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今週の「朝日歌壇」より(2018/11/18掲載・佐佐木幸綱選)   初稿脱稿!即時大公開!  

○  本日は陽差しおだやか元荒川鴨五羽のせて流れゆくなり  (蓮田市)青木伸司

 作者は「元荒川」を,一艘のコンテナ船に見立てているのであり、一艘のコンテナ船である「元荒川(号)」が、積荷たる「鴨五羽」を乗せて、「陽差しおだやか」な」「元荒川」の水面を悠悠と流れているのでありましょう。
 佐佐木選の首席。
     元荒川は小型コンテナ船!積荷は鴨五羽のみなれば採算が取れません!  鳥羽散歩


○  奥山の切りひらかれて里人は鹿の声する夜に慣れゆく  (松阪市)こやまはつみ

 <儲かれば何でもする主義>の土地開発業者の乱脈極まりない開発に因って、奥山の木が一本残らず伐採されてしまったので、鹿たちが棲家や食糧を失ってしまった!
 その結果として生じたのが、棲家と食糧を求めて村里まで下りて来た鹿の鳴く音を、里人たちが、否が応でも毎晩のように聴かなければならなくなった、という悲喜劇なのである!
 次席。
      我が庵は三重の村里しかぞ棲む!開発業者よ心して聴け!  鳥羽散歩


○  ときどきは叱ってくれる人がいて雀ら秋の田楽しんでいる  (館林市)阿部芳夫

 昨今の農村の田圃に於いては、雀脅しの空砲や仕掛けも雀らに楽しみを与える為の道具と化しているのかも知れません!
 三席。
     ときどきは叱ってくれる人が居て叱ってくれたら励みになる鴨!  鳥羽散歩
     叱るのはときどきだけにして欲しい!毎日叱られ嫌になっちゃう!


○  秋の空剪定された樫の木にわが巣いずことツグミ飛び来る  (東京都)三井正夫

 その心得の無い素人庭師に拠って剪定された「樫の木」は、秋空の下、単なる棒杭と化してしまったので、「ツグミ」たちが「わが巣いずこ」と探し求めているのでありましょう!
 四席。
    剪定は伐られる木にもツグミにも利の在るやうにせねばならない  鳥羽散歩

     
○  黄葉の峡曲がりゆく米坂線熊よけ警笛を鳴らして進む  (取手市)緑川智

 「米坂線」は、「山形県米沢市の米沢駅から新潟県村上市の坂町駅を結ぶ<JR東日本>の鉄道路線」でありますが、その沿線は、必ずしも<深山渓谷>ばかりとは限りませんから、機関士諸氏が、運行中に無暗矢鱈に「熊よけ警笛を鳴らして」楽しんでいる訳ではありません!
 彼ら、米坂線の機関士諸氏は、時を選び、時宜に応じて、熊が現れてデコイチの進行の妨げとなると危惧される場合のみ、熊避けの警笛を鳴らすのでありますから、その点に就いては誤解の無いように呉れ呉れもご注意下さいますよう、東京や横浜などの大都会や中国やベトナムなどのアジア諸国からお出ましの観光客の皆様方には、私・鳥羽散歩からも伏してお願い申し上げます!
 五席。
     米坂線、やはりローカル!乗客は魚や米など背負ひし老いのみ!  鳥羽散歩


○  サファリパークの麒麟の瞳でっかくて寄り来るバスの窓いっぱいに  (八幡浜市)豊いちみ

 本作の作者・豊いちみさんは、如何なるお金持ちの<一味>かは存じ上げませんが、愛媛県八幡浜市にお住いである、とか!
 ウイキペディアの解説するところに拠りますと、作者がお住いの「八幡浜市」は、「愛媛県西端にある佐田岬半島の付け根に位置する市である。北に伊予灘、西に宇和海を望み、丘陵地が多く、海はリアス式海岸が続き、温暖で風光明媚なところである。古くは、九州や関西地方との海上交易が盛んで<伊予の大阪>と謳われ、現在は、年間40万人近くが行き来する西日本有数の八幡浜港を抱え、四国の西の玄関口、西四国の交流・交易活動の拠点として発展してきた。温暖な気候と地形を生かした柑橘栽培が盛んで、温州みかんは質・量ともに全国有数の産地であり、<日の丸><真穴><川上><蜜る>など全国に知られたブランドみかんを生産している。太陽の直射光、海からの反射光、段々畑の石段の輻射熱の<三つの太陽>を浴びて育ったみかんの美味しさはひとしおである。また、漁業も盛んで、とりわけ有名なのは、四国一の規模を誇る魚市場である。八幡浜港は天然の良港として栄え、中型トロール船団の基地となっており、四季折々のたくさんの種類の魚が水揚げされ、早朝の活気にあふれた市場風景と産直市場である<どーや市場>は、市の名物となっている。」とか!
 ところで、本作に登場する「サファリパーク」は、「中国地方唯一のサファリパーク」を豪語する、山口県美祢市に在る、『秋吉台サファリランド』でありましょうか?
 であるとするならば、『秋吉台サファリランド』は、「約七十種類の動物たちがいるサファリパークスタイルの動物園」であり、「臨場感が楽しめるだけでなく、日本国内でも珍しいホワイトライオンやマルミミゾウなど、希少な動物に出会う事が出来る」とか!
 また、「サファリパークは日本国内に十箇所在り、西日本には四箇所あります。中国地方で動物たちを間近に見られるサファリパークは、『秋吉台サファリランド』だけなんです」とか!
 また、「自家用車で入園できるので、自分たちのペースで動物たちを眺められるのが魅力。でも時には動物たちに車を傷つけられる場合も。楽しいけれど用心が必要ですね。」とか!.
 また、「動物の目線の高さに格子があり、シマウマやライオンなどに直接エサをやることができます。<エサやりバス>は人気なので予約をしておくと安心です。動物たちがエサを食べる様子を間近で見ることができます。肉食獣のゾーンは迫力満点で思わず声が出ちゃいそう!格子についている小窓を開けて動物にエサをやります。エサの肉片を長いトングに挟み、差し出すのを待っているかのように、動物たちは上手に食べます。三頭いる象のうち一頭は、日本でも二頭しかいない<マルミミゾウ>という珍しい種類なのだ」とか!
 私・鳥羽散歩は、サファリパークは勿論の事、凡そ<動物園>と名の付く<動物介護施設>は大嫌いな人間でありまして、私が動物園を嫌う理由の一つは、私が仮に動物園に行ったとすると、「私が動物たちを眺めたり触ったりして楽しむのでは無くて、むしろ、動物たちの方が、私を眺めたり甚振ったりして楽しむのではなかろうか?」と思ったりもするからなのであります!
 そういう訳でありまして、私には、サファリパークなる存在に就いての知識は欠けておりますが、然し乍ら、前掲の<ウィキペディア>の解説などに拠りますと、山口県美祢市に在る、『秋吉台サファリランド』は、さすがに「中国地方唯一のサファリパーク」を豪語するだけあって、なかなか素敵な動物介護施設みたいにも思われます!
 従って、「麒麟の瞳でっかくて寄り来るバスの窓いっぱいに」という、本作の二句目以下の叙述は、まんざら、虚実でも誇張でも無いようにも思われます!
 六席。
     人間がライオンや虎に喰われたりする惧れ無しとせずサファリパーク!  鳥羽散歩

     
○  あちこちにありし杣道すべて消え踏み跡あるは猪の道  (鳥取県)表いさお

 「杣道」とは、「樵たちが通る道」の意!
 現代社会に於いては、職業としての<樵>の存在は許されませんから、当然の事ながら<杣道>も存在する事が出来ません!
 その一方、我が国に於いては、猪なる大型野獣が急激にその仲間を増やし、彼ら猪ばらに因る農産物や森林資源への被害は、年を追う毎に拡大し、増大して行くばかりなのであります!
 し斯くして、昨今の我が家の話題を独占しているのは、決して、彼のゴーン氏に依る、怒り心頭に発する脱税疑惑では無くて、「私・鳥羽散歩の親友の菅昭悦氏が、秋田県湯沢市秋ノ宮の森林で猪を銃撃して退治した、と謂う、痛々しくも勇壮なる一件」であり、加えて、「これ亦、私の親友である、喜多さんの棲息する香川県の絶海の離島・粟島にも、昨今は猪どもが出没するようになり、その挙句、彼・喜多さんが耕作している畑が跡形も無く荒らし回られ、斯く申す、私が喜多さんの畑で収穫される野菜や果物などを食べられなくなっちゃって、ビタミンやミネラルの不足に悩み、病床に臥さんばかりの状態に追い込まれている」という、真に以て私小説的なる二大事件なのであります!
 七席。
     猪の通りし道を踏み分けて荘内半島辿る喜多さん  鳥羽散歩
     熊肉を食ふのに飽きし菅さんが猪撃ちに辿る湯ノ岱


○  本当にやる気あるのか核禁止出来ない理由ばかり並べる  (筑紫野市)二宮正博

 <精査>した結果を<丁寧>に説明しているのにも関わらず、野党の奴ばらは、何だ神田と文句ばっか言うのであるからして、こちとらとしては、頭に来ちゃうのである!
 八席。
     今更に出来るはず無い核禁止!戦争しなけりゃ儲かりません!  鳥羽散歩


○  国父とふことばのありしアメリカの大統領が敵をののしる  (丸亀市)金倉かおる

 「国父」即ち「国民の父」とは、「多くの国家に於いて、独立期や発展期に活躍した象徴的な人物や政治的な指導者を称賛する際に使われる呼称である。英語からの訳語であるこの呼称の他、似た概念を表す呼称として<祖国の父>、<国家の父>、<建国の父>、<独立の父>などが在るが、それぞれ少しずつニュアンスが異なる」とか!
 ところで、作中の「(アメリカ合衆国の)国父」とは、「アメリカ合衆国建国の父(ファウンディング・ファーザーズ、英: Founding Fathers of the United States of America)は、アメリカ合衆国独立宣言またはアメリカ合衆国憲法に署名した政治的指導者、あるいは愛国者達の指導者としてアメリカ独立戦争に関わった者たち」であり、<ジョーン・アダムス>以下、数十名のアメリカ合衆国独立宣言への署名者、及び、<エイブラハム・ボールドウィン>以下、数十名の憲法への署名者等などの多きを数える!
 九席。
   トランプが「国父」と呼ばるる日も在らむ!「アメリカ・ファースト」ジャパンはラスト!  鳥羽散歩
 

○  UFOのような形でカナリアのような色したお神輿が来た  (広島市)堀真希

 そうですか!
 そうですか!
 それはご愁傷様と言いましょうか!
 何と言いましょうか?
 佐佐木選の末席。
      昨今はあまりに華美なお神輿は流行りませんぞ!樽神輿で佳し!  鳥羽散歩
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