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詩歌句誌面

読解なくして論評あらず。

古雑誌を読む(短歌・2019年6月号)

〇  お遍路で初めて受けたお接待おにぎりひとつが六腑に染みた  香川県 島田章平

 上掲の一首は、朝日歌壇や朝日俳壇でお馴染みの島田章平さんが角川俳壇に投稿されて、玉井清弘選の特選に選ばれた一首である。
 選者の玉井清弘氏の選評には、「遍路をすると『お接待』に遭遇する。金銭、食べものなどが無償で提供される。初めて『お接待』を受けた驚きは大きく、とまどうことが多いが、やがて『六腑』に染みわたり、次へと歩き出す気力となる。四国の遍路道にはこの風習が今も残っている。」とある。
 選者の玉井清弘氏の極めて適切を得た選評に対しては、これ以上、付け加える何物もありませんが、昨年の八月に、本作の作者の島田章平さんは、「蛇泳ぐ太平洋の源流を」というどデカいスケールの俳句を投稿なさり、高山選の首席入選作品として、紙面に掲載されていたことを私は記憶しています。
 その折り、今と比べたら比較にならない程の元気さであった私は、その入選作に、次のような、字数の多さだけが取り柄の鑑賞文を記したのでありました。以下、それをそのままに転載して、朝日歌壇以外の場所で島田章平作品と出逢った私の感激振りを証してみたいと思うのである。 

〇   蛇泳ぐ太平洋の源流を   (高松市)島田章平

 「太平洋の源流」とは、如何なる河川を指して謂うのでありましょうか?
 本句の作者は、瀬戸内海に面した香川県高松市の住人であり、地球規模の視点に立てば、瀬戸内海も太平洋の一部であるから、本句で謂う「太平洋の源流」とは、作者がお住いの香川県内を流域として瀬戸内海に注ぐ川の孰れかを指しているのかも知れません!
 「香東川」は、香川県中部を流れる香東川水系の本流で、二級河川。香川県木田郡三木町大字奥山の讃岐山脈高仙山が水源。
 「鴨部川」は、香川県さぬき市を流域とする二級水系およびその本流。水源を特定するのは困難であるが、四国八十八カ所最終の大窪寺付近で渓流を成している。
 「本津川」は、香川県中部を流れる本津川水系の二級河川。高松平野の始点である高松市香南町由佐の高松空港北側付近が水源とされている。
 「綾川」は、香川県中部を流れる綾川水系の本流で、二級河川。香川県下では最長の河川である。流域の多くは花崗岩から成り、 讃岐山脈最高峰の竜王山北麓付近が水源。
 「土器川」は、香川県仲多度郡まんのう町、及び、丸亀市を流れる香川県唯一の一級河川であり、讃岐山脈に位置する竜王山が水源。
 「高瀬川」は、香川県西部の三豊市を流れる二級河川高瀬川水系の本流。源流は三豊市高瀬町上麻にある大麻山。
 「財田川」は、香川県の三豊平野南部を流れる二級水系の本流。香川県で最大の流域面積を持ち、香川県仲多度郡まんのう町の東山峠付近が水源。
 以上の七河川は、香川県内に水源を.発し、香川県内を流域とする川であるが、その孰れもがスケール感に乏しく、本句の題材となった川とは到底思われません!
 また、これら七河川の源流に蛇が泳いでいたとしても、その生息環境の貧弱さからみて、せいぜい体長一メートル程度の青大将ぐらいが関の山と思われ、こうした側面から判断しても、本句は、上掲の七河川の光景に取材したものとは思われません。
 次に、本句の巨大なスケール感に相応しい河川を、八岐大蛇の末裔とも言える大蛇が泳ぐに相応しい巨大河川を太平洋に面した四国地方から探し出してみましょう。
 「吉野川」は、一級水系である吉野川水系の本川で、高知県および徳島県を流れる幹川流路延長194 km、流域面積3,750 km2の河川である。最長川幅は荒川の2,537 mに次いで広く、2,380 mである。日本三大暴れ川の一つとして数えられ、四国三郎の異名を持つ。愛媛県西条市と高知県本川村(現・いの町)に頂を有する瓶ヶ森(標高1896.2 m)より湧き出で、高知県吾川郡いの町の白猪谷を最源流とする。
 「四万十川」は、高知県の西部を流れる渡川水系の本川で一級河川 。全長196km、流域面積2186km2。四国内で最長の川で、流域面積も吉野川に次ぎ第2位となっている。本流に大規模なダムが建設されていないことから「日本最後の清流」、また柿田川・長良川と共.に「日本三大清流の一つ」と呼ばれ、高知県高岡郡津野町の不入山が水源。
 「仁淀川」は、愛媛県・高知県を流れる一級河川で、愛媛県内では面河川と呼ばれる。流域面積1,560km2、流路延長124km。吉野川・四万十川に次ぐ四国第三の河川で石鎚山が水源。
 「肱川」は、愛媛県の南予地方を流れる肱川水系の本流で、一級河川である。 鳥坂峠(愛媛県西予市宇和町久保)が水源。
 以上の四河川は、孰れも本句の題材になるに相応しいスケール感に満ちた一級河川であり、その水源は孰れも深山幽谷とも言うべき、人里から遠く離れた奥山の渓谷であるから、少し大袈裟に言えば、八岐大蛇の曽孫程度の大蛇が渓谷を泳いでいたとしても、まんざら嘘とは思われません。
 本句の作者・島田章平さんが、この度ご旅行なさり、ご自身の足を踏み入れられ、巨大な「蛇」が「泳ぐ」有様をご覧になったのは、上掲の巨大四河川中の孰れかの河川でありましょう!
 高山選の首席。
     面河渓に紅葉散り敷く秋は来ぬ大蛇の曽孫冬眠をせむ  鳥羽散歩
 更に大風呂敷を広げてみれば、中国大陸の揚子江や黄河、或いは、ボルネオ島のジャングルを縫って流れるカプアス川・マハカム川・バリト川・・ラジャン川なども太平洋に注ぐ超巨大河川であり、これらの超巨大河川の源流ならば、ネッシー級の大蛇がうようよ泳いでいたとしても、それほど不思議ではありません。
 要は、「本句の作者の島田章平さんが何処の地を旅行し、何処の川の源流に足を踏み入れたか?」という事でありますが、短歌や俳句を詠む事を楽しみとされている島田章平さんが、まさか、危険を冒して中国大陸の奥地やボルネオ島の密林の中に足を踏み入れるとは思われませんから、本句の取材源となった川は、「四国八十八ケ寺参詣の序でに立ち寄った四万十川か仁淀川あたりではないか?」と、私・鳥羽散歩には推測されるのである。 ⦅転載終り⦆

 事の序でに申し上げますが、私がこの拙い文章を記して、マイブログ「詩歌句誌面」に掲載してから数日後、作者の島田章平さんが、私のブログにコメントを寄せられ、「件の俳句は、同年の夏に、作者ご自身が、終活の一環として、四国八十八ヶ所巡礼をなさった折りの実体験に基づいての一句であり、句中の<太平洋の源流>とは、仁淀川を指すものである」との事でありました。
 その後、島田章平さんは、ご健康を損なわれ、ご入院などもやさったご様子でありますが、幸いに、さほどの事も無くても、元号が令和と改まった今年も亦、四国八十八ヶ所巡礼をなさっているものと推測されます。
 久方ぶりに島田章平さんの作品と出会い、すっかり興奮している私をお許し下さい。 
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コメント

鳥羽散歩様

久しぶりに「詩歌句誌面」を拝見しました。
まさか、私の歌が紹介されているとは思いませんでした。
驚きました。また、懐かしい友達に会った様でした。
私の俳句「蛇泳ぐ太平洋の源流を」を紹介して頂き有難うございました。

お陰様で、術後は順調で体重も太ってしまいました。
運動のつもりで高松市内を自転車で走っています。

また、御伺いさせて頂きます。
沢山の楽しい歌をこれからも楽しみにさせて頂きます。
御礼まで。

              島田章平

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