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詩歌句誌面

読解なくして論評あらず。

「今週の『朝日俳壇』」より  明かり障子の前に立ち、自らの貧しい心を映してみたまえ    山が泣く山に合はせて海も泣く霜の降る夜は枕抱き寝む

     大串章選

○  山鳴りに海鳴りまじる霜夜かな  (霧島市)久野茂樹

 本句の作者・久野茂樹さんがお住いの鹿児島県霧島市は、前方に錦江湾を望み、背後に霧島連峰を控えた、海も近く、山にも近い、景勝の地である。
 季節が深まり行き、霜が降りる頃ともなれば、「山鳴りに海鳴り」が交って、海と山との奏でる交響曲を聴いてるような思いがする一夜も在り得ましょうか!

     花は霧島 煙草は国分 
     燃えて上がるは 桜島
     雨は降らんのに 草牟田川濁る 
     伊敷原良(いしきはらら)の化粧の水
     見えた見えたよ 松原ごしに 
     丸に十字の 帆が見えた
     おけさ働け 来年の春は 
     とのじょ持たせる よか青年(にせ)を
     伊敷原良の 巻揚の髪を 
     髪を結うたなら なおよかろ
     雨の降る夜は おじゃんなと言うたに 
     濡れておじゃれば なお可愛い
     桜島には 霞がかかる 
     私ゃ貴方に 気がかかる
     この地去っても 夢路に通う 
     磯の浜風  桜島
     抱いても寝もせず 暇もくれず 
     つなぎ舟かよ わしが身は
     月のちょっと出を 夜明けと思うて 
     主を帰して 気にかかる
     薩摩西郷さんは 世界の偉人 
     国のためなら 死ぬと言うた
     可愛がられて 寝た夜もござる 
     泣いて明かした 夜もござる

                           雲にそびえる高千穂の
                              高根おろしに 草も木も
                                なびきふしけん 大御代を
                                  仰ぐ今日こそ 楽しけれ

      山が泣く山に合はせて海も泣く霜の降る夜は枕抱き寝む 鳥羽散歩
     

○  猪も横断歩道渡りけり  (川越市)松本良子

 今年は熊の食する団栗や山栗の出来が宜しくなくて、飢えた熊が都市の住宅地に出没しているとの事でありますから、彩の国も武蔵野台地の北東端に位置する、武蔵国入間郡川越ともなれば、猪やニホンザルが住宅街に出没するのも当然のことでありましょう。
 本作の作者は、其処の辺りの事情をよく理解された上で、「猪も横断歩道渡りけり」などと、澄まし顔してお詠みになられていらっしゃいますが、これこそはまさしく、埼玉県警の警察官や保健所の野獣捕獲要員や消防署員らが総動員されて、その対策に当るべき緊急事態なのでありましょう。
 「猪」という秋の季語を巧みに用いて、冬近い川越市の住宅地の光景を詠んだ佳句。
 恐怖するべき事態に臨んで、それをよくユーモラスな句に変換し得た作品である。
      あと二日残り二日の干支なれば小京都にも出でます猪  鳥羽散歩
      川越は薩摩芋の名産地 獣ら出でまし畑を荒らす


○  冬木立電飾まとひ変身す  (岡山市)小林悦子

 毎年、十二月ともなれば、クリスマスや商店街の歳末大売り出しとあって、街路樹や駅前の小公園の欅の冬木立などが、煌びやかな「電飾」を全身に纏って「変身」するのである。
 私は、昨日の昼、ささやかな買い物をするべく最寄り駅の新百合ヶ丘駅前まで、痛む足を運びましたが、LED電球の普及が急速度になった結果でありましょうが、新百合ヶ丘駅に至る舗道沿いの電飾の色彩や電球の数が、数年前までとは、その規模が明らかに異なっているのでありました。
 時恰も、石炭や石油などの化石燃料に依存した、我が国の電力事情が国際的に問題視されています。
 また、我が国の悪辣極まりない安倍政権は、国民の眼を欺いて、既に使い古した原子力発電所の再稼働の機会を虎視眈々と狙っているのが現状であります。
 こうした現況にあっては、私たち日本国民は、LED電球の発する妖艶な光をただ単に安閑として眺めているだけではいけません。
     蹶起せよ!汝ら総員蹶起して、LEDの捕獲に当れ!  鳥羽散歩


○  静寂や白鳥黒鳥相寄らず  (ドイツ)ハルツォーク洋子

 鬱蒼とした黒森と、焦げ茶と赤と黄色の三色旗に囲まれた、ドイツ連邦共和国の繁栄と静寂の中にあっては、然しもの白鳥や黒鳥たちも接触欲が抑制されるものと思われて、「白鳥黒鳥相寄らず」という穏やかなる現象が生じるのでありましょうか?
     黒鳥は悪漢ならむ白鳥の隙をうかがい蹂躙せむとす  鳥羽散歩


○  煤逃げの沼三周し戻りけり  (川越市)大野宥之介

 本作の作者・大野宥之介さんも亦、松本良子さんと同様に、彼の干支のイノシシどもが整然として横断歩道を渡り、サラリーマン家庭の家屋に餌を漁りに出没するとかと聞く、彩の国は川越市にお住いの方である。
 ところで、この際、隠し立てする事なく告白致しますが、寡聞にして、私・鳥羽散歩は、今日の今日まで、俳句の冬の季語として「煤逃げ」という風流なる言葉が存在する事を存じ上げませんでした。
 「煤逃げ」とは、「煤払いのとき、足手まといと煤を免れるために別室にこもったり(煤籠りというようです)外出すること」であるとか!
 私の生家でも年も押し迫った十二月の半ばに煤払いをする習慣がありましたが、そうした折りには、役立たずの私でありますれば、専ら「煤逃げ」の役割を演じていたに違いありません。
 「煤逃げの沼三周し戻りけり」とありますが、本作の作者め大野宥之介さんも亦、私と同様に役立たずであると推測されますので、年に一度の煤払いの折りには、専ら「煤逃げ」の役割を任じられていらしたのでありましょうか?
 それはともかくとして、この際、私は、作中の「沼三周し」に少しく拘ってみたいと思います。
 川越市近郊の「沼」と言えば、言わずと知れた「伊佐沼」でありましょう。
 ネット辞書「ウイキペディア」の記するところに拠ると、「伊佐沼」は、「埼玉県川越市の東部に位置し、南北が約1300mおよび東西が約300mほどの沼」であり、「自然沼としては埼玉県内最大、関東地方でも印旛沼に次ぐ広さである。南北朝時代の文和年間に古尾谷氏の家臣・伊佐氏が沼を浄化して溜池にしたとされ、以来、伊佐沼と呼ばれるようになった。戦前までは現在の倍の広さがあったが、食糧増産のため干拓が行われ、面積が減少した。昭和初期までは新河岸川の源流とされていたが、河川改修後には、旧・赤間川が新河岸川の源流となり、伊佐沼は現在は新河岸川の支流である九十川の源流となっている。赤間川分断のため主な流入河川が無くなった沼には伊佐沼代用水路が流入し、入間川から導水する。四季を通してヘラブナ・マブナ・コイなどの釣りが楽しめる。春先には桜並木、6月下旬から7月初旬には川越蓮の会が復活させた古代蓮の花が見頃となる。またかつては川越電気鉄道の沼端駅があり、伊佐沼の湖岸に路線があり電車が走っていた 」とか!
 この説明に拠ると、件の伊佐沼の周囲は、「1300×2+300×2=3200メートル」という事になり、短脚を以て知られた、大野宥之介氏が、仮に分速100mで歩行されたとしたならば、「3200÷1=3200(秒)」となり、「3200÷60=53、333………(分)」という循環小数になりましょうし、そして、53,333秒は、ほぼ一時間と看做して宜しいかと思われますから、本作の作者・大野宥之介氏宅の煤払いに要する時間は、ほぼ一時間という事に相成りましょうか!
     煤払いしていた人の員数を無視した計算であること忘れるな  鳥羽散歩


○  信州の寒さをまとひ友来る  (深谷市)足立弘

 「信州」と言えば、先ず「寒い」の一言に尽きましょう!
 作中の「友」の身体には、「信州の寒さ」が纏い着いていたのでありましょう。
      ざざ虫と蜂の子・蝗の佃煮を後生大事に抱えて友来  鳥羽散歩
      御馳走は深谷葱をどっさりと入れたすき焼き肉は少々


○  夜廻りの町の細道知り尽くす  (大阪市)今井文雄

 夜廻りに限らず、地廻りも亦、町の細道の隅々まで知り尽くしていて、しょ場代集めに一所懸命だとか?
      夜回りが空き巣狙いに早変わり金品盗む事件が絶えない  鳥羽散歩


○  一日のしづかに暮れてゆく障子  (八代市)山下しげ人

 「障子」のことを、いにしへは<明かり障子>と謂った。
 その<明かり障子>の前に立っていると、何故なのか、一日が静かに暮れてような気がします。
 何故なのかしらね?
        明かり障子の前に立ち、自らの貧しい心を映してみたまえ  鳥羽散歩


○  埋火や大事な一語忘れたる  (尼崎市)ほりもとちか

    埋火も消ゆや涙の煮ゆる音     松尾芭蕉 「曠野」
    埋火や壁には客の影ぼうし     松尾芭蕉 「続猿蓑」
    埋火や終には煮ゆる鍋のもの    与謝蕪村 「鏡の華」
    埋火の夢やはかなき事ばかり    正岡子規 「子規句集」
    埋火や煙草を探る枕もと        寺田寅彦 「寺田寅彦全集」
    埋火の手応へもなき火箸かな     星野立子「春雷」
    埋火や客去ぬるほどに風の音     富田木歩 「定本木歩句集」
    埋火や世をくつがへす謀りごと     長谷川櫂 「初雁」
 上掲の八句は、いずれも、冬の季語「埋火」を用いた名句であるが、そうした名句揃いの「埋火」の句の中に在って、天明の俳句中興の祖・与謝蕪村には、是を季語として用いた名句が多くので、それらを以下に提示しよう。
    うずみ火や我かくれ家も雪の中    与謝蕪村
    埋火も我名をかくすよすが哉
    埋火もきゆやなみだの烹る音
    埋火やありとは見えて母の側
    埋火や春に減りゆく夜やいくつ
       埋め火にあと幾日の命やと問ひ掛けたるも応へざるのみ  鳥羽散歩


○  近頃は人それぞれの寒さかな  (愛西市)小川弘

 近頃は人の服装も様様でありますれば、冬の寒さも亦、各人各様の寒さでありましょうか。
     今朝ほどは人一様に寒からむ  鳥羽散歩
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卑しくも<詩歌ブログ>を名乗る以上は、イラストやカラー写真で以て読者に取り入ろうとしてはなりません。ましてや、田舎町の安手のレストランで食べた料理のカラー写真で以て読者を幻惑させようとするのは論外です!当ブログは、カラー写真やイラストの類の夾雑物は一切無しの<詩歌ブログ>です。

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