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詩歌句誌面

読解なくして論評あらず。

今週の「朝日歌壇」より(2020/8/30掲載) 裏庭に鬼灯植えて誰を待つ?鬼灯植えて父母を待つ! 求職者名簿の文字が巧かつた習字の好きなバイトさんなのか? 骨箱に比島の砂と貝殻が入つてゐたとふ従兄の葬儀! 敗戦の何日前かは知らねども比島沖にて死したる従兄!  「わたし」とも「おれ」とも言はず自らを「ぼくちやん」といふ「陽ちやん」なのさ!  左手の人差し指でパソコンのキーを叩いて歌詠む吾は!  「T」の字の蔓を戴き桐箱に鎮座ましますネットメロンよ!  法律で銃所持許すアメリカは自由を尊ぶ偉大なる国!

     高野公彦選

○  半世紀アメリカに生きホスピスになほ歌を詠み発てるわが叔母  (小城市)大坪伸子

 首席。
 「好きな歌を異国で詠み続け、ついに天国へ発った人を悼む。注によると叔母は古田パーキンス和子さん」とは、選者・高野公彦氏の寸評であるが、件の「叔母」、即ち、「半世紀アメリカに生き」て、この度、天国に発たれた、古田パーキンス和子さんに就いて、私の思うところを記せば以下の通りである。
 古田パーキンス和子さんは、「めえめえと運動場でなきながら山羊お産せり早雲山麓」という作品で以て、2011年の朝日歌壇賞(馬場あき子選)を受賞された、私たち朝日歌壇の読者にとってお馴染みの歌人である。
 2006年3月13日掲載の「紅梅は女子のようで白梅は背高く咲きて爺様のよう」、2010年3月12日掲載の「海に湧く霧が坂より見える日は刃のような風ふきやまず」、2014年4月21日掲載の佐佐木幸綱選・五席入選作、「もう二度と行けないだろう日本にわたしの短歌とどけと詠う」などは、黒人や私たち黄色人にとっては生き難いアメリカ社会に半世紀暮らしながらも、未だ望郷の念断ち難き彼女の傑作であり、また、2010年8月8日掲載の<馬場あき子選>入選作の「黒人を殺めし白人警官の判決待ちて我が町静まる」、2010年10月11日掲載の<永田和弘選>の次席入選作、「『移民』から「『海外移住者』に昇格し風呂上りのようなよい心地する」、及び、馬場あき子選、末席入選作の「出稼ぎは中近東が夢というロシアの人のもう来ぬアメリカ」などは、我が国の同盟国であるアメリカ合衆国に対する、作者・古田パーキンス和子さんの愛憎交々たる思いを託された秀作であり、古田パーキンス和子さん一流の皮肉のこもった傑作でもありましょう!
     アメリカは多民族国家で銃社会!我が身を銃で守るべき国!
     法律で銃所持許すアメリカは自由を尊ぶ偉大なる国!


○  オクラ食ふ油虫を食ふ天道虫 人間は食ふ傷無きオクラ  (西之表市)島田紘一

 「生物界の不思議な連鎖。人間の傲慢さが浮かびあがる」とは、選者・高野氏の寸評。
 「人間は食ふ傷無きオクラ」という下の句から読み取れるものは、「吾輩は食物連鎖の天辺に立つ人間様だ!」との獰猛な雄叫びである!
     「T」の字の蔓を戴き桐箱に鎮座ましますネットメロンよ!


○  顫えずにまだ文字書ける歓びに今日も一枚投稿の歌  (我孫子市)松村幸一

 三席。
 「しっかりした文字は心身が健康な証拠」との、選者・高野公彦氏の寸評は、書痙を病み、顫えながらハソコンのキーを叩いて居る、私・鳥羽散歩にとっては、いささか侮蔑的とも思われる発言である。
 「しっかりした文字は心身が健康な証拠」とは、千葉県成田市で書道教室を営む、私のかつての学友のN氏がよく口にしていた文言であり、彼が寄せ来る毎年の年賀葉書に、お家流で墨書されたこの文言を目にする度ごとに、私・鳥羽散歩は、件の年賀葉書を両手で以て引き裂きたいような怨念に囚われたのでありましたが、その彼も、今から十年前に黄泉路を辿る存在となり、それ以来、私が正月を迎える毎に恒例のようにして味わっていた劣等感は完治するに至りました。
     左手の人差し指でパソコンのキーを叩いて歌詠む吾は!


○  ワイパーの速さを上げて夕立を突き抜け帰る父を見舞いて  (奈良市)山添聖子

 四席。
 「ワイパーの速さを上げて夕立を突き抜け帰る」という四句目までの表現には、それなりの新味を感じられますが、敢えて言わせていただきますと、本作の作者は、高野選の末席入選作の作者<やまぞえそうすけ>君(小学一年)の御母上でありますれば、ご子息<やまぞえそうすけ>君の入選作と合せての、柔道で謂う<合せ技>的な意味での入選作でありましょうか?
     ワイパーの速度を上げて豪雨の中そうすけ君のお迎えに行く!
     左手の人差し指でパソコンのキーを叩いて歌詠む吾は!


○  「あなた」とは言わぬ妻にて「陽ちゃん」とたまに吾を呼ぶ子のおらぬ時  (横浜市)島巡陽一

 五席。
 「子のおらぬ時」などと言いながらも、他人様の前で聞き捨てならない<惚気話>をして平気の平左の島巡陽一さんである。
     「わたし」とも「おれ」とも言はず自らを「ぼくちやん」といふ「陽ちやん」なのさ!


○  戦闘は敗戦の日の二日前叔父の命日ああまた回る  (城陽市)村上純祥

 七席。
 詠い出しの三句に「戦闘は敗戦の日の二日前」とある!
 大日本帝国軍と連合国軍との戦闘が、大日本帝国が屈辱的な敗戦でも以て戦闘を停止する昭和二十年八月十五日の二日前まで続いていたのは、旧満州や中国でのそれ、南方諸島でのそれ、南樺太などの北方領土でのそれ、そして、アメリカ空軍の空襲に抵抗しての本土でのそれと、枚挙に暇が無い程にもありましょうが、本作にいわゆる「終戦の日の二日前の戦闘」とは、通称「樺太の戦い」を指して云うのでありましょうか?
 であるならば、「太平洋戦争末期の1945年(昭和20年)8月11日から8月25日に掛けて、その頃は大日本帝国の一部であった樺太南部で、日本とソビエト連邦の間で行われたのが<樺太の戦い>」である。
 インターネット辞書『ウイキペディア』の記載事項を参照して、件の<樺太の戦い>の大概に就いて説明すると、「1945年8月9日に、突として対日参戦したソ連は、8月11日に南樺太の占領作戦を開始した。その目的は南樺太の獲得と、次に予定された北海道侵攻の拠点確保だったと目される。ソ連軍は北樺太から陸上侵攻する歩兵師団・歩兵旅団・戦車旅団それぞれ一個が攻撃の中心で、補助攻勢として北太平洋艦隊と歩兵旅団一個による上陸作戦を実施した。日本軍は、歩兵師団一個を中心にして応戦したのであるが、同年の8月15日に日本のポツダム宣言受諾が布告されて、太平洋戦争は我が国の敗戦を以て終結を見たのである。然しながら、その後も、樺太を含めた土地でのソ連軍の侵攻は止まらず、自衛戦闘を命じられた日本軍との戦闘が続いた。樺太での停戦は8月19日以降に徐々に進んだものの、尚且つ、ソ連軍の上陸作戦が続いて対日戦線の拡大が図られた。8月23日頃までに日本軍の主要部隊との停戦が成立し、8月25日のソ連軍の大泊占領をもって樺太の戦いは終わった。当時、南樺太には40万人以上の日本の民間人が居住しており、ソ連軍侵攻後に北海道方面への緊急疎開が行われた。自力脱出者を含めて10万人が島外避難に成功したが、緊急疎開船3隻がソ連軍に攻撃されて約1,700名が死亡した(三船殉難事件)。陸上でもソ連軍の無差別攻撃がしばしば行われ、約2,000人の民間人が死亡した」との事である。
 本作の作者・京都府城陽市にお住いの村上純祥さんの叔父様は、件の<樺太の戦い>で以て戦死されたのでありましょうか?
     敗戦の何日前かは知らねども比島沖にて死したる従兄!
     骨箱に比島の砂と貝殻が入つてゐたとふ従兄の葬儀!


○  ほおずきを育てているよお父さんお母さん来てお盆の夜に  (福岡県)岩吉幸代

 八席。
 私・鳥羽散歩の郷里では、盂蘭盆に当る四日間、真っ赤に色付いた「ほおずき」をお供え物の一つとして仏壇の前に飾っていたのでありました。
 「仏壇には鬼灯がよく似合う」とは、太宰治ならぬ私・鳥羽散歩のよくいう格言である。
     裏庭に鬼灯植えて誰を待つ?鬼灯植えて父母を待つ!


○  満州の土踏むことのみ願ってた母の両足細くなりゆく  (中津市)瀬口美子

 九席。
 今どき「満州」なんて言ってたら、日中友好の妨げになるとの罪状で以て、「逮捕になる」かも知れませんよ!
 逮捕になったら、暗い牢屋に閉じ込められて禁足されるから、両足が細くなって、骨と皮ばかりになってしまうかも知れませんよ!
     満州の土踏むことを唯一の願望として逝きし母さん!


○  きゅうしょくのれいとうみかんだいすきで5じかんめまでいいにおいです  (奈良市)やまぞえそうすけ

 末席。
 「マスコミ語彙」の一つに「署名記事」という、マスコミ各社の責任逃れを批判的に表現した言葉が在る。
 一例を以て示せば、例えば「朝日新聞」に掲載される記事の全ては、朝日新聞社という我が国のマスコミの最先端を行く新聞社の責任で以て掲載され、一旦こと在らば、朝日新聞社が社命を賭して、その責任を負うべきなのであるが、昨今の朝日新聞の主な記事の凡そが、世間で謂うところの「署名記事」であるが故に、例えば、今日、九月一日付けの朝日新聞の朝刊の第一面の「菅氏選出強まる」という特大見出しのある、自民党の総裁選に関わるトップ記事の文面に何かの欠陥があった場合は、その署名記事の執筆者の石井潤一郎氏の責任に帰せられてしまうという仕掛けなのかも知れません。
 其れと是とは少しく意味合いを異にするかも知れませんが、今週の朝日歌壇の高野公彦選の末席入選作や、当代人気回復気味の松田短歌姉妹の作品などは、さしずめ、「署名短歌」とでも称するべき存在なのかも知れませんし、朝日歌壇や朝日俳壇に投稿される、他の成人の方々の作品(一例を以て示せば、美原凍子さん作)の中にも、「作者名が在っての入選作である」とでも言わなければならないような作品があったりもする昨今の世相である。
 「きゅうしょくのれいとうみかんだいすきで5じかんめまでいいにおいです」とありますが、一体全体、この幼稚園児のカタコトめいた三十一音が、万葉以来、壱千弐〇〇年余りの伝統を持つ文芸作品なのでありましょうか?
 仮に、私、鳥羽散歩が是を朝日歌壇に投稿したとしたら、選者の高野公彦氏は、是に目を留め、是を高野公彦選の入選作として朝日新聞の紙面に掲載して下さるのでありましょうか?
 その答は、お聴きするまでもありません!
 本作は、奈良県奈良市にお住いの短歌上手の主婦・山添聖子さんのご長男、今年、小学校一年生になったばかりの<やまぞえそうすけ>君が<新型コロナウイルス禍>の合間に詠まれ、投稿された作品であるからこそ、彼のお母さんの作品や彼のお姉さんの作品に日頃から接して居られる選者各氏の注目するところとなり、し斯くして、この度は、四選者の中の一人の高野公彦氏が末席入選作としてご選定になられたのでありましょう。
 以上、本作を「署名短歌」として論評する所以に就いて述べさせていただきました。
      求職者名簿の文字が巧かつた習字の好きなバイトさんなのか? 
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卑しくも<詩歌ブログ>を名乗る以上は、イラストやカラー写真で以て読者に取り入ろうとしてはなりません。ましてや、田舎町の安手のレストランで食べた料理のカラー写真で以て読者を幻惑させようとするのは論外です!当ブログは、カラー写真やイラストの類の夾雑物は一切無しの<詩歌ブログ>です。

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