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詩歌句誌面

読解なくして論評あらず。

「今週の『朝日俳壇』」より  拙い文章をお読みいただきまして真に有難うございました。新年も宜しくお願い致します。

     長谷川櫂選

○  冬銀河中村哲に終はり無し  (筑紫野市)二宮正博

 悠久極まりない冬の銀河から連想されるのは、アフガンの砂漠に水路を掘って水を導こうとした中村哲医師の崇高なる事業とその境涯なのである。
     井戸掘るや中村哲氏逝きてなほ  鳥羽散歩


○  十二月八日毎年二歳かな  (鹿児島市)青野迦葉

  「12月8日午前零時を期して戦闘行動を開始せよ」という意味の暗号電報「ニイタカヤマノボレ1208」が、その頃、千葉県の船橋に在った、海軍無線電信所から送信され、戦艦アリゾナ等戦艦11隻を撃沈、400機近くの航空機を破壊した後、直ちに攻撃の成功を告げる「トラトラトラ」という暗号文が打電された。
 1941(昭和16)年12月8日午前3時19分(現地時間7日午前7時49分)、日本軍がハワイ・オアフ島・真珠湾のアメリカ軍基地を奇襲攻撃し、三年六ケ月に及ぶ対米英戦(太平洋戦争)の火蓋が切られたのである。
 この奇襲作戦(通称・真珠湾攻撃)は、本来、米国の首都・ワシントンで、対米交渉をしていた野村・来栖の両大使が米国側に最後通牒を手渡してから開始することになっていたのであったが、最後通牒の文書作成に時間がかかったために奇襲攻撃となってしまった、と言われているが、その真相は今となっては分かりません。
 本作の作者・青野迦葉さんは、開戦時二歳であったのであり、その後、未だに二歳時の記憶から解放されていないのでありましょう。
     開戦日 吾の二歳の冬なりき  鳥羽散歩


○  冬の蜂てのひらに来て動かざる  (川越市)大野宥之介

 冬蜂を季語にした名句は十指に余るが、その極め付きは、村上鬼城作の「冬蜂の死に所なく歩きけりの」でありましょう。
 で、本句も亦、村上鬼城作の同工異曲であっても、そのレベルには遙かに及ばないものと思われます。
     冬の蜂巣に籠りゐて働かず  鳥羽散歩
     冬蜂の如く籠りて選句せりけふ猪の歳の大晦日なり  鳥羽散歩


○  また一人消して木枯去りゆけり  (オランダ)モーレンカンプふゆこ

 オランダ産の木枯らしは人間を吹き飛ばしてこの世から消してしまう程にも強く激しく吹くのでありましょうか?(なんちゃったりして、誤魔化しました!)
     また一人木枯らし詠みて入選す  鳥羽散歩


○  マスクしてまなこますます無遠慮に  (稲城市)日原正彦

 女性の貌をじろじろ見たいだけの理由でマスクを掛ける中年男性が車内に居たりしてね!
     マスクして醜き貌を隠したり  鳥羽散歩
     マスクして邪悪な魂胆隠したり


○  しやつくりは止まらず雪は降り止まず  (青森市)小山内豊彦

 「止まらず」と「降り止まず」との繰り返しだけが取り柄の一首であり、しゃっくりが止まらない事と、雪が降り止まない事との間には何の関連性もありません。
 でも、こんな言葉遊びめいた短歌が、ごくたまに入選するのも宜しいかと思われます。
     幼くて豊彦未だ佳句詠めず  鳥羽散歩


○  冬うらら猫のしてゐる膝枕  (大村市)鍋岡忠利

 彼はもう死んでしまったのかしら?
 ふた昔ほど前に、田山雅充という冴えない歌手が居て、「春うらら」というフォークソング紛いの歌でヒットしたのは良かったのですが、ヒット曲と言ったらそれっきりで、間も無く消えてしまいました!

  みぞれ混じりの春の宵
  二人炬燵にくるまって
  触れ合う素足がほてりほてり
  誘いかけよか待ってよか
      さてさてトランプ占いは
      ならぬ悲恋と出て来たよ
      ここで煙草をブカリプカリ
      君は目がしら赤くして
  窓を誰かが叩いてる
  君はこわごわ覗き込み
  薬缶煮立ってカタリカタリ
  笑い転げて腕の中
       ああ……ああ 春うらら
       ああ……ああ 溶け合って
  まだまだ小さい君の胸
  僕の手のひら大きいよ
  比べてみようかそろりそろり
  君は耳たぶ赤くして
       ああ……ああ 春うらら
       ああ……ああ 溶け合って
  耳を澄ませば風に乗り
  街は祭りの初稽古
  浮かれ囃子がひゃらりひゃらり
      今夜もお蒲団 一組で
      君と僕とで抱き合えば
      冷たいと肌もポカリポカリ
      二人もいちど夢の国
  ああ……ああ 春うらら
  闇の中に漂う二人
  ああ……ああ 溶け合って
  朝の来るのも忘れそう
  ああ……ああ……    最首としみつ、中山綴…作詞 田山雅充…作曲 「春うらら」

     「春うらら」田山雅充それっきり、それっきりでだね?それっきりです!  鳥羽散歩


○  落された巣のあたり飛ぶ冬の蜂  (豊岡市)山田耕治

 そんな場面を、つい先日、私も目にしました!
 蜂の奴らは、落とされても尚且つ籠っている温かさに魅かれて、自分たちの古巣である巣を容易に棄て切れなかったみたいでした。
     落とされてなほかつ蜂め巣を出でず  鳥羽散歩


○  片付けて一人ゐるなり冬の家  (久喜市)三餘正孝

 文句なしの傑作!
 独り身の身体全体が、ぞくぞくとした寒さに包まれるような感覚です。
     片付けて家出の妻の帰宅待つ  鳥羽散歩


○  白鳥の来て華やかな町となり  (姫路市)黒田千賀子

 白一色の「白鳥」が飛来する事に因って「華やかな町」となり得るのかしら?
 例えば、北東北で「白鳥の来る町、暴力団の来ない町」をスローガンとして、白鳥が飛来する冬季には多くの観光客を集めていた<旧・十文字町(現在は横手市に吸収合併)>は、<清潔で美しい町>ではあったが、決して<華やかな町>ではなかった。
 この点に就いては、本作の作者と一般認識との間には大きな隔たりがありましょう。
 例えば、「黒田千賀子」という人名からは、<堅実で健康で頭脳明晰な女性像>が齎されますが、決して<華やかで社交的でちゃらちゃらした女性像>は齎されません!
 国宝の白鷺城が在って、書写山・円教寺が在って、白鳥が飛来する町である姫路市!
 いつの日にか素晴らしい短歌をお詠みになられるはずの貴女、黒田千賀子さんがお住いになっていらっしゃる町である姫路市!
 私の認識しているところに拠りますと、兵庫県姫路市は、決して決して、「白鳥が来て華やかな町」になったりはしませんでしたし、決して決して、「白鳥が来て華やかな町」になったりしてはいけないのです!!

 今は昔、和泉式部がむすめ、小式部内侍失せにければ、その子どもを見て、式部、
   とどめ置きて誰を哀れと思ふらん子はまさりけり子はまさらなん
 また、書写の聖の御もとへ
   暗きより暗き道にぞ入ぬべきはるかに照らせ山の端の月
 と詠み奉りたりければ、御返事に袈裟をぞ遣はしたりける。
 病づきて失せんとしける日、その袈裟をぞ着たりける。
 歌の徳に後世も助かりけんと、目出度きことなり。

     白鷺の白さに加へ更にまた白さ増したり白鳥の来て  鳥羽散歩
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卑しくも<詩歌ブログ>を名乗る以上は、イラストやカラー写真で以て読者に取り入ろうとしてはなりません。ましてや、田舎町の安手のレストランで食べた料理のカラー写真で以て読者を幻惑させようとするのは論外です!当ブログは、カラー写真やイラストの類の夾雑物は一切無しの<詩歌ブログ>です。

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