一切無しの<詩歌ブログ>です。

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