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詩歌句誌面

読解なくして論評あらず。

「今週の『朝日歌壇』」より  逝く干支の猪さへも見上げたり屏風岩を攀づるご飯つぶ 

     高野公彦選

○ 頬つつむ認知症の父の手は温し名前を忘れてすまないと言ふ  (宇佐市)長野裕子

 自らが入所している介護施設にお見舞いに訪れた実の娘の「頬をつつむ父の手」の温かさを感じている作者と、その作者の「名前を忘れてすまない」と言いながらも、目前の娘との間に在る、何らかの繋がりを感じている「父」の「手」の温かさ!
 ここに展開されているのは、崇高極まりなき親子の情愛交感ドラマである。
     我が頬を包める父の手あたたかしその手の上に重ぬる己が掌  鳥羽散歩
     我が顔を見つむる視線の温かさ老耄なれど泪す吾も


○ ヘリからの新国立の競技場宝石箱を覗くが如し  (蒲郡市)古田明夫

 完成したばかりの新国立競技場を上空を飛ぶヘリコプターから眺めた光景に取材したのは作者の手柄であるが、惜しむらくは、「宝石箱を覗くが如し」という下の句の十四音は、先人の手垢塗れの常套句である。
     小春日の宝石箱の毀れ居つ 新国立競技場世界に燦たり!  鳥羽散歩
     この函に宝石幾つ入りたるや借金塗れの新国立競技場
     

○ 蓮凛と響く令和の子どもの名ラ行美し鈴の音のごと  (中津市)荒谷みほ

 「マイナビ・ニュース」の報じるところに拠ると、「令和初となる子供の名前ランキング(表記編)の1位は、男の子が2年連続で<蓮>、女の子が<凛>(前年5位)と、男女ともに漢字一文字の名前が首位を獲得した。<蓮>は、仏教の象徴的な花で日本らしさを連想する植物であるとともに、泥の中で根を張り大地に根差すパワフルなイメージがある。<凛>は、可愛らしさに加え、<凛とした>など力強いイメージもあり、女性の活躍推進が叫ばれる中、『<新しい時代を力強く切り開いてほしい>という親の想いが込められている(同調査)、と推測される』」とか!
    凛として生きて欲しいと名付けしも泥塗れなる蓮の境涯  鳥羽散歩


○ それぞれの友と旅行に行くという平成生まれの新婚さんは  (富田林市)岡田理枝

 「成田離婚」なる言葉が無くなっただけでも、いくらかは増しでありましょう。
    それぞれの両親付きのそれよりもいくらか増しな友付きハネムーン  鳥羽散歩


○ 鹿、猿も見上げているや晩秋の碓氷峠の峰つなぐ虹  (安中市)鬼形輝雄

 下の句は、「晩秋の碓氷峠の峰つなぐ虹」とかなり省略の効いた表現となっているが、是を省略せずに言うと「晩秋の碓氷峠から一望される峰と峰とをつなぐようにして架かる虹」という言い方になりましょう。
 省略の是非に就いては、この際は別問題とする。
     逝く干支の猪さへも見上げたり屏風岩を攀づるご飯つぶ  鳥羽散歩


○ 北斎の波間に覗く富士山と今朝見た富士と百年後の富士  (東京都)牧野裕子

 作者の牧野裕子さんは、私たち読者の前に、「北斎の波間に覗く富士山」を肇とした三種類の富士を提示しているのであるが、その優劣などの評価に関わる事柄に就いては何も提示していません。
     近々の大爆発を予測した一首なりせば縁起が悪い  鳥羽散歩

 <補足> 「富士の山はこの國なり。わが生ひ出でし國にては、西おもてに見えし山なり。その山のさまいと世に見えぬさまなり。さまことなる山のすがたの、紺青を塗りたるやうなるに、雪の消ゆる世もなく積りたれば、色濃き衣に白き袙着たらむやうに見えて、山の頂のすこし平ぎたるより煙は立ちのぼる。夕暮れは火の燃え立つも見ゆ。」とは、平安時代の才媛・菅原孝標娘の著作『更級日記』に記載されている富士山に関わる記事であり、その頃の富士山は「山の頂のすこし平ぎたるより煙は立ちのぼる。夕暮れは火の燃え立つも見ゆ」という記載が示す如くに、山頂近くの火口から噴煙が上がっていたようである。
     文字数に制限あるも片手落ち!中古の富士にも敷衍すべきだ!  鳥羽散歩


○ 木枯しの街を帰りて関節の一気にゆるむ柚子風呂の中  (香取市)嶋田武夫

 「関節」が「一気にゆるむ」としたら、作者のやる気満々の気持ちも薔薇薔薇になってしまうと違いますか?
     柚子薫る冬至の今日の浴槽に放屁一発気分爽快  鳥羽散歩


○ 弟が朝日歌壇にのりましたゆっくり書いたふらふらの文字  (奈良市)山添葵

 山添葵さんは、この度の弟さんの朝日歌壇への初投稿に際して、その一挙一動の全てを、彼の傍に付き添っていて温かく眺めていたのでありましょう。
 それだけに、その嬉しさと言ったら……………!
      弟とダブル入選おめでとうライバル多し油断大敵  鳥羽散歩
      弟とダブル入選おめでとう!これから先は弟ライバル!
      イヴだ!イウだぜ、葵さん!体重気にせず、ケーキ食べよう!

 
○ かわらそばはじめてたべたらげんきでたかぞくみんなでたべにいったよ  (奈良市)やまぞえそうすけ

 奈良市にお住いの<やまぞえそうすけ>君は、健気にも、朝日歌壇に投稿し、この度は、末席ながら高野公彦選に入選を果たされました。
 作者のそうすけ君が未だ就学前の年齢であるが故に、投稿作は、すべて平仮名で表記されているが、それを一部漢字に改めると「瓦そばはじめて食べたら元気出た家族みんなで食べに行ったよ」という、就学前の児童の詠んだものとは思えないほどのご立派な作品である。
 尚、作中の「かわらそば(瓦蕎麦)」とは、「.熱した瓦の上に茶そばと具を載せて、温かいめんつゆで食べる料理」であり、「山口県下関市豊浦町」が、その発祥の地とされる。
 事の序でに、ウイキペデイァを参照して、その由来に就いて述べれば、「1877年(明治10年)の西南戦争の際に熊本城を囲む薩摩軍の兵士たちが、野戦の合間に瓦を使って野草、肉などを焼いて食べたという話に参考にして、1961年(昭和36年)に川棚温泉で旅館を営む高瀬慎一が宿泊者向けの料理として開発したとされる。これが評判となり川棚温泉の他の旅館でも提供され始め、「川棚温泉の名物料理」とされるようになった。さらには下関市を初め山口県内各地でもご当地グルメとして広まり、山口県出身者等により山口県外でも提供する店が存在する。一部の料理店では瓦ではなくステーキ用の鉄板で提供することもあり、この場合は「茶そば鉄板焼」と呼ばれることも多い。山口県内では広く家庭でも食べられている。家庭向けに蒸した茶そばとつゆのセットがスーパーマーケットなどで売られており、家庭でも調理されることもあるがもちろん、家庭では瓦に載せて調理されることはあまりなく、ホットプレートやフライパンが用いられる。調理法としては焼きそばに近く、家庭向け袋入り製品には<瓦焼きそば>と表示された商品もある」とか!
 通常、例え就学前の児童と言えども、「おそばを食べたら元気が出た。家族みんなで蕎麦屋に行ったんだ」なんて貧乏たらしい事を口にしたりはしません。
 それにも関わらず、彼はそれをただ単に口にするだけでは無くて、いかにも自慢たらしい口調で、<五七五七七>の短歌のリズムに乗せて詠うばかりではなく、我が国の新聞歌壇をリードする<朝日歌壇>へ投稿するのである。
 こうした彼の蛮行は、一重に彼を支えるご家族のご指導の宜しきを得ての事でありましょう。
 おめでとう、やまぞえそうすけ君!
 お姉ちゃんの葵さんとのダブル入選だね!
     姉さんとダブル入選おめでとう高野先生やさしい選者      鳥羽散歩
     歌選ぶ高野先生やさしくて少しおまけの末席入選!
     このたびは少しおまけの末席だ!伸るか反るかはこれからのこと!
     イヴだ!イヴだぜ、そうすけ君!お口ぱくぱく蕎麦、否、ケーキ食べよう!
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Author:鳥羽散歩
卑しくも<詩歌ブログ>を名乗る以上は、イラストやカラー写真で以て読者に取り入ろうとしてはなりません。ましてや、田舎町の安手のレストランで食べた料理のカラー写真で以て読者を幻惑させようとするのは論外です!当ブログは、カラー写真やイラストの類の夾雑物は一切無しの<詩歌ブログ>です。

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