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詩歌句誌面

読解なくして論評あらず。

「阿波野巧也第一歌集『ビギナーズラック』」を捲る

○   冬と春まじわりあって少しずつ暮らしのなかで捨ててゆく紙

○   だいなしの雨の花見のだいなしな景色のいまも愛なのかなあ

○   フードコートはほぼ家族連れ、この中の誰かが罪人でもかまわない

○   きみが青いリュックを抱いて眠りゆく電車でぼくは海を見ている

○   虚無(コミュ)力がほしい けっこう降ったあと光ってた、濡れている草ぐさ

○   遠くに近くにかすかに揺れるはるじおん いろんな顔をぼくに見せてよ

○   入り口はこちらと示す貼り紙のラミネートがほんのりずれている

○   噴水をかたむけながら吹いている風、なんどでもぼくはまちがう

○   憂鬱はセブンイレブンにやって来てホットスナック買って食べます

○   駅までの道を覚えていきながらふたり暮らしのはじまる四月

○   いくつになっても円周率を覚えてる いくつになっても きみがいなくても

○   きみの書くきみの名前は書き順がすこしちがっている秋の花

○   道ばたの草も濡らしてて雨が降る ぼくはこころに曳かれて歩く

○   秋の光をそこにとどめて傘立てのビニール傘をひかる雨つぶ

○   夜の居酒屋はじけるような暗算を見せつけられてうれしくなった

○   父親とラッパの写真 父親は若くなりラッパを吹いている

○   まわらない寿司まわる寿司まわしてもまわらなくても変わらない寿司

○   フードコートはほぼ家族連れ、この中の誰かが罪人でもかまわない

○   裏切り者、と書かれたシャツを着たひとと赤信号でいっしょになった

○   帰省した部屋のソファーでねむるとき匂いはしてももういない犬

○   どのかなしみも引き受けるからはつなつの回転寿司を食べにいこうよ

○   百円硬貨落とせば道に花は咲く きれいな気持ちで死んでいきたい

○   本の帯をいためてしまう愚かさで暮らしていくだろうこれからも

○   下の方だけの葉桜 中の上ぐらいのワイシャツを買いたいな

○   出遅れたマリオカートのそのあともずっとふてくされる男の子

○   やめたサークルの同期会のお知らせの通知、その通知の薄明かり

○   ほどほどの川が流れているほどの地元があなたにもあるでしょう?

○   噴水がきらきら喘ぐ 了解ですみたいなメールをたくさん送る

○   きみが青いリュックを抱いて眠りゆく電車でぼくは海を見ている

○   解き方を忘れ去られたルービックキューブがこの町にいくつある?

○   風水をつよく信じるひとのことすこし信じる 青草を踏む

○   ワールドイズファイン、センキュー膜っぽい空気をゆけば休診日かよ

○   打ち切りになった漫画のことだって火花のように覚えていたい


阿波野巧也~1993年1月2日、大阪府生まれ。「京大短歌」「塔」を経て現在「羽根と根」に所属。第5回塔新人賞/第1回笹井宏之賞にて永井祐賞受賞。歌集『ビギナーズラック』(左右社)。
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